軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

349話 ヒムカVS鳥軍団

「詠唱を開始してください!」

コクテンの合図によって、プレイヤーたちが一斉に詠唱を開始する。

普通のレイドボスイベントだと、パーティの意味はない。参加者全員で1つのレイドパーティだからだ。

しかし、今回のイベントは特殊な作りになっており、ボスが登場するまではパーティのシステムが生きている。まあ、だからこそ魔術師が範囲攻撃を行うと、そのパーティメンバーまで巻き込まれてしまうわけだが。

当然、チームも組める。

今回はそれを利用して、魔術師のいるパーティにタンクを多めに編入するという作戦を採っていた。

これで鳥に集中攻撃されても、タンクたちの多重防壁によって守られ、先程のように瞬殺はされないだろう。

俺も、コクテンたちのパーティとチームを組ませてもらった。

コクテンたちのパーティはタンクスキルを持ったプレイヤーが3人もおり、一気に防御力が上昇している。

「よし! カウント始めます! 10、9、8、7、6、5――」

コクテンによってカウントが開始され、魔術師たちが一斉に杖を構える。すでに詠唱が終了しており、ディレイ状態だ。

因みに、魔術スキルが高ければ高いほど、詠唱を終了しても術を発動せずディレイ状態で留めておける時間が伸びる。

少なくとも、一番弱い範囲魔術を使えるレベルまで達していれば、3秒は術を留めておけるのだ。

まあ、俺が使うアクアショックは詠唱が5秒ほどなので、カウントが始まってからの詠唱で間に合うのだが。

コクテンのパーティの魔術師、セキショウは15秒近い詠唱が必要な魔術を使うらしいから、少し楽しみである。

「チチチチチチチチチ――」

次第に鳥たちの姦しい鳴き声が大きくなってきたところで、その群れに対して一斉に魔術が叩き込まれた。

100近い範囲魔術が壁のように横一列に並び、鳥たちの群れを削り取る。

戦闘中なのに、思わず見入ってしまった。まるで魔術の見本市のようだったのだ。

一番多いのが炎と風だろう。次いで水、土かな? 雷や氷のような特殊な魔術もチラホラ確認できる。

セキショウが撃ったのは、風の魔術である。エアロ・ブラストという、圧縮した風を一気に解き放って爆発を起こすという術だ。

威力が高いのは勿論、術の発生場所を視線で指定できるというのが凶悪だ。射線を遮るだけじゃ防げないってことだからな。

逆に、暗闇などでは使えないそうなので、使い所を選びはするが、こういう場所ではかなり強い。

「チチチチチ――」

「鳥がきます! 白銀さんたちは俺たちの内側に!」

「了解!」

「ルフレちゃんの回復能力、期待してますよ!」

「それは任せてくれ! それとヒムカ! 奴らを迎え撃つんだ!」

「ヒム!」

「ただ、ヤバそうだったらすぐに戻ってくるんだぞ?」

釘を刺しておかないと。やる気満々で飛び跳ねるヒムカがちょっと心配だった。

「ヒムヒム」

何度も頷いてくれるけど、本当に分かってるよな?

「チチチチチチ――」

「来た!」

数を減らしたとは言っても、鳥はまだまだたくさんいる。むしろ、本当に減ったのかと思う程だ。

そのまま先程と同じように、俺たちは鳥の大群に飲み込まれた。周囲を無数の黒い鳥たちが飛び回っている。

カラスほど大きくはないが、鳩程度のサイズはあるだろう。それがガンガンぶつかってくるわけだから、なかなかの迫力だ。

まあ、コクテンたちのパーティに守ってもらっているからこそ、鳥を観察する余裕があるんだけどね。

さすが戦闘力上位のパーティである。この状況でも全く揺るがず、鳥を叩き落としながら、自己強化と自己回復で耐え続けていた。

ただ、そんなコクテンたちに勝るとも劣らない活躍をしているのが、ヒムカである。

「ヒムムム!」

「チチチチチ」

「ヒムム! ヒム!」

逆襲者が想像以上にハマっていた。ヒムカが立っているだけで、鳥たちが突っ込んできて自滅していく。

挑発効果によって、周囲の鳥がヒムカに引き付けられているらしい。まるで誘蛾灯に群がる憐れな羽虫たちのように、ヒムカに群がりそのままポリゴンとなって散っていく鳥たち。

結局、鳥たちが空に逃げていくまでの数分間、ヒムカは仁王立ちし続けているだけで大量の鳥を撃破することに成功したのであった。

しかもノーダメージで。

コクテンが驚きの表情だ。俺たちの戦闘力にはあまり期待していなかったのだろう。しかし、ヒムカが大戦果を挙げた。そりゃあ驚きもする。

「もしかして、逆襲者ですか? 珍しいスキルを持っているんですね」

「見ただけで分かるとは、すごいな」

「いえ、実は私の知人が取得しようか悩んだことがあったんですが、結局諦めたんですよ」

オルトの持つ守護者スキルは、所持している人間が意外に多いらしい。タンクで真っ当なルートを進んでいれば、問題なく条件を満たせるからだ。

だが、逆襲者の取得にはカウンター系スキルや、被ダメージに応じた効果が発揮されるリベンジ系のスキルを覚えなくてはいけない。

特にこのゲームはカウンター系スキルを使うのが非常に難しいそうだ。システムのアシストがあっても、高速で動く敵の攻撃をカウンターするのは難易度が高いのだろう。

使っているプレイヤーがいない訳ではないが、挫折したプレイヤーも多い。コクテンの知人もカウンターの難しさに、その道を諦めた1人であるという。

「ただ、逆襲者に限らず、オートカウンター系の能力が有効なのは理解しました。次の襲撃までに、カウンター使いを捜してみましょう」

「そうだな」

戦闘職だけではなく生産職にまで声をかけてみた結果、オートカウンター系の能力を持っているプレイヤーを十数人発見することができていた。

いやー、そんなオートカウンター持ちたちが一列に並んで、鳥をバンバン自滅させていく姿は、頼もしいを通り越してかなり異様だったね。

このまま彼らに頑張ってもらえば、今後の襲撃も意外と簡単に乗り切れるかもしれない。

《時間となりました。ボスが出現します》

いや、そう簡単にはいかないかもしれん。