軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

341話 ドワーフのルイン

「うーん。これ、美味過ぎじゃね?」

フレッシュハーブティーを飲んでいたサッキュンが、感心したように唸っている。

「ハーブティーなんて初めて飲んだけど、驚きだわ」

サッキュンは、ゲームの中での食事はそこそこで済ませるタイプであるようだ。美味しいにこしたことはないが、携帯食料でも文句はないらしい。

「リアルでもハーブティー飲んでみよっかな? ほら、最近のファミレスって、ドリンクバーにハーブティーとかあるじゃん?」

「あー、確かにあったかも」

「今まで損してたわー」

だが、サッキュンの言葉を聞いたルインが、腕を組んで首を捻っている。そして、それは難しいかもしれないと語った。

「俺もリアルでハーブティーを試してみたんだがよ、口に合わなかったんだ」

「えー、そうなの? 安いのだったんじゃない?」

「失礼な。むしろ、そこそこいいやつを買ったんだぞ? 20パック入りの箱で、いくつかフレーバーが入ってるタイプでな。だが、どれも美味しいとは思えんかった」

「ゲームの中では美味しく感じるんしょ?」

「ああ」

それは不思議だな。だが、ルインが言うにはそういったプレイヤーは意外と多いらしい。

「うちのクランにも、ユートのハーブティーを飲んで以来、リアルでもハマったってやつがいる一方で、リアルで飲んだら不味かったという奴もいる」

「なんでなんで?」

「まだまだ検証中だが、やはりゲームとリアルでは味覚が違っているということなんだろう」

ゲーム内で受ける刺激に関して、プレイヤーが受ける感覚はリアルと微妙に違っている。例えば痛覚、触覚などは一定以上の場合は何十分の一に軽減されているし、嗅覚や聴覚に与えられる刺激に関してもそうだ。

そういったほんの僅かな差異が影響し、食べ物の好みがゲーム内では変化することがあるらしい。リアルでは苦手としている味が、ゲームの中では刺激が僅かに抑えられることで、美味しく感じる人が多いようだ。

「だから、ゲームの中でハーブティーを美味しく感じても、リアルじゃどうか分からんてことかぁ」

「そういうことだ」

確かに、最初の頃に少し疑問に思ったんだよね。ハーブティーがなんであんなに人気なのかって。リアルじゃ、苦手な人も多いはずなのに、飲む人飲む人が美味しいと言うのだ。

それも、ゲーム内とリアルの微妙な違いによるものだったのだろう。

俺はリアルでもハーブティーを飲むから多少のエグさは気にならないし、癖の少ないハーブティーだとしか思わなかったが。

「それにしても、フレッシュハーブティー?」

「どうしたん? ルインさん」

「いや、何でもない。ユート、これは新作と言っていたな? 情報は、うちに売ってもらえるのか?」

「イベントが終わったら売りに行くつもりだな」

「なら構わん」

ルインはフレッシュハーブティーが普通じゃ作れないことに気づいたらしい。ただ、ここで情報を聞くのは避けたらしいな。まあ、イベントが終わったらアリッサさんに情報売るから、すぐに分かるだろうけどね。

「おにぎりとお茶の感想はどうだった?」

「美味い! それだけ! ただ、漬物とハーブティーはベストマッチとは言えないかも?」

「なるほど」

「それぞれなら、問題ないんだけどねぇ。おにぎりも、MP回復効果があってこの味なら文句はないっ! 値段さえ安ければ」

「儂もそうだな」

単体では悪くないということだろう。ルインも同じ感想だった。そもそも、レモンバームのフレッシュハーブティーと米の食べ合わせが微妙らしい。試作の時は普通に緑茶で食べたから、そこまで気付かんかった。

あと、値段の問題は米が出回り始めれば自然と解決するだろう。それまでは、あまり表に出さず、自分で楽しむだけにしておく方がいいかもしれない。

今回みたいに、適当な試作品を押し付けて、気を遣わせてしまうかもしれないのだ。

あとは、ちょっと気になったことを聞いてみることにした。いや、ずっと気にはなってたんだよ?

「なあ、ルイン」

「なんじゃ?」

「前からそんな喋り方だったっけ?」

以前はもう少し普通の言葉遣いだったと思うんだよな。儂とか言ってなかったし。

というか、さっきは俺って言ってたんじゃないか? 喋り方がぶれている気がする。

「あ! それは俺も思ってた! なんかお爺ちゃんみたいで、変じゃね?」

サッキュンも違和感を覚えていたらしい。しかし、変は言い過ぎじゃないか?

すると、案の定ルインが顔をしかめ、怒ったような口調で言い返した。

「こっちの方がドワーフっぽいじゃろうがっ!」

「あ、ああ! なるほど」

「そういうことねー!」

「……少しずつ口調を変えておる最中じゃから、あまりつっこむな……」

ルインの耳が真っ赤だ。どうやら照れているらしい。怒鳴ったのも、恥ずかしいのを誤魔化すためっぽかった。

どうやらよりドワーフっぽいロールプレイをするために、口調を変えたらしい。さすが、デフォルトで美形を選べるゲームでドワーフを選んだだけあるな! その執念、むしろ尊敬するね!

「お、俺は好きだぜ? その口調」

「あ、白銀さんズリー! お、俺も! 俺も好きだってば!」

「……変と言いおったろう?」

「い、いってないよ? ね? 白銀さん?」

「さ、さあ? 俺は分からないなー」

「ちょ! 白銀さーん!」

許せサッキュン。ルインの方が怖いんだ。

「……ふん。もういいわい」

やはり照れ隠しだったのだろう。すぐに許してくれた。

「……ほれ、さっさと探索を再開するぞ」

「りょ、了解」

「オッケーオッケー」

なんか、すまんルイン。まだ耳が赤いままのルインに、心の中で謝っておこう。もう直接は謝らないよ? だって、絶対にルインに怒られるからね。