軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

36.転生王子、お見送りをする

兄様たちが旅立つ日がやってきた。

その日は朝から主塔の方では、慌ただしかったようだ。と言っても、ボクがいる側室棟にいるのは、まだアカデミー生になっていないディートハルト兄様とノエル兄様とボクだから、他人事なんだけど、ボクは主塔の三階バルコニーにいた。なぜかって?それは……

そもそもアカデミーは全寮制で、アカデミーを中心とした学園都市にあり、王宮から普通の馬車だと2日くらい掛かる。

そこはそれ。

何と言っても王族だから!

ヴァルテ王室専用の特別な乗り物があるのだ。

それがこれ!

主塔の前の大きな広場にものすごい存在感を出している大きな船。

これが我が国が誇る、陸上を走り、空を飛ぶ船“ランフォルシップ”である!

夢の中の世界で言う、電車と船を合わせた乗り物で、その機体の半分を占める下の逆三角部分は全て動力源だ。

車輪などは無く、レールも無いのにどう走るかと言うと、この船実はちょっと浮く。

夢の中の世界だとホバークラフトだっけ?あれに似ているかもしれない。

それでいてこの巨体を浮かすのだから、エンジン部がとても大きいのだ。

こんな巨体で道を走れるのかって疑問は、船体の上に張られた“帆”と下部の開閉式プロペラが解決してくれる。

そう、浮いているランフォルシップは、風の力を併せると飛ぶことが出来るのだ!

まぁそんなに沢山は飛べないし、燃料をめちゃくちゃ食うのであんまり使われないんだけど。

それでも王室の力と技術の象徴でもあるし、遠くに行く時はすごく早く移動できるのもあって、王族の誰かが他の国へ公式に訪問する際や、こうやって王子達がアカデミーへ移動する時に使われる。

国民や他国への牽制や威厳を見せるためってわけ。

「でっけぇですねぇ。あれが空を飛べるんですか」

ボクと一緒にバルコニーに来ているベディは、ランフォルシップを初めて見るそうだ。

「すごいよね~。まぁボクは乗った事ないんだけど」

だってまだ他国にもアカデミーにも行った事ないからね。

アカデミーに行くのが楽しみなのは、アレに乗れるっていうのもある。

「上の船室エリアはとっても豪華で何部屋もあるんだって」

何時間も別陣営の王子と従者たちが同室は気まずいからね。

とにもかくにも、滅多に見れない代物なので、こうして主塔の方まで見学に来ているわけである、

「あ、兄様たちだ」

船の周りには乗組員や技術者がまばらにいたが、王宮から兄様たちが出てきたのを見て急いで整列した。

兄様たちは皆アカデミーの制服とローブを羽織っている。

うう~いいないいな!

やっぱり制服ってかっこいいよね!

制服を着ると三割増しになる?んだっけ、夢の中の世界では。

兄様たちはみんな元からカッコいいから、すーぱーかっこよくなっている。

ちなみに始業式は明日なんだけど、学園に行く時は制服を着なきゃいけないんだって。

フィレデルス兄様とラウレンス兄様、オリヴィエーロ兄様、それからアルブレヒト兄様が船に向かうのと、それに付き従って荷物を持つ従者と騎士が続く。

全寮制と言っても寮にもいくつか種類があるらしく、兄様たちが入っている寮は従者と騎士を一人ずつ連れて行っていいんだって。

ここから見る限り、ラウレンス兄様の所のあの体のおっきな従者と、アルブレヒト兄様を怒鳴りつけていた従者くらいかなボクが知っているのは。

あ、ちなみにフィレデルス兄様のところのイェレは執事だから学園には付いていかないよ。執事は家を守るのがお仕事だからね。

「ほや」

従者たちのお顔を見ようと身を乗り出していたせいか、フィレデルス兄様がボクに気付いた様に視線を上げた。

そのフィレデルス兄様を見て、ラウレンス兄様も同じ方向を見てボクを見つけたみたいで、すぐにオリヴィエーロ兄様の所に走って行って、ローブを引っ張ってボクの方を指差した。オリヴィエーロ兄様の従者から怒りのオーラが立ち昇った気がした。

その様子にアルブレヒト兄様もこっちを向く。

計らずとも、上の兄様たち全員の視線を集める事になってしまったボク。

こういう時はどうすべき?

決まっている。

「いってらっしゃいませー!兄さまたち――――!!」

◇◇◇

ランフォルシップはお城の橋を滑走路に、城下町を飛び越えて行った。

街では近い距離でランフォルシップが飛んでいくのが見えるから、きっと大盛り上がりだろう。

「さてと」

急いでマチェイ先生の授業へ向かわなきゃ。

そう思ってベディと一緒に階段を下りていると、下から上がって来る人がいた。

誰かな、と思ったらその人は顔を上げて「あ」って顔をした。ボクも「あ」ってなった。

「ヴィルだ」

そう、上がってきたのはラウレンス兄様のところの家庭教師のヴィルデマールだった。最近よく会うね。そう思ったら、ヴィルデマールは不思議な事を言った。

「リエト殿下、今お伺いに行こうと思っていたんです」

「ボクに? ラウレンス兄様の家庭教師のヴィルが?」

なんで?

て言うか、何でボクがここにいるって分かったんだろう。

色んな疑問に首を傾げると、ヴィルデマールは階段を踏みしめてボクのそばに来た。その手には、十冊くらいの薄い本が抱えられていた。

「先ほど上から殿下達のお見送りをなさっていたでしょう?」

結果的にはそうだけど、本当は船を見に来ただけなんだけどね。まぁいいや。

「先日お話されておりました、エステリバリの子供向けの本です」

「えっ」

差し出された本の表紙には、走る男の子と海の絵があった。ラウレンス兄様みたい。

「わ~わざわざありがとう!」

そう言って受け取ろうとしたけど、ヴィルデマールは苦笑をして、後ろのベディに向けて差し出し直した。確かにボクではそんなにたくさんの本は持てないかも。いや、その前に従者からの品物は従者が受け取るんだったかな。

「ラウレンス殿下のご指示で、側室棟にまで渡しに行く予定でしたが、ちょうどリエト殿下をお見かけしましたので」

「うん、ありがとう!」

どんな事書いてあるのかな。早く中が読みたい……ちょっとだけ……とベディに言おうとして思い出す。

「そうだ、マチェイ先生の授業のお時間だった!」

船を見に来ちゃったから、時間ギリギリなんだった。しかもここは主塔だから、側室棟まで帰るのにはボクの足では時間が掛かっちゃう。

「ベディ! お勉強部屋まで超特急で!」

「あいさ! おまかせくだせぇ坊ちゃん!」

言うやいなや、ベディは僕を本を持っていない方の片手でぽいと投げて背中でキャッチする。ボクもがしっとベディのたくましい肩にしがみつく。

「じゃあね~ヴィル、またねー」

「失礼しますっ」

ヴィルデマールにあいさつをして、ベディは一足飛びで階段を下りて走り出した。