軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

350話 戦力分割

「ボスが出ましたか……」

コクテンが渋い顔で呟く、本来ならもう少し早めに出撃して、ボスを出現地点である岩山の手前で迎え撃つつもりだったのだろう。

しかし、鳥たちの襲撃によって廃砦に釘付けにされ、ボスに対する防衛線を敷く前に出現時間となってしまったのだ。

「コクテン、どうする?」

「戦闘班が向かうしかないでしょう」

「俺もサンセーイ」

「おお、サッキュン。いつの間に」

サッキュンとは配置場所が離れていたため、戦闘する姿は見れなかったが、結構活躍したらしい。

範囲攻撃持ちとオートカウンター持ちのサモンモンスターたちを召喚して、鳥を大量殺戮したそうだ。さすがだよ。

「生産班とか、補修班から人を回してもらわなくていいのか?」

「私もその方がいいとは思うんですが、補修班は人手が足りていません」

廃砦の補修班も、鳥に襲われたせいで作業が遅れている。生産班の作るアイテムは今後も絶対に必要な以上、そちらから人手を割いてもらうのも気が引けるらしい。

コクテンやサッキュンたちが話し合っていると、砦の中から石田とソーヤくんを先頭に、生産班の面々が姿を現した。

「コクテンさん、俺たちも参戦するぞ!」

「それはありがたいですが、大丈夫なのですか?」

「もう、アイテム作りは8割方終わっていますので」

「残ったやつらで問題ない」

最悪、ボスが廃砦に到着するまでに加工が終わっていればいいという考えなのだろう。

彼らも交えて、コクテンたちが今後の動きを相談している。

「鳥が消えましたし、砦の守りは減らして、打って出たいと思いますが……。どう思いますか?」

「え? 俺か?」

「はい」

何でそこで俺に聞く。

「えーっと、それでいいと思うぞ。ただ、砦を放っておいて、本当に平気かね? さっきも運営に裏をかかれたし」

「そうか! 確かにそうですね」

コクテンがなるほどと手を打つが、そんなに感心されると逆に困る。

「か、確証があるわけじゃないんだ」

時間差でまた鳥が現れたらヤバいなーと思っただけで。

まあ、考えすぎかね? いくら運営の性格が悪いといっても、何度も引っかけはしないだろう。

実際、鳥たちは完璧に姿を消している。先程までのような、鳥が七分に空が三分状態ではない。空が10割である。

ただ、このイベントでは常に後手に回ってしまっているので、どうしても悪い方に考えてしまうのだ。

俺の話を聞いたコクテンたちが、何やら真剣な顔で協議をし始める。いやいや、あくまでも俺の妄想だから。そんな真面目に協議しなくても……。え? 俺の予想も一理ある? 防衛戦力はしっかり残す? まじで?

なんか、ボスに向かうのは半数ほどということになってしまった。

「い、いいのか? みんなで向かった方がよくない?」

思わずそう言ったんだが、コクテンたちの決意は覆せなかった。

「ボスの能力を偵察もせずに、戦力を差し向けるのは確かにリスクがありますから」

「ならいいけどさ」

結局、鳥が出現した時のために備えて、俺たちを含んだオートカウンター持ちや、範囲攻撃持ちの半数を残すことになったのだった。

あとは、鳥の群れが苦手というプレイヤーたちだな。俺は少し怖いくらいで済んでいるが、中には生理的に無理という人や、恐ろしくて仕方がないという人もいるらしい。

さっき耐え切れずに魔術をぶっ放してしまった人も、そんな鳥が苦手なプレイヤーの一人だったのだろう。

「がんばれよー」

「ムムー」

「ヒムー」

「廃砦のことはお願いしますね!」

コクテンよ。なぜそこで俺に声をかける。まるで俺が残留組のリーダーみたいじゃないか。

まあいい。どうせやることは決まってる。

砦の補修を皆で手伝って、コクテンたちから要請があれば出撃する。ただそれだけだ。

え? 鳥の襲撃? ないない。コクテンたちの考えすぎだ。空は快晴で、鳥の1匹すらいないからな。

「じゃあ、俺たちは砦の修理だな。ヒムカ、ここでも頼むぞ?」

「ヒム!」

今回はヒムカ大活躍だな。

「じゃあ、ヒムカはこっちで鍛冶を手伝ってもらうか」

「ヒムム」

ヒムカにはルインが仕事を与えてくれるだろう。俺たちは建材の運搬作業だ。大工系技能を持つ人は少ないらしいから、雑用はできるだけ引き受けないと。

「よーし、そっち持ってくれ」

「フムム!」

俺はルフレとともに、一抱えもある石のブロックを運ぶ。これは石工たちが加工した、鳥除け効果のあるイベント用ブロックだそうだ。結構重い。

ただ、オルトやドリモは1人でも運べているな。

「ム!」

「モグ!」

「キキュー」

リックは――邪魔かな? そんな一仕事した的な顔されても。お前はぶら下がってただけだからな?

俺はリックをつまみあげて、自分の頭に乗せた。

「お前はここだ」

「キュ?」

そうやって運搬業務に精を出していると、生産班のプレイヤーが城壁に駆け上がってくる。その顔には焦りの色があるように思えるが、気のせいであってほしい。

「白銀さん!」

「ど、どうした?」

「それが、クリスタルに異変が! 急に光り出して!」

やっぱ一大事でした!

俺は他のプレイヤーに断り、大広間に向かう。すると、生産班からの報告通り、クリスタルが青白く輝いていた。

「最初はもっと光が弱くてさ、気のせいだと思ってたんだ。だけど、段々光が強くなってきて」

やはり単なる置物ではなかったか。しかし、何の意味があるのか、誰にもわからない。

「オルトたちは分かるか?」

「ムー?」

「――?」

「まあ、わからんよな」

「とりあえず、もう少し観察して――」

「白銀さん! 大変だっ!」

「またか! なにがあった?」

大広間に飛び込んで来たのは、運搬作業を担当していたプレイヤーである。

「また鳥が出た!」

「ま、まじか!」

「まじだ!」

本当に鳥が再出現するなんて……。嫌な予感だけは当たるんだもんな!