軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

828.孤島の第一歩は

「っ!」

洞窟を抜け、エルラト禁域にたどり着いたメイたちを出迎えたのは、部族の手荒い歓迎だった。

これをどうにか『戦わず』に逃れた8人は待ち合わせの時間を決め、その日はログアウト。

戻ってきたまもりが見つけたのは、横たわる虎のお腹の上に寄りかかってくつろぐメイだった。

「あ、まもりちゃーん」

呼ばれて近づくと、「隣においでよ」とメイが笑顔で言う。

「え、ええっ?」

「大丈夫だよ!」

「……し、失礼いたします」

言われるまま、メイの隣に腰を下ろすまもり。

虎の毛並みは柔らかくて、触り心地がいい。

「ねっ?」

「は、はひっ」

メイと虎。

最高の空間を、まもりは緊張しながらも堪能する。

「あら、可愛いわね」

「これは良き光景です……っ」

続けてやってきたレンが虎を撫で、ツバメはメイたちの前に正座する。

禁域と呼ばれる島の真ん中でも、くつろぐメイたち。

「おおっ!?」

「虎って、そんなに仲良くなれるものなの……?」

「驚いたにゃん」

その光景に、驚きを見せたのは夜琉とアーリィ。

灰猫もそーっと虎の頭を撫でてみる。

「わったしもー!」

そう言って、まもりを挟むように飛び込んできたのはバニー。

メイとバニーに挟まれたまもり、右も左も可愛くて緊張度が増す。

冒険の続きは、こうして和やかな雰囲気で始まった。

「さて、部族の攻撃は本当に容赦なかったけど、彼らの住処に行って何かを見つけるのが目的だったの?」

「その通りだ。部族の集落は遺跡の一部を利用しているのだが、そこには今も生きてる装置がある」

夜琉はその時のことを思い出しながら、その凛々しい目を細めた。

「その装置を使うことで、新たな道が開けるようなのだが……」

「部族の居る遺跡の一部は、何かにつながっているみたいなの」

どうやら部族が済むエルラトのような有人の遺跡と、かつてメイたちが挑んだラプラタのような無人の遺跡が存在するようだ。

そして部族が住む遺跡の中には、秘密を抱えているものがある。

その秘密が、本編と言えるシナリオに関わっているのだろう。

「広い島を時間をかけて見て回って、いくつもクエストらしき要素があったんだけど、どれも部族にはつながらなかったんだ。やっぱり言葉が通じないのは大きくて……」

アーリィもそっと虎を撫でて、その頬を緩ませる。

「単体で行動している部族を見つけても、逃げられちゃうのは切なかったねー」

「それじゃあ攻略組が崩壊するきっかけになったのは、どういう流れからなの?」

「私たちの前で部族がモンスターと戦いを始めたの。助けに入れば何か起きるかもって考えて戦い始めたんだけど、そのまま負けちゃった形だね」

「部族でも苦戦するような敵だったからー、あれを倒せば認められるんじゃないかって思ったんだけどねー」

「助けに入っても部族は私たちがいることを考慮せずに範囲攻撃を使ってきて、戦いが大きくなると他の魔物までやって来た。それで攻略組は崩されていった感じなの」

「なるほどねぇ……」

22人の攻略組でも負けてしまう。

入り乱れの戦いは確かに難しいが、そもそも敵の強さ自体がかなりのものなのだろう。

「場合によっては、部族と一緒に戦ったりもあるのかしら」

「その場合は先に、何かしらのクエストが必要になりそうだね。距離を縮めるきっかけみたいな」

やはり敵視されているうえに言葉が通じず、高い火力の攻撃まで受けるとなると、シナリオを進めるのは大変そうだ。

「とりあえず私たちも、クエストになりそうなものを探してみる?」

「またメンバーが替われば、見える物も違うかもしれないね」

「しょーじきメイたちと一緒なら、エルラトでも楽しいだろうからねっ、それがいいよ!」

「ねー」と言いながら、まもりの肩に顔を寄せるバニー。

「っ!?」

さらにメイも「うんっ」と答えて頭を寄せてくる。

まもりはその距離の近さにもう、あわあわするしかない。

「でも、何をどこから探しましょうか」

「以前見かけたきっかけらしきものは、地図に記してある。そこをあらためて回ってみるというのもありではないか?」

「ここまでのメイちゃんたちの活躍を見るに、いっそのこと好きに動いてもらう形でもいいかもしれないね」

悩むアーリィと夜琉。

ハズレだった『きっかけ』っぽい場所をめぐるか、とにかく島を歩いてみるか。

悩み出したところで、メイが提案する。

「動物たちに何か聞いてみるのはどうかな?」

「動物たち?」

首を傾げるアーリィ。

メイは右手を上げ、口元にそえる。

「どなたかこのあたりに詳しい方、いらっしゃいませんかーっ!?」

「「「…………?」」」

そんな大きな声での問いかけに、バニーたちが反応に困っていると――。

聞こえ出す、草や葉を鳴らす音。

「な、なんだ?」

そして近づいてきた音に、夜琉が付近をキョロキョロし始めた瞬間。

「「「「ッ!?」」」」

突然目の前に、一頭の豹が現れた。

さらにそこから小柄な猿たちが木々の上に現れ、派手目な色彩の鳥たちも集合。

遅れてヘビたちもやって来て、あっという間にたくさんの動物たちに囲まれた。

「こういう島は、種類も豊富ね」

「やはり南の方は、動物たちもどこか鮮やかな感じがあります」

「す、すごいです……っ」

【呼び寄せの号令】は、付近の動物たちがその【動物値】次第で集まるスキル。

密林と呼べるような島でメイが使えば、当然たくさんの仲間たちが集まってくる。

アーリィたちはもちろん、まもりも初見のスキルに目を奪われる。

「どこかに問題を抱えている部族の人がいないか。探すのはそんなきっかけかしら」

「う、うん、いいと思う」

レンの問いに、アーリィは困惑したまま応える。

すると豹がこちらに背を向けて、猫のように一鳴き。

「あの子が知ってるみたいだね」

立ち上がって虎の頭を撫でた後、メイは駆け出す豹の後を追って走り始めた。

突然の流れに驚きながらも、先頭のメイに続くアーリィたち。

そのまま木々の間を駆け抜けて進んでいくと、そこには陽光に照らされた池があった。

そして、部族の少女らしき姿が見える。

「本当にいた……!」

思わず驚きの声を上げるアーリィ。

「すっごーい! しかもあれって、前回遠征の時は見つけてない子だよーっ!」

「おそらくクエストの発生時間が短いのだろうな。これは期待できるぞ……!」

バニーは【因幡ステップ】の跳躍中に、「やったー!」と両手を上げたまま一回転。

見えたのは鮮やかな水色のストールを肩から掛け、緑と黄色のバンダナを巻いた、ショートカットの黒髪少女。

年齢は11,2歳といったところか。

少女はため息をつきながら、池をのぞいていた。