軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

320話 殺人ヤマメ

湖から立ち昇る光の柱を目撃した俺たちは、慌てて水中に顔を突っ込み、光の出所を探った。湖の縁に膝をついて、顔だけ水の中に突っ込む3人組。はたから見たらさぞ間抜けだろうな。

フィルマが湖面に向かって上がってくるのが見えた。

「ぷはー。これ見て!」

湖面に上がってきたフィルマは何かを手にしているではないか。それはソフトボールほどの珠だ。

光の柱は、フィルマが手にしているその珠から立ち昇っていた。意外と眩しくないのは、光が全部上に向かっているからだろう。

「すごーい! 光ってる珠だ! どこで見つけたの?」

「ルフレちゃんのおかげです!」

青ヒレを捕まえるためにルフレと一緒に地底湖魚を捕まえていたのだが、ふとルフレの動きに違和感を覚えたのだという。

そして少し観察していると、ルフレの泳ぐコースが一定であることに気づいたらしい。というか、青ヒレの泳ぐコースが決まっており、ルフレがそれを追って延々と同じコースを泳いでいたのだ。

さらに、もう1つ気付いたことがあった。戦闘中に一定のダメージを受けた突撃ヤマメが、後方に下がってHPを回復する行動を取るのだが、その時に同じ場所に逃げ込むのだ。

しかもその場所は、青ヒレの地底湖魚の巡回コースと重なっていた。

そこで、その場所に何かないかと調べたところ、湖底の岩の隙間に穴が開いていることに気づいたらしい。

俺たちも湖に入って、青ヒレ地底湖魚の動きを観察してみた。だが、赤ヒレ黄ヒレがたくさんいるせいで、ここからではいまいち分からないな。

湖底まで潜らないといけないってことなんだろう。

「そして、穴の中を覗き込んだら、この珠が入ってたんです!」

「凄いね! でも、よく撃破しないで、追い返すなんて面倒な事考えたねぇ」

「最初は倒してたんだけど、もしかして青ヒレしか倒しちゃいけないのかと思って」

ある程度ダメージを与えて追い返すことを繰り返していたことで、違和感に気付けたらしい。普段だとそんなことをする余裕はないが、今回は回復が間に合ったおかげで何とかなったそうだ。

「ルフレちゃんがいてくれたおかげです」

突撃ヤマメは攻撃力が高い反面、非常に打たれ弱く、あえて逃がそうと考えるプレイヤーはいないだろう。そもそも、水中で複数の突撃ヤマメ相手に、そこまで余裕がある戦いをできるパーティも少ない。

できたとしても、その動きに違和感を覚えるほど長時間潜っていられないのだろう。

「色々とお手柄だぞルフレ」

「フム?」

こりゃあ分かっていないな。

「しかし、今まで誰も気付かなかったのか?」

「うーん、青ヒレの魚だけを一定数捕獲するとか、その辺がキーになって変化するんじゃない?」

つまり、何かキーになる行動を取ったうえで、魚やモンスターの動きの変化を察知し、フィルマが発見した小さな穴って奴を見つけないといけない訳か。

「くくく……下手したら、穴の位置が毎回変化するとか、もあるかもしれないわ」

「あーそれは面倒だな」

「それにしても、この珠なんだろうね?」

「くくく……殺人ヤマメの卵ってなってるわね?」

「突撃ヤマメじゃなくて?」

「ええ……もしかして、あれかしら? くくく」

「「あれ?」」

俺とクルミが同時にリキューが指差した方を見る。すると、巨大な影がこちらに向かってくるところであった。まるで某殺人サメ映画のように、ヒレだけが水上に出ている。

「ボ、ボスか?」

「多分そうでしょうね」

「みんな、一度上に上がるよ! フィルマはどうする?」

「私はここで時間を稼ぐよ。少しずつみんなの方に誘導してみるね」

「わかった!」

ということで、突如出現したボスから、俺たちは逃げ出した。フィルマだけを残すのは気がかりだったので、ルフレも残した。ルフレの回復があれば、フィルマが死に戻る可能性は低いはずだ。

陸地に向かって泳ぎながら、俺たちは作戦を話し合う。

「俺たちは、上から攻撃か?」

「それしかないと思う。私たちが水中ボスとまともにやり合えると思えないし」

「くくく……大丈夫よ……地上からでも倒せるはず」

リキューがやけにハッキリと断言したな。だが、話を聞いてみれば至極当然の理由であった。

「くくく……まだ序盤だから」

「最初の水中ボスが、水中戦でしか倒せない仕様だったら絶対に詰むもん。南だけ放置されて突破されないなんてことになりかねないじゃん? このゲームはそこら辺のバランスに気を使ってるし、地上からでも倒す手段が絶対あるはずだよ」

「なるほど。そりゃそうだ」

このゲームは、良くも悪くもバランス重視だ。特に戦闘システムではその色が強い。まあ、俺は実感したことないけど。

初心者やユルゲーマーに優しいという反面、ヌルゲーと言われることもあるらしい。俺は実感したことないけど!

それを考えれば、ボスといえど序盤からそこまで鬼設定である確率は低いだろう。

「今はフィルマがタゲ取ってくれてるから、私たちは遠距離攻撃だね。あとはもう、流れでやるしかないかな……。情報がないし」

「くくく……私の爆弾も大盤振る舞いよ」

「まあ、今回は仕方ないね」

「名前は殺人ヤマメってなってたよな。突撃ヤマメの上位種なら、似た攻撃もしてくるんじゃないか?」

「確かにありえるね。突進と、水鉄砲。あとは尾ビレアタック?」

「ボスだから他にも隠し玉が幾つもあるだろうがな」

そのままヒムカたちに部屋の上に引き上げてもらいながら、俺たちは準備を開始した。まあ、陣形を組んで、HPMPを回復させるだけだが。ああ、あとはバフ料理もかきこんでおいた。

「フィルマー! 準備できたよー!」

クルミがそう叫ぶと、フィルマに伝わったらしい。段々とこちらに近づいてきた。

その後の戦闘は凄まじいものであった。

最初はこちらが優勢だったのだ。水中のフィルマが気を引いてくれているおかげで、こちらからは悠々と攻撃ができる。ルフレも、回復するのがフィルマ1人だけで済むので、余裕を持って支援をし続けられるらしい。

水中でタゲを保持しつつ、陸上の遠距離攻撃で削る。もしかして運良く最適解を引き当てたかと、クルミたちと盛り上がったほどだ。

だが、やはりボスは一筋縄ではいかなかった。

HPが50パーセントを切ったところで、行動パターンが変化したのだ。どうやら、陸上の相手を優先的に狙う方向へ行動がシフトしたらしい。

口から水を飛ばす攻撃だけではなく、体全体をくねらせて波を作り、それをこちらに叩きつける攻撃を放ち始める。

「ギョギョギョー!」

「やべー! 引き波に気を付けろ!」

これがかなり厄介で、全体ダメージなうえに、行動をキャンセルする効果があるのだ。さらに、体勢を崩してしまうと波の引き戻しで地底湖に引きずり込まれてしまう。

すると、今度は殺人ヤマメのターゲットがそちらに向くのである。どうやらヘイトではなく、水中に最後に入った者を優先的に狙うらしい。

これでファウやヒムカが死にかけて、本当に間一髪だった。ルフレの回復と、咄嗟の交替召喚が間に合わなければ、もっとピンチに陥っていただろう。

今はヒムカの代わりにオルト。ファウの代わりにドリモが喚び出されている。遠距離攻撃は得意ではないんだが、流されないのでタンクとしてはとても頼もしい。

そして、最後はリキューが投げた爆弾がボスのHPを削りきり、俺たちは辛くも勝利を挙げたのであった。

「ギョッギョギョ~……!」