軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

339話 殴りサモナー

サッキュンが加わった俺たちはさらに先に進んだ。すると、今までとは違った光景が目の前に現れる。

「あれって、どう見てもゴリラか?」

「結構デカくね?」

「ボスってことか?」

俺たちの視線の先には、森の中をのしのしと徘徊する、茶色の毛のゴリラがいた。しかも前かがみの状態でも、2メートル近い高さがあるだろう。

ルインがボスという推測を口にしたが、どうだろうか? ボスなら徘徊するのかという疑問が残る。

「まあ、結局、戦うか逃げるかの二択になるわけだが、どうする? 儂はどっちでもいいぞ?」

「うーん、俺としてはサッキュンとルイン次第だな。正直、強さも分からん相手だし、俺たちだけなら逃げてる」

「俺は挑んでみたいかなー。死んだら死んだで、ボスが出る前に死んじゃったよーっていう笑い話をみんなにできるし?」

サッキュンの言葉に、ルインも賛意を示している。

「俺も、早耳猫の一員として、挑んでみたい気持ちはある。ただ、ユートが無理をする必要はないぞ?」

「そうそう。俺たちはお気になさらず~」

「……いや、行くさ」

ルインとサッキュンは完璧にやる気であるらしい。ここまできて、俺だけ逃げるという選択肢はないだろう。

そもそも、自分でサッキュンをチームに誘っておいて、強そうな敵が出たからバイバイっていうのは人間としてどうかと思うしね。

「おー、白銀さん漢だね! よっ! やる時はやる男!」

「いやいや」

最初からチャラかったけど、よりチャラさとフレンドリーさが増してきたな。さすがチャラ男。まあ、リアルでもそうかは分からないけど。

「儂とオルトが前衛。その後ろにサクラ。後衛は臨機応変という感じだな」

「了解。サッキュンは前衛に出るか?」

「お! それじゃあ白銀さんに良い所を見せるために、ちょっと頑張っちゃおうかな!」

そう宣言したサッキュンが、モンスターを召喚した。壁役のゴーレムに、青黒い艶のある甲羅を覆った、大型の亀だ。ハード・ロック・ゴーレムに、レイク・タートルというモンスターだった。

「こいつらも壁役にしてやってよ。俺は、遊撃ってことで」

「うむ、それがいいだろう。急造パーティでは、連携など難しいからな。ユートは、前に出るなよ?」

「言われんでも」

と言うことで、俺たちは頼もしい前衛たちに守られながら、ゆっくりとゴリラに近づいて行った。

「ウホホホホ!」

「ウホッホホ!」

「げぇ! 2匹いる!」

ゴーレムの向こうから、サッキュンの悲鳴が聞こえる。覗いてみると、確かにゴリラが2匹、こちらに向かって駆け寄ってきていた。

ボスどころか、ユニークモンスターなどでもなく、普通のフィールドエネミーだったらしい。

「ええい! こうなったら……! 出ろ! タマ!」

「ガオオオオオ!」

サッキュンがさらに、もう1匹のモンスターを召喚する。それは、真っ白な虎であった。種族が白虎となっている。

「ええ! なにあれ! 超カッコイイ!」

「白虎だ。風霊門にブリーズ・キティっていう敵がいるだろう? あれが何度か進化すると、ああなるらしい」

「まじか! テイマーはあの子猫ちゃんを手に入れられんからな~」

ブリーズ・キティは残念なことにサモナー専用のモンスターだったのだ。それがあんなカッコイイ虎になるとは……! なんでテイムできないんだ!

そして、サッキュンが呼び出した白虎が1匹のゴリラに襲いかかり、もう1匹にはサッキュンが攻撃を仕掛けた。

ゴーレムがゴリラの先制攻撃を受け止めている間に、アーツを発動したらしい。

「おりゃぁっ!」

「ウホゥ?」

「おらおらおら! おらぁぁ!」

「ウッホホーゥゥ……!」

「おおお! すげー! サッキュンすげーよ!」

今日何度目か分からない、歓声を上げてしまった。目の前で繰り広げられた光景は、それだけインパクトがあったのだ。

アッパーカットのような攻撃でゴリラを空中にかち上げただけでも驚きなのに、そこにさらに追撃を加えたのである。

空中でもがくゴリラに向かって跳び上がったサッキュンが、左右の拳を連打し、最後は前転しながらのかかと落としで地面に叩きつけていた。

ゴリラのHPゲージが吹き飛び、ポリゴンと化して消えていく。

格闘ゲームの乱舞必殺技みたいな動きであった。近接系プレイヤーおそるべしだ。PVPとかが今後実装された時、絶対に勝てないと思う。

そして、もう1匹のゴリラも、白虎の攻撃によって引き裂かれ、あっさりと倒されていた。それを見ていたサッキュンが、気まずそうに呟く。

「なんか、めっちゃ弱かったかも?」

どうやら、見掛け倒しでそこまで強くはなかったらしい。

「そんなことより、サッキュン凄いな!」

「いやいや、俺なんてまだまだだって」

「特殊モンス所持者が、何言ってやがる。こいつはサモナーとしても最上位だからな」

なんと、煙の女神ことマッツンが召喚していた剛力鬼と同じような、非常に強力な特殊モンスターを従えているらしい。まあ、白虎のことらしいが。

従魔合成での事故で、ブリーズ・キティが進化した姿だそうだ。

「しかも、最前線攻略組だぞ? 第9エリア解放のレイドボス戦でのMVPだ」

まじでトップ層のプレイヤーじゃんか! あの近接技能といい、本気ですごいぞ!

いや、今はあの凄い動きに関してだ。動画を公開しているような近接系プレイヤーに比べても、遜色がなかった。サモナーだなんて信じられない程だ。

「それにしても、さっきの動き! あれ、凄かったぞ! 格闘スキルを育てたら、あんな風に動けるのか?」

「え? まあ、そうだなー。鍛えれば誰でもやれるんじゃないかな?」

あっさりと頷くサッキュン。それは本当か? だったら、俺も――。

「待て待て。あんな動き、誰でもできるって訳じゃない。格闘に関しても、こいつ武闘大会イベントで上位入賞してやがるんだ」

「あれは運がよかっただけだって。それに、白銀さんに比べたらまだまだっすよ?」

「いや、トップクラスのサモナーにそんなこと言われても……」

「え? いやいや、白銀さんには負けるって」

「いやいやいや、俺なんてレベルも低いし、前線にも辿りつけていないし、全然だろ」

サッキュンなんて、サモナーとしてもトップクラスで、サブ技能の格闘でも上位。しかも、最前線で戦っていて、名前も知れている? ガチのトッププレイヤーだ。

羨ましい。やっぱさ、戦闘技能が高いプレイヤーには憧れちゃうよね。

俺も少し頑張ってみるべきか? でもな、今さら鍛えたところで、あんな異次元の動きができるとも思えんし……。だったら、戦闘系のモンスをもう少し手に入れるべきだろう。

「まあ、今まで通り、コツコツ頑張るしかないか」

「……ルインさん?」

「こういう奴なんだ」

「は、はは……」