軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

823.野生と暗闇のダンジョン

「いきましょう」

気合を入れるアーリィたちと一緒に、並んでダンジョンへ踏み込んでいく。

洞窟の中には灯りがなく、道は広い。

マッピングが必要なレベルのダンジョンは、それだけでかなりの難関といえるだろう。

「本当に真っ暗だね」

「暗闇の洞窟は、いつ来てもドキドキするわね」

「は、はひっ」

いつも以上にしっかり盾を構えるまもり。

聞こえてくるのは、水滴の落ちる音くらいだ。

灯りは片手が塞がっても支障の少ないプレイヤーが所持。

こちらはレンとまもり、元攻略組はアーリィと灰猫が担当だ。

メイは『何があっても状況をひっくり返せる切り札』ゆえに、両手を空ける形になっている。

「灯りは大事にしてね。一度消えたら方向が分からなくなっちゃったなんてことは何度もあったし、真っ暗だからこそ恐ろしい敵もいるの」

「暗闇で道も分からない。そんな中で敵の攻撃を受けるという状況は、まさに地獄だったな」

よほど前回のダンジョン攻略が大変だったのか、気合を入れ直す夜琉。

「そーれぃっ!」

「きゃあっ」

「だから暗いダンジョンではー、こーやってアーリィに触るのが癒しだったんだよねーっ」

「もう……! 今度はそうはいかないからね!」

「それならもう、レンかまもりに代わりになってもらうしかないかなーっ?」

「なんでよ!」

「わ、わたしですかあっ!?」

「にっひひひ」と笑ってにじり寄るバニーに、慌てて盾に隠れるまもり。

そんな中、メイの猫耳がピクリと動いた。

「右側の道から何かくるよ! この細かくて速い足音は四足歩行だね!」

「「了解!」」

すぐさまツバメとレンが、武器を構える。

「え、どういうこと?」

何の予兆もない状態で戦闘態勢に入ったメイたちに、困惑するアーリィたち。

すると数秒後、別れた二つの道の先から黒い野犬型の魔物たちが飛び出してきた。

「いきなり五匹って辺りにダンジョンの高レベルぶりが分かるわね! 【誘導弾】【フリーズストライク】!」

出てきた瞬間を狙って、上級魔法を叩き込む。

これによって三頭がまとめて倒れ、残ったのは二匹。

「【電光石火】【反転】!」

その時すでに、ツバメは駆け出していた。

斬り抜けで一匹を叩き、即座に反転。

「【加速】【アサシンピアス】!」

再加速からの刺突で、残りの野犬たちも打倒した。

「どうして、敵が出てくるって分かったの?」

突然出てきてプレイヤーを混乱させるはずだった敵を、あっさり撃破。

先読みのような動きに、思わずアーリィがたずねる。

「耳は良く聞こえるんですっ!」

そう言ってメイは、猫耳をピンと跳ねさせて応える。

「「「かわいい」」」

うっかり声がかぶるツバメ、まもり、アーリィ。

「……ん?」

すると今度は、噴き始めた風にレンとアーリィの持っていた松明の火が消えた。

続けざまに、まもりと灰猫の魔法珠灯が消える。

「きたー! こーれがやっかいなんだよー!」

バニーが言うのと同時に、聞こえ出すコウモリたちの鳴き声。

「あのコウモリは吸血でHPを回復する上にー、猛毒にまでしてくるからー!」

「大丈夫! 風と魔法アイテム無効を使われても、スキルを光源にできるから! 灰猫は持続時間の長いものを――」

急いで対応に入るアーリィ。

見えない複数の敵が、猛毒とHP回復を使ってくるという厳しい状態に、わずかな焦りが見える。

「敵は右からだね! 行ってきます!」

しかしメイは【夜目】で目標を確認して特攻。

「【フルスイング】!」

そのまま進んで跳躍し、剣の一撃で『ポイズンバット』たちを叩き落す。

すると孤立状態になっているメイに、残りの個体が一斉に襲い掛かってきた。

「【キャットパンチ】! パンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチ!」

メイはこれに拳打で対抗。

闇の中、聞こえてくる激しい打撃音。

「【浄化紋】」

灰猫がスキルを発動すると、地面に描かれた紋章から白い炎が噴き上がる。

それによって光を取り戻すと、そこに見えたのはメイの姿のみ。

そして付近には、粒子になって消えていくポイズンバットたちの姿。

「こんな状況下で、どうやって倒したんだ……?」

二十匹から三十匹はいたポイズンバットが全て倒されていて、首を傾げる夜琉。

「メイは【夜目】が利くの。だからこういう状況でも焦らなくて大丈夫よ」

「そんなスキルがあるのか……」

夜琉は驚きの声を上げる。

しかしメイの『感覚』は、この高難易度マップでさらに冴えわたる。

すぐに新手の登場を聞きつけたメイの視線の先に、コボルドたちの姿。

アーリィたちは、あらためて武器を取るが――。

「……レンちゃん」

「どうしたの?」

「なんか、金属っぽい匂いがしない?」

メイは鼻をスンスンさせる。

そして駆け寄ってくるコボルドたちに、灰猫が杖を向けた瞬間。

「待って!」

レンは大慌てで灰猫に飛び込んで、スキルの使用を強引に止める。

「炎は使っちゃダメ! 洞窟内にガスを滞留させて爆発させる罠があるみたい!」

「えっ!?」

前回は偶然やり過ごしていた罠に、驚くアーリィたち。

すぐさま松明だけを消し、炎のスキルさえ使わなければ大丈夫だと確認。

安堵の息をついた、その直後。

迫るコボルドの背後から現れたのは、大型の火蜥蜴サラマンダー。

「っ!!」

トカゲを見つける能力が星屑界最強のメイ、即座にその存在と攻撃方法を予測。

誰よりも早く、前に出た。

「【グリーンハンド】【豊樹の種】!」

洞窟内で使えばそれは、【密林の巫女】によって濃密な木々の壁を生む。

直後、サラマンダーの吐いた炎が引火し爆発。

付近一帯を、猛烈な豪炎が駆け抜けた。

「あ、あっぶなー!」

「すごい自爆技だったね」

「あんな魔物、知らなかったぞ……!」

しかし密度の濃い木々の壁に、炎の進攻はせき止められていた。

前回は偶然、向き合うことにならなかった敵と罠の連携。

それはアーリィたちにとって、驚愕の展開だった。

「助かったぞメイ、礼を言う」

「いえいえー」

その凛々しい目を驚きに見開く夜琉に、頭をかきながら喜ぶメイ。

木々の壁を抜けると、コボルドと自爆サラマンダーは消えた後だった。

もしもコボルド相手に戦いを始めてたら、サラマンダーの炎で惨事になっていただろう。

「……メイちゃん」

最悪の事態を想像したアーリィは、思わずメイの方を見る。

「なんでしょうっ!」

「もしかして……ここに住んでた?」

「住んでおりませんっ!」

メイの怒涛の攻略劇に、もうこのダンジョンに住んでないとつじつまが合わないと感じるアーリィなのだった。