軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

835.テラ・レックスⅡ

身体を痺れさせるほどの咆哮が、後半戦の始まりを告げる。

煌々と輝く二本角と尾の結晶。

ここからはテラ・レックスも全開だ。

「【バンビステップ】!」

「【加速】【リブースト】!」

「【因幡ステップ】!」

速い飛び掛かりに、すぐさま退避を始める前衛組。

黄色く輝く尾の豪快な振り下ろしを、メイたちはしっかりかわす。

しかし直後、結晶の炸裂と同時に飛沫のように広がる液体。

それを浴びた付近の木々が、一瞬で枯れてしまう。

「気をつけて! それをプレイヤーが浴びるとステータスが低下するの!」

「さらに『重ねがけ』も可能で、一度浴びたとしても回避し続けることが必要だ!」

「りょうかいですっ!」

前回攻略で大きく苦しんだ理由の一つである、黄色の液体。

これを上手にかわしたメイたち。

テラ・レックスはさらに大きく尾を振り回し、液体を飛ばす。

「【加速】【リブースト】!」

ツバメはこれを急加速で、バニーは木の裏に入ることでかわすが――。

「「ッ!!」」

尾に弾き飛ばされた木々に巻き込まれ、ツバメが足を、バニーが肩を打たれた。

ダメージは衝突計算だが、二人は大きく体勢を崩した。

すぐさまテラ・レックスが跳躍し、飛び掛かりの体勢に入る。

「【加速】【リブースト】!」

「「因幡ステップ】!」

猛烈な勢いで迫る巨体。

ツバメとバニーは即座の高速回避で程よい距離を取り、反撃のために振り返る。しかし。

「「ッ!?」」

テラ・レックスは翼を大きく一度羽ばたくことで、その距離を伸ばしてきた。

「まっずーいっ!」

空中を一歩踏みしめたかのような軌道から、そのまま尾の振り降ろしへとつなぐ。

「ああっ!」

「痛ったー!!」

二人は転がることでどうにか直撃を防いだが、それでも突き上がる岩塊に当たり、ダメージは3割を超えてきた。

さらに黄色の液体がかかり、ステータスは全て2割ほど減少。

「【バンビステップ】!」

「【クイックステップ】!」

追撃を防ぐため、テラ・レックスを狙いに向かうのはメイとアーリィ。

するとテラ・レックスは、その尾を荒々しく振り回し出した。

「それっ! それそれそれっ! 【アクロバット】!」

「【リトルウィング】!」

尾だけでなく、飛び散る木々にも目を向けての回避。

すると今度は、輝く尾の叩きつけだ。

「【ラビットジャンプ】!」

「【エアダッシュ】!」

炸裂と同時に大量に噴き出す黄色の液体が、付近の木々を枯らしていく。

この液体を、メイとアーリィは同じ岩の背後に隠れることでどうにかやり過ごした。

「黄色の液体がやっかいだね」

「本当だねっ」

「メイ! アーリィ!」

レンの声に、目を合わせる二人。

「【裸足の女神】!」

「【リトルウィング】!」

すぐさまその場を離れると、二人を狙ってきた角の突撃が岩を消し飛ばした。

「あぶなかったー!」

単純な突撃も、その速度と範囲を考えれば十分な脅威だ。

さらに突き上げた角は、煌々と輝き爆発。

「ええっ!?」

黄色の液体が、辺り一面にド派手に飛び散った。

その範囲は広く、回避を許さぬ雨のような形態。

メイもアーリィもこれを被弾し、ステータスを低下させられた。

「【誘導弾】【フレアストライク】!」

「【十字光弾】!」

暴れ回る上にステータスまで下げるという、恐ろしい敵の攻勢。

ここでレンと灰猫が追撃を抑えるため魔法を放ち、わずかに敵の体勢を崩した。

これによってテラ・レックスの目標は、レン及び後衛組に変わる。

怒りのためか、突撃はこれまでよりさらに速い。

「はいそこっ!」

メイたちが戦っている間に張っておいた【設置魔法】【フレアバースト】が炎を噴く。

「もう一回!」

それでも突き進むテラ・レックスに、二つ目の【設置魔法】【フリーズバースト】が氷嵐を吹き上げる。

見事な攻撃。

だが『スーパーアーマー』状態のテラ・レックスは、それでも止まらない。

完全にレンをターゲットにして、直進。

「これで足止めもできないなんて……! でもっ!」

「【不動】【クイックガード】【地壁の盾】! 【天雲の盾】!」

今回はまもりが角による突撃をその場で制止し、続く爆破も完全に防御。

そしてさらに。

「【天雲の盾】!」

ここでもう一度、属性攻撃防御スキルを使用して二枚目の盾を『後方』、レンの方へ向ける。

「【ペネトレーション】【フレアストライク】!」

角の大きな振り上げから発生する液体噴出の前に、レンが貫通火炎砲弾を発射。

「ギャアアアアアア――――ッ!!」

顔面に炎砲弾を喰らったテラ・レックスはカウンターを取られ、大きくのけ反った。

「【加速】【リブースト】【反転】!」

見事な反転攻勢で生み出した隙。

そんな恐竜の股下を、背後から駆け抜けてきたのはツバメ。

盾を持つまもりの横を通り抜け、振り返るのと同時に【村雨】を握りしめる。

そしてテラ・レックスが、のけ反りからの反動で頭を下げた瞬間。

「――――【斬鉄剣】」

弧を描く白の剣閃が、風を巻き起こす。

ツバメが【村雨】を鞘に納めると、『カチン』と耳心地の良い音が鳴り、風が止まる。

するとテラ・レックスの二本角が斬れ飛んだ。さらに。

「【爆歩】」

この時すでに後方へ回り込んでいた夜琉が、猛烈な勢いで跳躍。

「――――【月穿ち】!」

大きくのけ反っているテラ・レックスの尾に、全体重を乗せた回転抜刀撃を叩き込む。

「【焔薙ぎ】だああああ――――ッ!!」

続く大きな振り回しに、砕け散る尾。

予想通り、結晶を含んだ部位は『破壊』が可能。

二本の角が弾け飛んだことで、突撃時や振り回し時の火力を減少。

砕けた尾によって、叩きつけの攻撃力も低下した。

「ステータス下げの影響が怖かったですが、レンさんの炎砲弾が効いていましたね」

「すごーい!」

連続で放たれた強烈な剣撃に、メイが拳を突き上げる。

残りHPが3割ほどとなったテラ・レックス。

ここで、戦い方をさらに荒々しいものへと変える。

角を斬り飛ばしたツバメに向け、猛突進。

「【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】!」

ステータス低下で遅くなった足で、これを回避する。

するとテラ・レックスは、その両翼を広げて風を起こす。

この戦いで生まれたたくさんの枯れ木や倒木が、容赦なく付近を跳ね飛んでいく。

「【因幡ステップ】!」

ツバメとバニーは、ステータス下げの中で必死の回避。

かすめていく木々に体勢を崩したところで、今度は突撃が迫る。

「【跳躍】! なっ!?」

「痛ったーい!」

しかし普段より出力の下がった『走り』ではわずかに足りず、弾かれる形となった。

ダメージは2割弱。

テラ・レックスは、この攻勢をさらに継続。

羽ばたきによって起きる風で、大量の木々が飛んで来る。

「いつもより体が重い……! 【リトルウィング】!」

アーリィも受けたステータス下げの影響に、戸惑いながら回避を続ける。

するとテラ・レックスは、そのままアーリィを狙って突撃。

「【エアダッシュ】!」

体当たりをかわすため側方への回避を選ぶが、急停止から放たれるのは尾の振り払い。

「きゃあああっ!」

威力の下がった尾の振り払いだが、『弾く』威力は十分。

アーリィは森の中をバウンドして転がる。

テラ・レックスの暴れようは、なかなか恐ろしい。

「まもりちゃん」

「は、はひっ」

そんな中、顔を見わせた二人が前に出る。

テラ・レックスは前方にいたまもりに照準を付け、必殺の体当たりを仕掛ける。

「【コンティニューガード】【地壁の盾】!」

頭部による正面衝突から、突き上げ。

これを防御するも、数メートルに渡って弾かれた。

今回、不動を使わなかったのには理由がある。

「【バンビステップ】!」

ここに駆け込んできたのはメイ。

テラ・レックスが作り出した大量の倒木の中から、特に大きなものを選んでつかむ。

「いきますっ! 【大旋風】!」

そしてそのままハンマー投げのような体勢で、グルグルと回転。

テラ・レックスに向けて、台風のように接近する。

「一、二、三、四!」

その太い脚部に、大木を豪快に叩きつけていく。

【不動】を使わなかったまもりは、メイの大木を盾で受けて飛ばされることで攻撃範囲から上手に離脱。

「五、六、七、八!」

テラ・レックスも得意の防御で、大木大回転から身を守る。しかし。

「九、十、十一、十二っ!」

立て続けの回転攻撃でついに体勢を崩し、ヒザを突かせることに成功。

「バニーちゃん、お願いしますっ!」

「りょーかいっ! 【因幡ステップ】!」

メイの合図。

とんでもない攻撃方法に驚きながらも、バニーはこの隙を突きに行く。

「【微塵斬り】だぁぁぁぁーっ!」

その剣撃の軌道はめちゃくちゃ。

しかし異常に速い、二刀流の乱舞。

空刃が高速で生まれては消える、狂ったような怒涛の連撃を叩き込む。

一撃ごとに舞うエフェクトの発生から消滅までの速さは、目にも止まらぬほどだ。

テラ・レックスのHPは、すでに残り1割弱まで減少。

「いきますっ! 【モンキークライム】!」

バニーがつないだ時間を利用して、メイは詰めに入る。

テラ・レックスの足から一気に身体を駆け上がり、そのまま頭部へ。

「【ラビットジャンプ】からの【アクロバット】!」

そして折られたばかりの角を蹴って、高く跳躍。

「灰猫ちゃん!」

「任されたにゃん」

メイはこの状況において、付近のプレイヤーの位置や状況を把握。

灰猫が杖を構えていることを発見して、呼び掛けた。

そして体勢を立て直したテラ・レックスが、その剛腕でメイを叩き落そうとしたところに――。

「がおおおおおお――――っ!!」

【雄たけび】で硬直を奪った。

そして着地と同時に【穴を掘る】スキルを使用して落下。

直後、強烈な黄金の輝きが灰猫の杖に灯る。

「――――【デモンスレイブ】」

そして、巨大な金の十字光が大地に突き立った。

「「「「ッ!!」」」」

魔力の爆発が十字型になるというめずらしいそのスキルは、目を焼くほどの輝きを見せる。

その凄まじい威力に、驚きを隠せないレンたち。

テラ・レックスを粒子に変え、付近の木々を押し倒し、さらに地面を大きくへこませるその一撃は、魔導士なら上位上級の最高峰レベル。

その火力ゆえに、使用後は他のスキルまでまとめて『クールタイム』化してしまうという【知力】祓魔師の最大奥義は、地形を軽く変えるほどの一撃となった。

「……ありがとにゃん」

「テラ・レックスに壊滅させられた私たちに、反撃を決める隙を作ってくれてたね」

「おかげで、気持ち良い戦いになったな」

「こういう戦いにしようって、いつの間に決めてたの?」

「決めてはないわね。何となくかしら」

「そうなの……!?」

メイたちは特に決めていたわけではないが、リベンジ戦のアーリィたちに見せ場を作るよう動いていた。

初見の大物相手にそんな戦い方を仕掛けたメイたちに、感謝やら驚きやらで唖然としてしまうアーリィ。

夜琉や灰猫も、これには言葉を失う。

「……ていうかメイはどこ? メイーっ?」

「はいっ!」

穴を掘るで隠れたメイは、その後吹き荒れた猛烈な風でそこそこ土をかぶって埋まっていた。

バニーに呼ばれてひょこっと地面から顔を出したその姿は、巣から顔を出したプレーリードッグの様。

アーリィたちにとっては緊迫の雪辱戦だったが、最後はそんなメイの姿に楽しく笑うのだった。