作品タイトル不明
824.洞窟を進みます!
「気をつけて! そこには隠れてプレイヤーを狙う魔物がいるの!」
「【投石】!」
岩陰から飛び出してきたのは、三体の武装コボルド。
しかしそこに、豪速の【投石】を放り込みさっそく一体卒倒させる。
「続きます! 【加速】!」
「この先には足元に、魔法陣の罠があるよーっ!」
「【壁走り】!」
足元に罠があるなら、壁を駆ければいい。
先行したツバメが足元の罠を越え、手前のコボルドを連撃で打倒した。
すると三体目のコボルドは、ツバメを狙うのではなく岩壁に触れて陣を作動。
「なっ!? 壁にも魔物が始動させる罠があったのか!?」
意外な展開に夜琉が声を上げる。
「【かばう】【天雲の盾】!」
しかしツバメを狙って放たれた五連続の光矢は、飛び込んできたまもりに全て弾かれた。
「【誘導弾】【高速魔法】【フリーズボルト】!」
そこにすぐさま、レンの氷弾連射が突き刺さる。
「真っ暗な洞窟はドキドキしちゃうね!」
「罠の類も多いですね。しかもそれらが魔物と組み合わせになっているとは……このダンジョンはひと工夫入れてくる感じがやっかいです」
自然なハイタッチで笑い合う、メイとツバメ。
一方連携罠に見事な返しを見せたメイたちに、アーリィたちは感嘆する。
「でも一気に敵やら罠やらが出てきたせいで、方向が分からなくなっちゃったわね」
レンがそういうと、バニーは大きくうなずいた。
「そうそうっ。そーいうことなのっ」
アーリィもそれに続く。
「ここは洞窟内で迷わせようとする狙いが強いみたいで、何かと手間がかかっちゃうんだ。でも落ち着いてランドマークになる部分まで戻れば――」
「現在位置は地図のこの場所です。向かう先はこっちなので、このまま進めば問題ありません」
「……どうして分かるの?」
「【地図の知識】というスキルのおかげです」
このスキルは『地図があれば』、今現在の位置と向きが即座に分かる。
ツバメがいれば、ダンジョン内で道に迷うということはなさそうだ。
「そんなスキルがあるのか……それなら道を何度も戻る必要はないな」
「革命的なスキルにゃん……」
動画で見た強さに加えて、ダンジョン攻略の能力。
これには灰猫も、いつもの不機嫌顔を忘れてポカンとしてしまう。
「すっごーい! そーなるとこの先は例のネズミだし、ここはメイたちにいいところを見せないとだねーっ」
バニーがそう言うと、続く道の先に見え出す赤光。
聞こえ出した鳴き声の数は、無数。
そして広い空洞の奥に、ひときわ大きな赤光が見えた後。
「「「ネズミ!?」」」
小型犬サイズのネズミたちが、一斉に押し寄せてきた。
「それじゃーいっきまーす! 【因幡ステップ】!」
バニーはスキルを発動して、飛び出していく。
あっという間にやってくるネズミの集団。
囲むようにして飛び掛かってくるネズミたちに、しかしバニーは笑みを見せた。
「そんなんじゃー、バニーちゃんには当たっらないよー!」
華麗な足の運びでかわして、両手の包丁を輝かせる。
「それそれそれー! 【三枚おろし】だーっ!」
攻撃する度に三本の斬撃を伴うそのスキルは、通常攻撃と速度が変わらない。
二刀流によって巻き起こす斬撃の嵐で、襲い掛かってくるネズミたちを次々に斬り飛ばしていく。
「【浄炎】」
さらにそこへ灰猫が白炎弾でフォローを入れ、戦線を維持。
「抜けてく個体は任せて」
隙間を抜けてくる個体は、アーリィが手にした剣でしっかり片付ける。
「ほらほらほーら! どーしたのーっ? そんなんじゃバニーちゃんには勝てないぞーっ!」
気持ちいほどの連撃と、輝く白い炎。
いよいよ気分が乗ってきたバニーが、あざといポーズを決めたその瞬間。
やって来る、新たなネズミの波。
「バニー! 右側から来てるよ!」
「ここは任せろ! 【爆歩】!」
背後からしっかり戦線を見守っていたアーリィの声かけに、動いたのは朔月夜琉。
砂を巻き上げるほどの大きな一歩で、バニーを狙うネズミたちの一団に特攻する。
「ゆくぞ! 【月穿ち】!」
抱えた大太刀を鞘から抜き放ち、放つ豪快な一撃は――。
「ぎゃーす!」
なんと鞘の部分がバニーの後頭部に直撃。
その勢いに、バニーが顔面から地面に突っ伏した。
「す、すまない!」
初撃を外した夜琉は、その長い太刀を振り下ろす形で攻撃するが、ギリギリ小型枠のネズミには上手に当たらない。
さらに剣の『返し』が遅いため、敵のタックルを普通に喰らう。
「あああああっ! 邪魔だネズミども! 【水面斬り】ーっ!」
ふらつく足で放つ大きな回転斬りは、壁にぶつかり弾かれる。
「うっひゃあ! こぉらーっ! そんなところで大振りしたら、バニーちゃんまで巻き込まれるでしょうがーっ!」
まさかの事態に、混乱し始めた夜琉。
その凛々しい目は、完全に涙目になってる。
「大丈夫だよ、落ち着いて夜琉」
そんな大太刀使いに、優しく声をかけたのはアーリィ。
「灰猫はバニーの立て直しを支援して! 【リトルウィング】!」
低空飛行で一気に距離を詰め、夜琉の周りにいるネズミたちを速い剣技で片付ける。
そして若干の余裕が生まれたところで、アーリィは範囲攻撃による敵減を狙うことにした。
「夜琉【大嵐祓い】をお願い!」
「あ、ああっ! 【大嵐祓い】!」
まだ慌てが残る夜琉に、できるだけシンプルに指示を出す。
壁から距離を取って放つ大きな振り払いは、暴風を起こしてネズミたちを吹き飛ばし、洞窟の奥へと押し返した。
この隙にバニーは、体勢を立て直す。
「今だよ! お願いバニー!」
「りょーかいっ! 目には目を歯には歯をってね! チャンスだよ! ヴォーパルバニーちゃん!」
現れる大量のウサギたち。
大型ではなく『小型で数が多い』タイプの召喚は、洞窟内でも『ひっかかる』ことがない。
まるで液体のように、洞窟の内部を集団で駆けていく。
その場で待つことにする八人。
離れた位置にいる魔物たちを、安全な位置から攻撃。
このパターンの攻撃は火力が低いパターンが多いのだが、ネズミたちは一気に駆逐され、最奥にいるはずのボスネズミも凄まじい速度でHPが減少していく。
聞こえてくるのは、魔物の悲鳴のみだ。
「い、今頃あの奥はどうなってるのかな……」
「こ、怖いですね……っ」
噛みつき兎たちの怒涛の攻勢に、メイはまもりと抱き合いながら尻尾を震わせる。
すると突然、洞窟内が静かになった。
どうやらボスネズミのHPが、食いつくされたようだ。
「すごいですね。洞窟内にウサギがなだれ込んでいく光景は圧巻です」
「クールタイムの回復も早いのね。大型の召喚でないことが活きてるわ」
結局ボスネズミは、姿を見せることすらなく打倒されてしまった。
「夜琉の攻撃が活きたね。バニーもお見事」
そんなアーリィの言葉に、安堵の息をつく夜琉とダブルピースで応えるバニー。
面倒見の良いアーリィを中心にした戦闘はやはり、ハマればかなりの強さを誇りそうだ。