軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

481話 配信を見た人々

アリッサの場合

「うみゃー!」

「ど、どうした!」

私が思わず上げた声に、隣に座っていたルインが驚いて体をビクリと震わせた。

手元が狂って、作業を失敗したらしい。恨みがましい目でこっちを見ている。

でも、仕方ないじゃない! こんなの見せられて反応しないなんて不可能よ!

「これ、見て」

「あん? 配信動画か? 配信者の名前はマモリ……。ああ、ユートのとこの座敷童か」

「ホームとか畑で撮った動画を、定期的に上げてるのは知ってるでしょ?」

「うちのメンバーで知らんやつはおらんだろう? で、それは新作か?」

「そうなのよ!」

「分かったから、ちょいと落ち着け」

「これが落ち着いていられますか!」

マスコットたちに和服を着せるところまではいいわ! でも、魚や恐竜にまで着せられるなんて、知らなかった!

少なくとも、既存の和服では無理だったはず。プレイヤーが特殊な製法を発見したのだろう。それだけでも重大な情報なのに、このマスコットの数といったら……。

「恐竜がスゲーいるなぁ」

「そこよ! 恐竜の購入には頭数制限があったはずなの! それがないっていう時点でおかしい!」

「ははぁ? 称号か順位辺りが鍵になってるのかね?」

「多分ね! いえ、討伐数や、イベント内での行動に関係している可能性も……?」

マスコット枠の恐竜は最大で5種までしか選べなかったし、そもそもティラノとスピノを同時購入ができなかったはずなのよ。

なのに、ユートくんの畑には、どちらもいる。

くっ……。ホームに行った時に気付かなかった! プレイヤーの対応が忙し過ぎたわ! もっとよく見ておけば……! あの時の配信にも、全部は映ってなかったし!

このゲーム、特定のプレイヤーだけしか手に入れられないアイテムなどは、ほとんど存在しない。一部のユニーク称号くらいだろう。

マスコット枠の恐竜は熱烈なファンも多いし、イベント後にも手に入れる方法が必ず用意されているはずだ。

以前のイベントでもそうだった。村で売っている作物も後々買えるようになったし、武具も村でイベントをこなせばゲットできたのだ。

イベント中に手に入れた者よりは大分苦労することになるが、今回のイベント報酬も後々入手することはできるだろう。

「イベントの島には転移陣から行けるし、恐竜とも戦えるのよね」

「おう。儂も恐竜素材目当てで何度か足を運んどるぞ。バザールで素材も手に入るしな」

「やっぱ、そっちでイベントがありそうね……。ああああ! 早く検証しないと! この配信見て、同じことに気付いたプレイヤーが押し寄せる!」

「にしてもスゲーなぁ。あいつ、イベントポイント全部マスコットにつぎ込んだんじゃないか?」

「もうもうもう! 配信前にうちに情報を売りにきてくれればよかったのに!」

「ユートの奴、この動画がヤバいだなんて、気付いていないんじゃないか?」

「多分ね……」

どうせいつも通り、自分が何をやらかしたかなんて分かっていないんでしょうね!

ユートくんの呑気な顔が目に浮かぶようだわ!

「はぁぁ。とりあえず、ハイウッドたちを呼び戻して、バザールに行かせましょ」

「そうだな」

「和服の販売元も早急に探さないとね」

「俺は和服を少し研究しよう」

「お願い」

どこの店の商人か分からないけど、凄い宣伝になったでしょうね……。

いえ、同じものを欲しがるファンが押し寄せたら、パンクしちゃうかしら?

悲鳴を上げているかもしれないわね。

シュエラの場合

「こっちのリス柄の甚平ちょうだい!」

「俺はこっちの浴衣だ!」

「おい! 順番に並べよ!」

「まだー?」

ああああ! 何でこんなことに!

偶然、白銀さんに会ったから、協力してもらって新作和服の宣伝できないかなーって思っただけなのに!

白銀さんが立ち去った後も凄かったけど、動画が配信されてからは接客地獄がぁぁぁ!

ヘロヘロになった後に、ようやく露店のオート接客機能があったのを思い出して、自分で接客せずに済むようになったけどさ……。

大変なのは接客だけじゃなかった。むしろ、接客以外の方が大変なのだ。

1人1着制限付けたらブーイング起きるし、今すぐ欲しい柄のを作れとか文句言う客もいるし!

そりゃあ、簡易設定してあるから材料使ってすぐに作れるけどさ!

補充する端から売れていってしまうのだ。

もう、素材が……。セキの分まで使っちゃったから、あとで何を言われるか……!

あと、白銀さんがどんな柄のを買って行ったかって聞かれても知らないわよ! 200着以上もあったんだから、全部覚えてられるわけないじゃん!

「ちょっとぉ! サクラたんモデルが売り切れなんですけどぉ!」

「モグラ先輩と同じ奴が欲しいんです!」

「私の番まだぁ?」

セキが帰ってきたら確実に怒られる! 自分がいない間に勝手な真似するなって言われていたのにぃぃぃぃ!

セキが戻ってくるまでに、騒動を収めておかないとヤバい!

ピッポーン。

え? ゲーム外からメール? ああ、IDがあればスマホからゲーム内にメール送れるんだっけ。

送り主は――セキ?!

げぇぇ! マモリたん動画を見た? 帰ったら話がある?

絶対怒ってるぅ!

「あのー、白銀さんは――」

「これの柄違い――」

「まだ――」

ああああああ! 大人しくしておけばよかったぁぁぁ!

運営の場合

「ふはははは! またやらかしたなぁ!」

「やらかしましたねぇ」

「だが、今回は良いやらかしだ!」

「やらかしに良いとか悪いがあるんですか? まあ、こっちに被害のないやらかしではありましたが」

「娘がな、動画を見るのが趣味なんだ。それで、今回の白銀さんの動画を見たらしいんだ」

「はあ、それで?」

「娘が電話で『これ、お父さんが作ってるゲームなんでしょ? ちょーかわいい! すごいね! やりたーい!』って! その後に3年ぶりにメールも来た!」

「あー、それってもしかしてあれですか?『お父さん臭いから帰ってくる前に銭湯入ってきて』っていうメール。あの時、やけ酒につき合わされましたけど」

「そうなんだよ! それが、今回は褒めてくれてるんだよぉぉぉぉ!」

「……良かったですね」

「本当だ! うおおぉぉぉぉん!」

「泣かないでくださいよ。仮眠室の奴らが起きちゃいますって」

「白銀さーん! ありがとぉぉぉ!」

マモリの日記帳連続一位記録に貢献中の見守り隊員たちの場合

「きゃわいい」

「うむ。何度でも見れるな」

「俺なんかもう10周目」

「新マスコットの中では、やはりラッコさんの親子が頭一つ抜けて可愛いな」

「なに? 子熊ちゃんの方が可愛いだろ!」

「待て、浴衣を着たシーラカンスが意外に……」

「私はミニ恐竜ちゃんを推すわ! 新しい扉が開きそうなのよ!」

「はぁぁぁ……ずっと見てられるわー」