軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

39話「合流」

「ブルルルルァァァァァ!!!!」

二足で立ち上がるゴルディくんが荒ぶっている。

そこに果敢に立ち向かっていった第三騎士団の一人は蹴飛ばされ、吹っ飛んでいる。

第三騎士団の演習場は想像以上に混乱していた。ゴルディくんの少ない死角は精霊様たちがカバーしていて鉄壁だ。

「ゴルディくん?」

そっと声を掛けると、ゴルディくんはすっと何事もなかったかのように前足を下ろし……いつもの黒目がちな可愛らしい目で小首をかしげた。

「この馬!さっきまでの別人じゃねぇか」

「何者なんだよ、たった一言で!」

ざわつく第三騎士団にはたいそう迷惑をかけたようだ。

「弟の馬がご迷惑をお掛けしたようで申し訳ありません。 理由(わけ) あって今は姓は別なのですが、リシアンの兄のレオナリス・ヴァルディリアと申します」

「「「リシアンの兄」」」

辺境の冒険者ギルドでもこんな感じだったなぁ。何だか懐かしく思える。

「あぁ、リシアンがよく話しているあの兄上か」

「リシアンの兄上、弟さんを俺の部隊にください!」

リシアンはどこにいたって僕の話をしているんだな。そして何で娘の結婚の申し込みのような感じで、弟を第三騎士団に……。

弟の意思を尊重してくださいと、丁重にお断りはした。

「第三騎士団に討伐命令だ」

セイラン殿下がフードで隠していた顔を露わにして告げた瞬間、静まり返る。騎士たちは、揃った動きで礼をする。

「ザファルド・アルケイン伯爵が違法に魔獣を所持している疑惑がある。その魔獣は玄蜘蛛、知っている者はいるか?」

そろそろと挙手したのは

「新人、お前知っているのか?」

冒険者上がりなので言葉遣いにはご容赦くださいと前置きをして

「辺境大森林で、噛まれたことがあります。成体は拳大なのですが、幼体だと通常の蜘蛛と見分けるのは困難な程小さい魔獣です。そして精霊たちの天敵です」

巣にかかった精霊たちを支配することがある厄介な魔獣だそうだ。拳大だという小さく素早いことに加え精霊たちを使って攻撃してくるため、討伐はほぼ不可能だとされている。

「そうか……。では、そこのお前と一部隊は玄蜘蛛の討伐に向かえ。なるべく少ない人数で動きたい」

元冒険者の子は青ではなく顔色はもう白に近い。

「いや、自分は見たことがあるだけで討伐には……!」

「玄蜘蛛を見たことがあるのがお前だけだから来るように」

容赦なくセイラン殿下からそう言われて項垂れている。それとリシアンを勧誘している部隊長のところが選抜された。

「ゴルディくん、リシアンの居場所は分かるかい?」

そっと聞いてみると、首を横に振るゴルディくん。精霊たちが話し掛けるたびにゴルディくんの耳が動いている。

そしてピタリとある方向を向いて止まった。

「方向は分かるのかな?」

そう尋ねるとはっきりと頷いた。

そうしてその方向へと向かいだしたんだけど……

「ねぇ、これって電車ごっこだよね?!」

ゴルディくんたちの先導する道中、王弟殿下の叫びに内心では同意する。

「相変わらず何を言ってるんですか、叔父上。簡易魔法結界となるのだからいいではありませんか」

簡易魔法結界となるロープを皆持って移動している。これで物理攻撃にだけ備えればいいから、助かっている。でも電車ごっこと言われたら、もうそうとしか見えなくてつらい。

次第に王城の中でもほぼ外れに位置するような場所にまでやって来た。

「セイラン殿下、ザファルドの居場所が判明しました」

ルミスくんが報告に来たのだけれど

「……赤の霊廟か」

道中で大体の予測がついたであろうセイラン殿下が呟いた。聞いたことがない場所だな。

「最後にそこに弔われたのは四代前の当時の王太子の弟だった人だ、分かるな?」

そっとセイラン殿下が教えてくれたそこは……罪を犯した王族が眠る場所だった。

「第三騎士団はザファルドの捕縛、玄蜘蛛の討伐。協力者もいるようならそちらも同じく捕縛、なるべく生かしておくように。ルミスとアグニスはリシアンの保護が優先だ。イグナートとレオナリスは後方にて支援と待機。総員、配置につくように!」

「セイたん!俺が抜けてるよ?」

「叔父上はこちらの切り札です。大人しくしていてください」

……暗に邪魔だから動くなって言われている。王弟殿下が本気を出したら霊廟が一瞬で倒壊する。

この方が動く前に全ての事態を収束させなければならない。

僕たちの間に違う意味の緊張感が走った。

リシアン、どうか無事でいて……。

セイラン殿下が赤の霊廟の扉の前で声を掛ける――。

❖──❖──❖──❖──❖

階下には武装した集団がいる。

ルイシン殿下……第二王子殿下が来るっていうのに物々しいんじゃない?

にしても、こっちは放置ってザルかよ。あんま戦うことの指示には慣れてないってわけね。お陰で助かってんだけどさぁ。

風乃……がいないから、向こうの音を拾ってもらえないのがもどかしいけれど。

小太りのオッサンが何か指示してるみたいだけど聞こえねぇ。

ムカつくデブには蹴りの一発くらいはくれてやりたいけど、この状態だとさすがに無理か……。

第二王子殿下もさすがに一人では来ないだろうから、うまくそちらサイドと協力できたらいいんだけど……。

「ザファルド、私だ。例の精霊を連れてきた」

第二王子殿下か……?

武装集団の数人が扉の前で剣を構えている。中には口が小さく動いている者がいるし、魔法の発動にも備えていそうだ。

そうして……細く開いた扉の先からは真っ先に風乃が飛び出してきた。

「リシアン!」

何で風乃が第二王子殿下……じゃない、セイラン殿下の声か!ということは助けが?

更に半端に開いた扉を大きな馬が蹴破った。二足で立ち上がるその姿は……

「風乃!ゴルディ!!」

階下に一気に風と水の魔法をぶっ放す。突然凍った足元に気を取られる馬鹿どもが!

靴が床にくっついてやんの。隙を縫って風乃とゴルディの元へ向かう。ゴルディまで来てくれると思ってなかったから、マジでうれしい!

再会を喜ぶ俺たちだったが、開いた扉の向こうではセイラン殿下が珍しくポカンとしていた。

そして……なぜか突入してきた第三騎士団の面々が盛大に床で滑っている。何かごめん。

武装集団と第三騎士団が戦い始めたんですけど……ねぇ、何これ?

「リシアン!無事でよかった……!」

「兄上もいらっしゃったんですか」

自分の足元だけ溶かしながら兄上の元へ走ると、盛大に咳き込んだ。

高い乾いた音の咳をする俺を見て兄上の顔色が悪くなる。

「いや、ちょっと走ったら咳が?大丈夫なんで、そんな心配しないで……」

……兄上が、見たことがないくらい冷たい目をしている。

「ザファルドのせいだね?絶対に許さない」

溢れた魔力で空気が揺らいでいる。ちょっと待って、兄上がこんな怒ってるとこ見たことないんだけど?!

「いや、あの……あそこにいる小太りのオッサンのせいかと思うんですけど」

ガタイのいい武装集団に囲まれてて見にくいんだけど、あいつのせいです。

「二代目、あれがザファルドだよ?」

ひょっこり顔を出したギンさんがそう言うけど、え?

「はぁ?あの兄上と違って癒やされないタイプのハゲたデブが?!ザファルドって俺、昔貴族名鑑で見たけど痩せた陰気なオッサンのはずじゃん!あんなブクブク太って胡散臭い笑顔じゃなかったよ?」

「二代目……時の流れとは残酷なのだよ。彼はああ見えて俺と同い年だから、軽々しくオッサンとか言わないように」

セイラン殿下も呆れたようにこちらを見ている。

兄上が小さい声で

「僕は……癒やされるタイプの、デブ?」

なんて言い始めるから、あぁぁぁぁ!!!

「違っ、兄上は太ってないです!癒やしのふくよかボディです。健康的なので兄上はそのままで大丈夫です!」

いや、マジと違うんだって!もち肌はキメが細かく、癒やしの!そう癒やしのもっちりふくよかなんでそんな悲しい顔はしないでください。

向こうではザファルドと判明したオッサンが何やらブツブツ言ってて不気味なんですけど。

「どうやって逃げ出した……どこまでも私を馬鹿にして!」

胡散臭い笑みが消えたら消えたでキモいな、このオッサン。ハゲ散らかしてるからギンさんと同い年に見えねぇな。清潔感のあるもっと整然としたハゲであれよ。半端に隠そうとするのがよくないと思う。

「第一王子もギンケイもレオナリスも……揃いもそろって私を馬鹿にしている……」

王族を呼び捨てはさすがに不敬だよ?

「そしてリシアン・フェルネス……お前は一番目障りだ……お前だけは許さない」

何でそこで俺?!

歪んだ魔力を感じる魔法が発動され……セイラン殿下に向かって放たれたそれを見て、気が付いたら体が動いていた。

「馬鹿が!これでお前も終わりだ」

狂ったように高笑いをするザファルド。

俺に向かって手を伸ばす兄上。

魔法が軌道を変えて俺に向かってくるのがスローモーションで見えて……ヤバい。

――その瞬間、白銀の光に包まれた。