軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

351話 アイテムの効き目

再び鳥が出現したと聞き、俺は大慌てのプレイヤーの後に続いて城壁の上に戻った。目に飛び込んできたのは、廃砦の周囲を飛び回る鳥の群れだ。

さっきと同じように、鳥が砦を襲撃している。ただ、先ほどと違う点がいくつかあった。

1つが鳥の色だ。先程は黒一色であったのに対して、今回は赤い鳥が混じっているのである。その数は全体の2割ほどであろうか?

漆黒の嵐の中に、赤い線が混じって見えた。新種だが、何が違うのかは分からない。

もう1つ違うのが、鳥の密度だ。

「あっちとこっちじゃ、鳥の数が違うな!」

廃砦の補修がかなり進んだからであろう。鳥避け効果のある建材により、鳥たちはその動きをかなり制限されていた。これは、赤でも黒でも、同じであるらしい。

その分、鳥が何ヶ所かに集中してしまっているのだ。

「あれって、チャンスなんじゃないか?」

範囲攻撃を密度の高い場所に叩き込めば、相当鳥の数を減らせそうだった。

しかし、襲われたプレイヤーたちは鳥に囲まれて視界がクリアではないため、密度の違いに気づいていないらしい。

もしくは、気づいていても反撃する余裕がないのだろう。特に密集地帯のプレイヤーたちだ。

タンクのガードスキルがあっても、ガリガリとHPを削られてしまっているのが群がる鳥の隙間からも見えた。

「し、白銀さん、どうしよう」

「えーっと……」

魔術はマズいよな? だとしたらやれることは限られる。

「とりあえず、アイテムを使ってできるだけ鳥を減らすしかないと思うんだが……」

「わ、わかりました」

他のプレイヤーに声をかけて、皆でアイテムを使用して被害を抑えれば、なんとか持ち堪えることができるだろう。

しかし、思い通りにはいかない。

「チチヂチチヂヂチチチチチヂ――」

「うるさいなー! もう!」

鳥たちの発する大音量の鳴き声のせいで、俺たちの声が他のプレイヤーに全く届かないのだ。ボス出現前よりもうるさくなった気がするけど、気のせいか?

近くのプレイヤーたちに近寄ってなんとか作戦を伝えるが、精々数パーティが限度だった。

このままでは、鳥の密集地帯にいるプレイヤーたちが、全滅してしまうかもしれない。

「ど、どうすれば……」

俺が魔術で引き付けて、ヒムカで迎撃? いや、俺たちだけで全部を引き付けられるとは思えない。向こうを助けることができても、俺たちが死に戻るだろう。

「うーん……。あ、そういえば!」

俺はインベントリを開いた。

名称:鳥食い鬼猩々の胆石

レア度:1 品質:★10

効果:置くことで、鳥を遠ざけることができる。ただし、種類によっては積極的に攻撃を仕掛けてくる場合も? イベント終了時に、消滅する。

「これだ!」

鳥を遠ざけると書いてある。いや、後半部分が不吉か? でも、元からいた黒い鳥は遠ざけられると思うんだよね。それだけでも十分だろう。赤い鳥が攻撃してきた場合は……。

「ヒムカ、頼むからな!」

「ヒム!」

ちょっともったいない気もするが、ボス戦の前に大量のプレイヤーが死に戻ってしまったら、イベントの達成も危ぶまれる。だったら、ここで使ってしまってもいいだろう。

俺は現在鳥が最も集中している、城壁の西側に向かって駆けた。近づくごとに周囲の鳥の数が増え、視界が悪くなっていく。HPもかなり減ってきたが、それでも俺は前に進んだ。

そして、周囲が完全に鳥に覆われた時点で、鳥食い鬼猩々の胆石を取り出す。すると、その効果は劇的であった。

「お、おお? 凄いな!」

周囲にいた鳥たちが、一斉に空に向かって逃げて行ったのだ。この周辺だけではなく、城壁全体で同じ現象が起こっている。

「でも、やっぱ全部は追い払えんかったか……」

「ヂヂヂヂヂヂヂヂ――」

悪い予想の通り、赤い鳥だけが砦の周辺を未だに飛び回っていたのだ。黒い鳥が消え、赤い鳥の鳴き声だけが聞こえるようになって分かったが、その声は非常に野太い。

今までの黒鳥がスズメやカナリヤのような小鳥系の声だったとしたら、この赤鳥はもう少し太く低い声だ。ムクドリやモズ系の鳴き声って言えばいいかね?

その赤い鳥たちが一気に俺たちに向かって集まり始めていた。

胆石はすでに壊れてゴミになってしまっているんだが、効果はまだ続いているらしい。

「ヒムカ!」

「ヒムヒム!」

ヒムカが意気揚々と逆襲者を発動させた。鳥たちはヘイトの増減に対して異常に敏感であるらしく、逆襲者の挑発効果に見事に引っかかる。

これは、再びヒムカ無双の開幕かな? しかし、またまた俺の予想は裏切られてしまう。なんと、赤鳥たちは黒鳥よりも少しだけ強かったのだ。

逆襲者スキルは、薄い魔力の膜を纏うような形で発現する。その膜自体が防御力と攻撃力を兼ね備えており、ヒムカの意思で変形させることも可能な攻防一体の力だ。

HPが低い黒鳥はその膜に触れれば勝手に死亡するので、ヒムカは一切ダメージを負うことがなかった。

ただ、赤鳥の場合はオートカウンターでは一撃で死なないことがあり、突っ込んできた赤鳥がそのままヒムカへの突進に成功することがあるのだ。

結果として、ダメージが蓄積し始めていた。赤鳥の数は少しずつ減っているとはいえ、まだ千羽以上はいる。このままでは確実にヒムカが倒されるだろう。

「そうか! これか!」

名称:鳥殺しの香木

レア度:1 品質:★10

効果:燃やすことで、鳥にダメージを与える煙を発生させる。イベント終了時に、消滅する。

鳥食い鬼猩々の胆石と同時に手に入ったアイテムだが、併せて使えってことなんじゃないか?

そう思い、俺は取り出した鳥殺しの香木に火を点けた。乾燥しているからか、すぐに火が大きくなり、煙が上がり始める。

「これでも食らえ!」

まるで発煙筒のように、白い煙をモクモクと吐き出す香木を、ヒムカの近くに投げ放った。すると、赤い鳥たちが一瞬で倒されていく。

煙を吸い込むどころか、触れただけでもダメージがあるらしい。

香木の凄まじい効果により、俺たちの周囲を覆い尽くしていた赤い壁が僅か十秒ほどで消えてなくなっていた。

「めっちゃ凄い効き目だったな!」

「ヒムー」

ただ、ここで使って良かったのかが気になる。だって、こんな効果が高いアイテム、他に使い所があるのかもしれん。

「……まあ、その時になったら考えよう。使っちまったもんはしょうがない」

「ヒム?」

使わなければ、どうせ死に戻っていたのだ。