作品タイトル不明
825.暗闇と石化の迷宮
「ここからは要注意区間だね」
そう言ってアーリィは「よしっ」と、気を引き締める。
「何か怖い仕掛けでもあるの?」
「ゴルゴンの『髪のヘビ』が暗闇の中を追ってくるの。この場所で石化って本当に大変だから」
「それで何度もやり直したな。攻略組はバラバラになってしまった場合、死に戻り合流という話になっていたからな」
「一発全身石化ならまーだマシなんだけどねー。足だけ石化して取り残された状態で攻撃されるパターンは、めーっちゃ怖いんだよね」
この先は、網のように入り組んだ道が続く区画。
道はいくらでもあり、その大小もまちまちだ。
視界の悪い洞窟内には、鍾乳石がそのまま伸びて作られたような柱や大きな岩が影を作っている場所もある。
そんなところから石化スキルを持つヘビが大量に出てくると考えると、確かに恐ろしい。
「しかもゴルゴン本体は未確認。とにかく髪のヘビが、どこまでも伸びて追いかけてくる感じなの。そのヘビに石化の能力があるから大変なんだよね」
「数も冗談のように多いからな。前回はとにかく逃げ切ることを最優先として、通り抜けたんだ」
「なるほどー」
そう言いながらメイは最後尾へ下がり、【原始肉】をそっと取り出しかじりつく。
さりげなくまもりが盾を出して壁となり、レンとツバメが前に出て話を聞く態勢へ。
「石化は光線の形でくるから、気をつけようね」
「ド、ドキドキしてしまいます……」
「石化は即死の可能性もあるので、緊張感がありますね」
「「「…………」」」
「この流れで私の腕にしがみつくのはやめときなさいって!」
そう言ってレンは、笑う三人を解いてスキルを発動。
「【増幅のルーン】」
先んじて自らにルーンをかける。
すると松明の照らす先に見えたのは、鎌首をもたげる『髪ヘビ』の群れ。
ゴルゴン本体とつながっているため、やはりその尾は見えない。
その内の一匹がこちらに気づくと、群れが一斉に動き出した。
「【連続魔法】【フリーズボルト】!」
6発に増加した氷弾の連射が、蛇たちに直撃して進行を止める。
「行きましょう!」
氷結攻撃を行った場所には他の髪ヘビも集まってくることを予想し、別の道を選んで走り出す。
いびつな網状の区画、最終的に『最奥』の道にたどり着けばそれで良しだ。
選んだ大きめの道を駆けていくと、抜けた先はやや広いホール状の洞穴。
今度は点在する岩の陰から突然、髪ヘビたちが顔を出した。
「あっぶなーい!」
あがった声はバニーのもの。
直後、髪ヘビの発した赤い石化光線が洞窟内を駆け抜けていく。
メイはまもりの手を引き、これを回避。
「あ、ありがとうございますっ」
「いえいえーっ!」
「【浄炎】」
反撃は灰猫。
放った白の炎が直撃し、髪ヘビたちを岩ごと焼く。
この隙を突き、一気に駆けるメイたち。しかし。
「「「ッ!!」」」
聞こえた音は、天井に走るヒビが鳴らしたもの。
崩れた大小の岩塊が、一気に落下してくる。
それは喰らえば大ダメージに加えて転倒、避けても道を塞ぐ障害物となる。
「【かばう】!」
ここで動いたのはまもり。
「【不動】【地壁の盾】!」
先頭に出て、盾で受けた大岩が割れ砕ける。
すると先ほどのものとは別の髪ヘビたちが、後方からやってきた。
「岩を喰らっていたら、髪ヘビの餌食というわけか!」
「いきましょう!」
八人は走り、崩落を続ける洞穴を抜け出し進む。
その先には、分かれた三本の道。
左に見えたヘビの一団を見て、正面を進むことを決定。
すると追ってきたヘビたちと左側のヘビたちが合流し、さらにその密度を増した。
「これは捕まったら終わりね!」
「お、恐ろしいです……っ!」
「とにかく先を急ぐんだ!」
駆ける八人。
追ってくるヘビの速度も侮れない。
「群れに捕まった時は、イチかバチか大技で対抗するしかないわね」
「崩落に助けられる可能性に、賭ける形だね」
レンとアーリィはうなずき合いながら、最奥目ざして走る。
出た先は広い空間。
だがそこには、異変に気付いた人型の魔物が二体。
「オーガまで住んでるの!?」
前方からは二体のオーガ、後方からは石化のヘビ。
戦闘に手間取れば石化されてしまうという、恐ろしい仕掛けが続く。
さらにオーガは先手を打つ形で、手にした鉄塊のような斧を擦り上げた。
生まれた火花が、爆炎を生む。
実質的な『火の壁』は、まさに時間稼ぎのために攻撃だ。
「この広さなら間違えはないっ! 【爆歩】!」
しかし夜琉はオーガの放った爆炎を、『スーパーアーマー』状態でぶち破り接近。
豪快な剣の一撃で、手前のオーガを両断した。
「助かりました! 素晴らしい威力です……!」
「【連続魔法】【フリーズボルト】!」
即座にレンが二体目のオーガを打ち、バランスを崩させる。
「【クイックステップ】!」
そこに踏み込んだアーリィが華麗な三連突きで続き、そのまま身体を横回転。
「【アサシンピアス】」
背後から出てきたツバメの見事な連携で、二体目のオーガも打倒。
すると広い洞穴内のヒビからも、さらに髪ヘビたちが入り込んできた。
「ここも時間を取られていたら、ヘビの光線に苦しむことになってたわね……っ!」
洞窟内を斜めに横切るような石化光線を慌ててかわし、オーガの洞穴を抜ける。
道はやや下り。
たどり着いた場所はさらに広い、ホールのような下層部分。
この場所には、数本の道がある。
しかし中心にいたオーガを見て前衛のアーリィ、バニー、メイが先行したところで今度は足元も崩れ出す。
「この勢いって、ダンジョンの帰り際にやるやつでしょう!?」
大型の岩塊の落下から、続く大量の崩落。
先行した前衛三人とレンたち五人という形に、パーティを割られてしまった。
「私たちはこのまま進むわ! メイ! 最奥で再会しましょう!」
この状況でもメイの耳なら聞きつけるだろうと判断して、レンは声を上げる。
崩落の罠で分かれた二つのパーティ。
レンたちは、髪ヘビの追跡を確認しつつ網目の道へ。
見えたのは、狭い空洞の部屋。
その中に四体のゴブリンを見つけた瞬間、洞窟内を噴き抜けていく風が松明の火を消した。
「このルート、最悪かもしれないぞ……っ!」
夜琉の言葉の直後、部屋の天井に刻まれた魔法陣が発動。
魔法珠ランプが強制的に灯りを失い、視界が闇に閉ざされる。
「まもりさんは盾を! レンさんの前にいるのは私です、ルーンをお願いします!」
「はひっ!」
「なるほど、そういうことね! 【増幅のルーン】!」
まもりはその場で盾を構える。
「【スライディング】【跳弾投擲】【連続投擲】!」
するとツバメはまもりの足元を滑り、狭い室内へ。
ルーンによって8発になった【雷ブレード】を一斉投擲。
放たれたブレードは狭い洞穴内をランダムに跳ね、【麻痺粉】持ちゴブリンに直撃。
通電によって、四体全ての動きを止めることに成功した。
この隙にレンが松明を点け直し、暗いながらも戻る視界。
「今です!」
「了解した!」
動き出したのは、ツバメと夜琉。
気付いたゴブリンたちが剣を振り上げた時にはすでに、二人は目前だ。
「【電光石火】【反転】【アサシンピアス】!」
「【焔薙ぎ】!」
ツバメは速い移動からの連撃で、夜琉は強烈な払いで、ゴブリンたちを打倒。
続く罠の連続を、見事に打ち破ってみせた。