軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

321話 フィールドの変化

「ギョッギョギョ~……!」

殺人ヤマメが情けない声を上げながら、ポリゴンとなって消えていく。

強敵だった。俺たちだけだったら、確実に最初の方で全滅していただろう。

「なんとか勝利したか……」

「ムムー」

「モグー」

「お前らもいい仕事してくれたぞ。ありがとうな」

「ムッム」

「モグモ」

オルトは満面の笑みで。ドリモはニヒルに笑ってくれる。

「いやー、まさか観光にきて、ボス戦になるとは思わなかった」

「あー、そこはごめんなさい。ついつい、いつものノリで、突っ走っちゃった」

「くくく……申し訳ない」

「いや、文句言ってるわけじゃないぞ? むしろレベルが上がったりして、俺たちには得しかなかったし」

相手のターゲットを取り続けてくれたフィルマ。頼りになるタンクのクルミ。そして大破壊力の爆弾を投擲し続けてくれたリキュー。さすが有名プレイヤーたちだ。

そうだ。リキューの爆弾はかなり高価だったはずじゃ? あれだけ使っては、勝利しても確実に赤字だろう。

しかし、爆弾の費用を支払おうと思ったら、巻き込んだのは自分たちだからと固辞されてしまった。それでも交渉して、ここで手に入れた素材などを多めに譲ることにしてもらったが。

俺としては、自分たちだけでは絶対に勝てないボスに勝利したうえ、レベルも上がった。しかもボスドロップまで入手できたし、得しかなかったのだ。

「ただいまー」

「フムー」

「おかえり~。フィルマたちのおかげで、すっごい戦いやすかったよ」

「くくく……グッジョブ」

「ほんと? 頑張ったかいがあったよ」

「フム」

ただ、この後どうすればいいのだろう? 何せ、フィールドに特に変化はないのだ。殺人ヤマメの卵はイベントアイテムだったらしく、すでに消滅してしまっている。

悩んでいたら、いきなり視界に他のプレイヤーが現れた。まるで瞬間移動してきたみたいに。俺も驚いたが、向こうも驚いている。

だが、クルミたちは何が起きたのか理解しているらしい。

「あー、通常フィールドに戻ってきたね」

「くくく……ボスフィールドと通常フィールドが重なっているタイプ」

なるほど。ボスが出現した時点で俺たちはボスフィールドに送られていて、今通常のフィールドに戻ってきたのか。他のプレイヤーさんたちからしてみれば、俺たちが瞬間移動して現れたように見えているだろう。

他のフィールドだとボスエリアに足を踏み入れるとボス戦になるが、通常フィールドでボスが出現するここの場合は少し特殊であるらしい。

納得していると、周囲のプレイヤーの1人が話しかけてくる。

「な、なあ。もしかしてここの攻略法が分かったのか?」

「ええ?」

「し、白銀さんじゃんか! だったら、まじで?」

周囲からワラワラとプレイヤーが集まってきた。過疎っているといっても、他にプレイヤーがいない訳ではない。俺たちが何やらやっていて、いきなり姿を消した瞬間はそれなりに目撃されているだろう。

それを見て、地底湖の探索で何か進展があったと考える者は多いに違いない。

「ど、どうする?」

「ムムー」

俺たちが慌てていると、クルミがサッサと周囲に説明を行っていた。

「えーっと、進展はあったけど、私たちもログを見て見ないと何がどうなったか分からないんで! でも、情報は早耳猫に売ると思うから!」

「す、すいません。ちょっと今はまだ確実なことが言えないんで……」

「ふっふっふっふ……」

リキューは延々と含み笑いをして周囲を引かせているだけだが。

ただ、有名プレイヤーである彼女たちに対して、無理には出られないらしい。取り囲みつつも、散発的に質問を投げかけられる程度で済んでいた。さすがだな。

「おい、お前行けよ――」

「やだよ、見守り隊が――」

「だよな――」

俺たちが包囲を抜けてもまだザワザワしているな。後をゾロゾロと付いてくるが、フィールドを歩いているだけの相手に、付いてくるなとも言えない。

とりあえず気にしないことにした。

「なあ、この後どうするんだ?」

ボスは倒したとはいえ、新しい道が出現したりもしているようには見えない。だが、クルミはちゃんと変化を発見していた。

「あれ見て」

「うん?」

クルミが天井を指差している。すると、岩の隙間から光の筋が伸びていた。

「お? もしかして外から光が差してるのか?」

「きっとそうだよ!」

アミミンさんが発見したという隠し通路。その入り口から、明らかに夜光虫のものとは違う、光の筋が差し込んでいた。

すると、クルミが野次馬の1人を捕まえて、光の筋が見えるかどうか尋ねている。あれが、俺たちだけに見えているのか、全員に見えるのか確認したかったらしい。

その結果、俺たちだけに見えていると判明する。やはりボスを倒したことで何らかの変化があったらしい。

俺たちはそのまま、隠し通路に向かうことにした。

ただ、野次馬はまだ付いてくる。これ、このまま連れていくのか? そう思っていたら、クルミが再び口を開いた。

「うーん、ヒントあげちゃおっかな? 白銀さん、いい?」

「え? ああ。全部任せる」

「えーっとね、まずは水中でイベントを起こさないとダメだよ。あと、何か意味があるんじゃないかって言われてたヒカリ茸は、関係ありません!」

その言葉を聞いたプレイヤーたちが、一斉に地底湖に移動し始めた。さすがクルミだ。それでも「もっとヒントをくれ」と言っていたプレイヤーもいたが、クルミに拒否されるとすごすごと退散していったのだった。

「じゃ、いこっか」

「ふー、ちょっと緊張しちゃうね。さすがクルミ」

「くくく……ようやく消えたわ」

リキューが元に戻った。本当に人見知りなんだな。