軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

191話 桜とワイン

ファーマーたちにしこたま飲まされて、酩酊状態になりかけている。なので、とりあえず近くの椅子に腰かけて休むことにした。

酒飲みを戒めるためなのか、現在のところ酩酊を治す方法は見つかっていない。だが、完全な酩酊状態になる前に休めば、少しずつ状態が回復するのだ。

「お疲れ様です」

「ありがとう」

「人気者は大変ですね~。ささ、どうぞ」

「これでも食べたまえ」

水を渡してくれたのは、コクテンだった。その後、ジークフリードが焼き鳥の乗ったお皿を差し出してくる。

どうやらここは戦闘、冒険メインのプレイヤーたちの交流の場になっているようだ。他にもアカリや忍者たち、タカユキとツヨシの姿もあった。

俺も休みながら、話に加わる。まあ、一方的に話を聞くだけだが。一番興味深かったのが、土霊門の攻略に関してだろう。

中ボスからは土結晶が出やすいらしい。今は土霊門の解放に消費されているが、落ち着いたら強力な属性武具が出回るんじゃないかと言う事だった。

後はノームを雇えるという話も面白い。土霊門の中しか連れまわせないそうだ。つまり畑仕事用ではない。ということは、攻略にノームが必要ってことなんだろう。多分、あの狭い隠し通路を進むためだ。そのうち俺も再チャレンジしてみようかな。まあ、もう少しレベルを上げてからだけどね。

「土霊門は私も興味があるね」

ジークフリードは土霊門に潜ったものの、その狭さに苦労しているようだ。

「ハイヨーが狭い場所が苦手なんだ」

「ああ、そう言えば前に会った時に比べて、随分大きくなったな」

「ブルル!」

自ら近寄って来たジークフリードの白馬、ハイヨーの鼻づらを撫でてやる。すると、嬉しそうに嘶く。

「ニンジン食べるかな?」

「ああ、大好物だね」

「へえ。じゃあこれとかどうだ?」

「ヒヒン!」

青ニンジンをそのまま上げてみたら、美味しそうに食べている。馬も可愛いかもしれない。しかも背中に乗って移動できるんだろ?

ただ、フィールドなどで見たという情報は聞かない。今のところ馬を連れているのは、ジークフリードのように初期ボーナスでゲットしたプレイヤーだけだろう。発見されるのを気長に待つしかないか。

「いつかペガサスになってくれたら嬉しいね」

「ペガサスに乗る騎士。ペガサスナイトか。それはロマンがあるな!」

「もしくはユニコーンだね」

「どっちにしてもいいな」

「だろう?」

そんな話をしていたら、ムラカゲが近寄って来た。そして、羨ましそうに白馬を撫でる。

「我らも馬が欲しいのでござるがな」

「忍者に馬? どっちかというと侍じゃないか?」

「そんなことはござらん。黒馬に乗って闇を疾走する影! まさに忍びの真骨頂!」

言われてみると、ありっちゃありか? 格好いいのは確かだろう。頑張って馬を探してくれ。

ジーク達との馬談義を終えた俺は、そのまま隣のテーブルへ移動していた。生産者が多いテーブルだ。特に料理人が多い。

そして料理も多かった。俺が知らない料理も色々とある。特に目を引いたのがチーズフォンデュだった。溶けたチーズに茹でた野菜などを付けて食べている。確かにチーズとワインがあれば作れるが、思いつかなかったな。

俺はチーズフォンデュを食べつつ、他の料理のレシピを色々と教えてもらった。ダメ元で聞いてみたんだけど、全員があっさりレシピを教えてくれたので驚いたね。

なぜか俺のおかげだと言われたが、意味が分からん。まあ、レシピをたくさん入手できたから、細かいことはどうでもいいや。それよりも気になることがあるし。

「なあ、ふーか。何をしてるんだ?」

「桜の花びらを集めています」

「何のために?」

「もちろん料理のためです。ちゃんと白銀さんに全部お渡ししますから、その後ちょっとだけ分けてもらえませんか?」

「いや、桜の花びらで料理?」

「うん、塩漬けにすれば色々と使えると思うんです。料理に混ぜたり、ハーブティーに混ぜたり」

「なるほど」

そう言えば、春になると桜の塩漬けが乗った料理とか食べさせる店があるよな。これでも同じことが出来るかもしれないってことか。

「リアルだと、桜の花びらを塩とお酢で漬けるんですよ」

「へえ、簡単なんだな」

これはぜひやってみたいね。俺はリアルにある様々な桜レシピを教えてもらい、それと引き換えに桜の塩漬けを皆にちょっとずつ譲ることを約束した。花見が終わった後にも交流が出来るのはいいことだ。

「全部白銀さんに任せちゃっていいんですか?」

「うちはルフレもいるから、塩漬けはまかせてくれ」

「水精ちゃん、醸造を持ってるんですか?」

「発酵も持ってるから、味噌とかも作製時間が短縮されるんだ。桜の塩漬けも早くできるかもしれないぞ?」

俺がそう言った瞬間だった。斜め向かいに座っていた男性プレイヤーが、ガタンと音を立てて椅子から立ち上がった。確か石田って名乗ってたはずだ。

「発酵……だと?」

「え? どうした?」

「あー、ごめんなさい。こいつの事は気にしなくていいですから」

「で、でも、なんかブツブツ言ってるけど」

「色々あるんです。それよりも、発酵で作った調味料があったら見せてくださいよ」

「そうそう。興味あるな~」

露骨に話題を変えられたが、ちょっと怖いから放っておこう。どうやら石田は発酵で何か失敗をしたことがあるみたいだった。俺はインベントリから調味料類を取り出す。

「この辺は全部ルフレが作ったんだ。あと、そこに置いてあるワインも」

「味噌も醤油も高品質……。ワインも凄い高品質!」

「やっぱ発酵か……」

「ワインは作る時もちゃんとルフレが手間をかけて作ってるからな」

「手間?」

「ああ、葡萄を潰すときはきっちり足で潰したし、水も浄化水を――」

俺が言い終わる前に、周囲にいたプレイヤー数人が、先程の石田のように怖い顔で立ち上がっていた。男ばかりだな。その顔は真剣そのものだ。

「水精ちゃんの足踏みワインだと?」

「は、販売してないのか?」

「ヴィンテージなど目じゃないぞ!」

な、なんでこんな詰め寄られてるんだ? そんなにワインが欲しいの?

「いやでも、作った奴は全部今日の花見で提供しちゃったから、もう残ってない」

「な、何ぃ?」

「回収! 回収だ!」

「急げ!」

結局、男性プレイヤーたちは女性プレイヤーに取り押さえられ、僅かに残っていたワインは彼女たちに飲み干されたのであった。

男たちが泣いていて怖いんだけど。そんなにワインが好きなら、醸造所で買えるよ?