軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

827.部族

「あっ! 光が見えたよ!」

差し込む自然光を見つけて、メイが歓喜の声をあげる。

思わず互いを見合うアーリィたち。

皆一緒に駆け出して、そのまま長かったダンジョンの出口へ。

飛び出せばそこは、まぶしい陽光の注ぐ森の中。

「「ばんざーい!」」

メイとバニーは並んでバンザイをした後、抱き合って喜ぶ。

こうして、無事全員そろってダンジョンを抜け出した八人。

前回攻略組が死に戻りを繰り返しつつ進んだダンジョンを、なんとノーミスでの攻略となった。

「帰ってきたね、ここが――――エルラト禁域だよ」

「内部に入り込むと、南国の森の雰囲気ですね」

陽光と海の空気、広葉樹や木々をつなぐような蔦植物が豊富に見られるのには、世界南部の孤島らしさを感じる。

鳥の鳴き声も、どこか独特だ。

「……何か聞こえる」

そんな中、動物たちのものとは違う騒がしい音に、いち早く気づくメイ。

「誰か来る! それも沢山だよ!」

「部族だよ! まさかこんなに早く見つかるなんて! 退避しましょう!」

思わず互いを見合う元攻略組の面々。

急ぐアーリィが動き出そうとしたところに、木々の合間に迫る部族の姿が見えた。

「ハ――――――ッ!!」

それは何の合図か、数十人に渡る部族の部隊が武器を手に木々の間を駆けてくる。

南国の鳥のように鮮やかな襟巻やストールが、彼らの証なのだろうか。

「攻撃には注意して! 思った以上の火力と物量でくるの!」

アーリィがそう注意した瞬間。

紋様の描かれた長いストールを肩に巻いた魔術師タイプの部族が、杖を掲げた。

掲げた杖は、光沢のない金属のような素材に芸術レベルの彫金を施した不思議な一品。

しかしそこから同時に放たれるのは、32本のビームのような熱線。

その軌道に誘導がかかっていることが、即座に分かる。

「み、みみみなさん、私の後ろに! 【天雲の盾】!」

一撃で複数のプレイヤーを消し飛ばしてしまうような熱戦の集中砲火も、まもりの盾が完璧に受け切る。

巻き起こる盛大な爆発から、並のプレイヤーなら即死級の火力であることを、レンもすぐに理解した。

まもりが『崩し』の32発をまとめて受けると、ここで部族の一人が謎金属の槍を投擲。

「槍が来るにゃん」

投げた槍は一瞬消失し、一定の空間をすっ飛ばしてメイの前に現れた。

「うわっと! 【アクロバット】!」

これをバク転でかわすと、背後の岩に刺さった槍は雷光を放ち炸裂。

一瞬で岩を黒焦げにした。

さらに空へ向かって放たれた大量の矢は、流星のように魔力を伴い降り注ぐ。

まさに怒涛の攻勢だ。

レンたちはこれを、とっさに木の陰に隠れてやり過ごす。

「部族ってこんなに強いの!?」

「使用武器が、部族にしては浮いている感じですね……!」

「できれば退がりたいんだけど……足に自信がない人は先に退避を始めて」

「なんとか我らで時間を稼ぎたいところだな」

「そういうことなら、メイにお願いしていい?」

「おまかせくださいっ!」

ここでレンたちは、早々にメイに任せてまもりを下げる。

ツバメが先導し、レンと灰猫にも退避を促した。

「メイちゃん一人で!? そっか、メイちゃんなら一度は分かれてもすぐに合流できる。でも――」

メイは迫る矢を踊るようにかわして、続く熱線を引き付けてから【アクロバット】でまとめて回避。

早くもその凄まじい回避能力を、遺憾なく発揮する。

「準備完了! 大きくなーれ!」

「できれば攻撃は――」

しないでいければと、アーリィが言いかけたところで伸び出す厚い木々の壁。

【豊樹の種】を五つもまいて使えば、生まれる壁は鉄壁。

こうなってしまえば走って抜けるにしろ、攻撃で払うにしろ部族は多くの時間を取られる。

「これなら皆一緒で大丈夫! 攻撃もしなくて済みますっ!」

メイの生み出した木々の壁が、槍を防ぎ矢を払う。

この隙に八人は逃走に成功。

部族は強く、数も多い。

とはいえこれまで数多くの強敵をくだしてきたメイたちが、一度『戦う』と決めれば戦況は変わる。

八人いれば、返り討ちにすることも可能だろう。

しかし。

この時点で『ぶつかって』しまうと、『敵対』という形で流れが決まってしまうのではないかと、アーリィは戦いを快く思っていなかった。

そしてメイは、退避はするけど敵対にならないという形を見事にやってのける。

難しい状況を切り開き、八人は無傷のまま部族から距離を取ることに成功。

「今回はちょーっと不運だったかも。ダンジョンから出てきたタイミングが、部族の見回りにかぶっちゃったんだね」

安堵の息をつくバニー。

「それにしても、本当に容赦のない攻撃だったわね」

「話す余地もない感じでした」

「言葉が通じないこともあって、攻撃してしまっていいのか分からないのが難しいところなの」

「だがメイは楽しそうな割に完璧だったな。まさかあの状況から両者無傷での退避を成功させるとは。最悪のタイミングと敵対の可能性、両方を免れた……バニー」

「なーに?」

「最初からメイたちと――」

「もう、ダメだよ!」

今度はアーリィ、夜琉の頭にチョップを入れて、続く言葉を止めるのだった。