軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

448話 開花と臭い

開花したショクダイオオコンニャクを鑑定してみる。

だが、何故か鑑定が発動しなかった。バグとかじゃない。他の物は普通に鑑定できる。ショクダイオオコンニャクだけが、対象外になっていた。

他のプレイヤーたちも同様なのだろう。困惑した空気が広がっている。

そんな広場で、再び誰かの声が上がった。

「く、臭! なんか臭い!」

「うえっ……。なんじゃこの臭い!」

「やばいよやばいよ!」

「ごほっ! げへほっ!」

確かに、変な臭いがしていた。これが有名な、ショクダイオオコンニャクの悪臭か。生ゴミに似た不快な臭いが漂ってくる。

俺は知っていたから覚悟していたが、知らなかったプレイヤーたちが騒ぎ始めたのだろう。咳込んだりしながら、苦しそうにしているプレイヤーもいる。

ただ、実物はもっとヤバいって話だから、これでも運営は手加減しているのだろう。何せ、覚悟していれば耐えられないほどではないのだ。

「ムー……」

「オルトもか?」

「ム……」

オルトが鼻を抓んで、何とも言えない顔をしている。実家の飼い犬のフランが、嫌いなミカンの匂いを不意打ちで嗅いでしまった時の顔にそっくりだ。

「フムー……」

「フマー……」

ルフレとアイネもこの臭いを嫌いであるらしく、テンションダダ下がりだ。

「……」

珍しくファウが、歌無しのインストでリュートをかき鳴らしていた。どこか物悲し気なポロローンという音が、今のファウの心境を現しているのだろう。

まあ、顔を見れば一発で分かるけどさ。無駄に哀愁を帯びた表情をしてるね。

しかし、全員がそうではない。

「キュ?」

「ペーン!」

リックは鼻をコシコシと軽く擦りながら、何度もスンスンと匂いを嗅いでいる。少し気になる程度、であるらしい。

ペルカに至っては、周囲の反応の意味が分かっていないようだ。?マークでも浮かびそうなほどに、首を傾げていた。

人型、獣型の差なのかもしれない。

しかし、起きた異変はそれだけにとどまらなかった。

「なんか、変なの出たな」

「ム」

ショクダイオオコンニャクのはるか上空、30メートルくらいのところに、激しく振動する黒い塊があった。

黒い霧? 羽虫の塊? とにかく、黒く小さなものが集まって、ワサワサと蠢いている。時おり周囲を走るノイズのようなものはなんだ?

俺を含めたプレイヤーたちが見守る中、黒い色が濃くなっていく。同時に、ノイズのようなものがショクダイオオコンニャクの周囲にも走り始めた。

そして、激しく蠢く黒の中から、より黒いナニかが出てくる。

もしかして悪魔か?

見守っていたプレイヤー達にも緊張が走る。だが、まだ赤マーカーは出ていないし、即戦闘ってことはないだろう。

イベントの演出だと思うが……。

現れたのは、異様な姿の骸骨であった。まず、前述の通り、黒い。そして、顔だけで浮かんでいる。だが、一番異様なのは、顔が二つあることだった。

二体いるわけではない。両面ともに顔になっているのだ。本来後頭部があるはずの部分にも顔が付いている。悪魔というか、アンデッドっぽい。

『臭い! 臭いぞぉぉぉ!』

うわ、喋ったよ。老人のようなしゃがれ声で、黒骸骨が呻く。というか、骸骨のクセに匂いを嗅げるんだな。

プレイヤーが聞き逃さないようになのか、アナウンスと同じように耳元で声が聞こえる。ただ、音量がメッチャデカイね。

黒骸骨の大きな叫び声に驚いて、声を上げるプレイヤーたちもいた。

しかし、黒骸骨はこちらに一切反応しない。

やはりこれは、イベントムービー的な扱いなんだろう。

『臭ぁすぎるぅぅ! こんな臭い物は、滅ぼしてくれるわぁぁ! いでよ、彷徨いし憐れな亡霊よぉぉ!』

黒骸骨の言葉に呼応するように、ショクダイオオコンニャクの前に黒い霧が発生し、その中から骸骨が出現した。頭には髑髏マークをあしらった古典的な海賊帽子をかぶり、錆びついた曲刀を装備している。

沈んだ海賊船の船長だ。間違いない。

もしかして、死霊魔術的な能力を持った悪魔なのだろうか?

進行するイベントを見守っていると、黒骸骨が海賊船長に命令を下した。

『亡霊よぉ! その臭い花を刈り取れぇ!』

海賊船長が動く。ただ、その動きは俺たちにとって予想外であった。海賊船長は手に持っている曲刀を大きく振りかぶると、そのまま黒骸骨に向かって投げ付けたのだ。

そして、カタカタと歯を鳴らしながら、ショクダイオオコンニャクを庇うように立ちはだかる。どう見ても、海賊船長が黒骸骨に逆らったように見えるが……。

『我に逆らうというのかぁぁぁ! もうよいわぁ! この島ごと、貴様も破壊してくれるわぁぁ!』

「カタカタカタ!」

黒骸骨が叫んだ直後、周囲を黒い光が包み込んだ。

直後、俺たちは先程とは違う場所に立っていた。ボスフィールドに転移したのだろう。

広い草原の中心に高さ5メートルほどの岩があり、その上に黒骸骨が浮かんでいる。

俺たちはその岩山を囲むように配置されているようだ。岩山まで、相当な距離がある。多分、100メートル以上はあるだろう。

草原の周りをシダ植物が生い茂る森が囲み、遠くにはテーブルマウンテンが見える。一応、古代の島のどこかという設定なんだろう。

『儂に逆らった貴様はぁぁ、このまま砕いてくれるわぁ!』

「カタカタ!」

よく見たら、岩山の前に海賊船長スケルトンがいた。船長が剣を抜き放った直後、悪魔の真上に赤いマーカーが表示される。

「始まった! みんな! やるぞ!」

「あの海賊の骸骨が死んだら失敗の可能性もあるから、気を付けろよ!」

「誰か指揮とるの? トップクランさん、出番ですよー!」

とりあえず、黒骸骨の悪魔を鑑定してみた。

「ビフロンス……? 確か、ソロモンの悪魔だったか?」

「さすがだね! 確かにビフロンスは、ソロモン72柱の悪魔だよ!」

「おぉ? ジークフリードか」

「やあ、久しぶりだね」

馬に乗ったジークフリードが、いつも通りの爽やかスマイルで現れる。

『ぬおぉぉぉぉ! いでよぉ! 僕どもよぉ!』

「おっと、早速動くみたいだね。世間話をしている暇もないようだ」

「とりあえず俺は後ろに下がるよ。足手まといになりそうだし」

「僕は一当てして、様子を見るつもりだ」

「そうか、頑張れ」

「ありがとう」

さすが騎士、かっこいいぜ。俺には絶対無理だ。

「よし、俺たちは後方で様子見だ!」

「ムム!」