軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

830.いざ水中へ!

「【ドルフィンスイム】!」

華麗な飛び込みで、水中へ潜るメイ。

その後に続いて、アーリィたちも池の中へ。

「「「「っ!!」」」」

その光景に、思わず見とれてしまう。

内部には紋様の刻まれた柱や建物が並び、その姿を陽光が照らし出している。

しかし使われている石材の素材感や、使われている紋様が独特なことから、これが遺跡と同じ文明のものと分かる。

まずはとにかく、付近の探索から。

その速く自由な泳ぎで、メイは一気に建物を見ていく。

明らかに普通のプレイヤーとは違う華麗な泳ぎと、陽光差し込む水中遺跡の綺麗さに感嘆してしまうアーリィたち。

「……ん?」

メイが目を付けたのは、ところどころ地面の亀裂から空気の泡沫が浮かび上がっている地点。

昇ってきた空気は、一部の建物の中にたまっているようだ。

そこが『呼吸ポイント』なのだろう。

速い泳ぎと高い呼吸ゲージを持つメイは、率先して付近を探索。

次の呼吸ポイントを見つける度に、アーリィたちを案内する形で水中遺跡を見て回る。

するとその移動中、陽光に反射する金属のような輝きが見えた。

「あれってもしかして……!」

レンが少し大げさに指さした意味に、アーリィたちも気づく。

迫ってくるのは、ギラリと光る魚の群れ。

身体が剣のようになっている『ソードフィッシュ』たちは、このマップに住むれっきとした魔物。

群れで迫り、当たればHPがあっという間に削り切られてしまうという、恐ろしい群生の敵だ。

水中での動きは当然、敵の方が速い。

そしてそんな地形的不利という状況の中、ソードフィッシュの群れはツバメに狙いをつけた。

迫る刃の群れ。

まだ次の呼吸ポイントは見えておらず、戻るにも距離がある。

泳いで逃げ切るというのは難しいだろう。

「【地壁の盾】!」

そんな中、ツバメの前に出たのはまもり。

ソードフィッシュたちは一方向から突撃してくるため、盾での防御が活きる。

水中のため少しフラフラするまもりに、背後からツバメが抱きしめることで安定させ、見事に一団の突撃を守り切った。

しかし通り過ぎて行ったソードフィッシュたちは当然、弧を描く軌道で再びツバメをロックオン。

もう一度特攻を仕掛けにくる。

ここでやっかいなのは、【フレアストライク】や【フリーズスラスト】などの魔法が水中で活きないという点だ。

さらに雷系の攻撃は味方を含めての感電を引き起こすので、いよいよ対策が難しい。

「【十字光雨】」

そんな中、杖を掲げたのは灰猫。

頭上数メートルの位置に現れた無数の十字光が、一斉にソードフィッシュの群れに降り注ぐ。

これによって群れは大きくバラけて、その数を減らした。

「【十字輝光】」

さらに自身の頭上に小型の十字光を八つ展開し、そのまま一斉射出。

光の尾を描いて飛ぶ十字光も聖属性ゆえに、水中でも影響はなし。

黄金の輝きは、さらにソードフィッシュの数を減らした。

そして群生型の敵は、数が減ってしまえば大きく弱体化する。

続く体当たりはもう、回避も可能なレベルだ。

「【十字光弓】」

美しい光の矢を引けば、生まれる四本の黄金矢。

残る十数匹のソードフィッシュは、さらに数を減らして瓦解。

灰猫のスキルは、このマップと相性がいいようだ。

解散するような形で群れを解き、散り散りになることで打倒となった。しかし。

「っ!!」

広がる安堵の空気の中、メイが海面の方を指さした。

足元にかかった魚影は、敵巨大魚のもの。

戦いは避けたい状況ということもあり、崩れた建物の陰に入ることでやり過ごす。

「……進みましょう!」

巨大魚が離れたのを見たレンは、少し急ぐ素振りで次の呼吸ポイントへの移動を提言。

レンやツバメ、そして灰猫のように【耐久】の少ないメンバーは呼吸ゲージがかなり減っており、前のポイントへ戻るにも距離がある。

そして呼吸の要素は、ある意味容赦がない。

急がなくてはいけない状況だ。

先は大きな神殿が崩れてできた、疑似の洞窟のような造りになっている。

そこからわずかに出ている気泡は、その中に呼吸ポイントがある証拠だろう。

覚悟を決め、全員で潜り込む。

ここでもメイが先行し、とにかく呼吸ポイントを目指して進む。

【耐久】ゼロ組の残りゲージは、もう残りわずかだ。

「見えた!」

メイは水から上がれる場所を発見して先行。

すぐに【耐久】ゼロ組を引き上げ、生き残りに成功した。

「やっぱり呼吸ゲージは冷や冷やするわね……」

「……危なかったにゃん」

数秒が勝負を分ける状態には、灰猫も冷や汗状態だ。

「間違いなく、メイさんの先導がなければ死に戻りでした」

良かったと、息をつく7人。

「……7人? 待って、夜琉は!?」

「【ドルフィンスイム】!」

「っ!」

メイとアーリィはすぐさま水中へ戻り、水洞と化した道を逆行する。

「いたっ!」

見れば狭い通路の真ん中に大太刀が引っかかり、進めなくなってしまっているようだ。

さすがに夜琉のゲージも、危うい状況。

メイが先に大太刀を外す作業に入り、アーリィは夜琉の道案内を開始。

大太刀と一緒に夜琉をまとめて回収し、大急ぎで呼吸ポイントへ戻る。

こうして夜琉は、ギリギリのところで生き残りに成功した。

「あ、あぶなかった……」

涙目状態の夜琉に、バニーたちは大きく息をつく。

「メイちゃんありがとう、夜琉が助かって良かったわ」

「すまない……」

「いえいえー、無事でよかった! 二人がかりで正解だったね!」

「夜琉は最後尾だったから気づかなかった……私がもっと周りを見なきゃいけなかったね」

無事救助に成功したメイとアーリィは笑い合う。

「そうだ、聞いてくれ! もがいている途中に、石柱の陰に道らしき物を見つけたんだ!」

「本当に?」

この空間は呼吸ポイントにはなっているが、進んだ先はまだ建物の外に戻ってしまう形。

実はこの隠された道の発見は、お手柄だ。

メイは再び水中に戻り、夜琉の言っていたのであろう石柱を確認。

ガレキの中には確かに隙間があり、先へ進めそうだ。

「道、あったよ!」

「これこそ、怪我の功名というやつだな」

夜琉は、ちょっと満足そうにうなずく。

「ちょっとよーるー、うまくいったみたいな顔してっけどさー、まさかの脱落かと思って心配しちゃったんだけどー」

そう言ってバニーはニヤニヤしながら、夜琉の頬を指先でぷにぷに。

アーリィは「まあまあ」と苦笑いを浮かべ、当の夜琉はぷるぷるしながらされるがまま。

「ふふ、やっぱりこういう冒険はいいわね」

「ピンチも乗り越えると楽しいね!」

「は、はひっ」

ピンチ直後でもいじり合いのできるバニーや夜琉の姿に、メイたちも笑い合うのだった。