軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

822.目指せエルラト禁域!

「それにしても、結構あっちこっち回ったわね」

「す、すみませんでした……」

そう言うまもりの手には、あえて直に抱えている食料あれこれ。

買ってもらったオモチャを、我慢できずに箱から出して持ち歩いているような状態のまもりに、メイたちは笑う。

エルラト禁域を目指す準備も、無事完了だ。

「攻略組と言っても、トップの中で遺跡関係が本筋と気づいた人たちが、関連クエストを探し始めたことで始まった感じみたいなの。今回私たちは偶然、その一端のクエストにたどり着いたことで同行することになったんだ」

「きっかけになったのは一冊の本だったのだが、内容を確かめようとしたら謎のアサシンに狙われ大変だった」

「アサシンに、狙われた……?」

夜琉の言葉に、フローリスの時のクエストを思い出すレンとツバメ。

謎のアサシンは、遺跡に関わる情報を狙っているのだろうか。

「エルラト禁域って、どんなところなの?」

メイが首と尻尾を傾げる。

「誰もその内実を知らない、謎の孤島だ」

「その名前は付近の村の住人から教えてもらえるんだけど、近くの島から行こうとしても海流がひどくて進めないし、空から行こうとしても島民が起こす暴風と攻撃で近づけないの」

「島民から攻撃されるのですか?」

「エルラトへの侵入は、一時期ちょっとした企画みたいになってたよねー。かなりの距離まで近づいた人もいたけど、めっちゃくちゃ強い部族の投擲で倒されちゃって、すーぐ死に戻っちゃったの」

「なぜ攻撃されるのかは分からないが、とにかく容赦がないことは確かだ。人がいるのは時々見え、木々の隙間から建物らしきものも見えているのに上陸できない。そういう場所だ」

「私たちは『本』を読んだことでエルラト禁域に行くのに必要な手順を知ったの。それで攻略組と行動を一緒にすることになった感じかな」

「それは気になっちゃうね!」

「孤島シリーズは色々あるのよね。島中に生えた麻痺草の威力が強すぎて攻略を諦められた島。虫サイズの魔物の群れが【体当たり】1発7割ダメージみたいな攻撃を仕掛けてくる島。身体が乗っ取られる現象のせいで進めない亡霊島……だからこそ、そこに何があるのか気にかかる」

「どれもワクワクしますね」

「メ、メイさんが敵になっちゃったら、その時点で終了です……っ」

RPGでは稀に見る、謎の島の話で盛り上がるレン。

まもりも孤島シリーズの恐ろしさに、息を飲む。

そんな8人が向かったのは、砂浜だった。

「「海だーっ!」」

両手を上げて「わー!」と走っていって、ちゃんと波に足を取られて転ぶメイとバニー。

水しぶきをあげる二人の姿に、皆笑う。

「あれがエルラト禁域だ」

そんな中、夜琉が木々に包まれた孤島を指さした。

それからその指を、浜辺にある大岩へ。

「あの岩。そこから南に進むこと300メートルほどのところにある紋様の掘られた石碑。これが少し唐突なんだ」

夜琉に導かれるようにして、大岩から真っ直ぐ森の中へ。

進んだ先にあったのは、胸元くらいの高さの石碑。

紋様入りのサイコロを、四つ縦に重ねたような形状をしている。

「こういうのがポツンとあるのは、確かに気になるわね」

「この時間の陽光の位置、そして【腕力】が一定以上でないと回らないこのサイコロ部分を、指定の面を選んで大岩に向けて回すと――」

太陽の光が、石碑の紋様に沿った輝きを生む。

やがて石碑から放たれた光線が、真っすぐ大岩の方へに向かって伸び出した。

「行ってみましょう」

「ワクワクするーっ!」

「本当ですね!」

「はひっ」

走り出す四人。

海沿いに戻ってみると、大岩の表面に光の紋様が描かれていた。

「これに触れると、中に入れるの」

アーリィが手を触れると、紋様の光が一段と強く輝く。

大岩の紋様が一斉に動き出し、別の紋様に変わる。

正面に現れた新たな紋様の一部はそのまま穴となり、洞穴の入り口になった。

「すごーい……!」

この演出には、思わず目を輝かせるメイ。

これぞRPGという仕掛けに、尻尾もブンブン。

動く尻尾を追ってバニーも顔をブンブン。

「ここを抜ければ、向こうのエルラト禁域にたどり着きます」

「でもトップ級のプレイヤー22人が、地図も何もなく挑んだとはいえ……洞窟を抜けるのにひと月近くかかったんでしょう?」

「うん。マッピングが必要なタイプのダンジョンだったから」

「なるほど、複雑な上に距離も長いのね」

「もちろん皆で集まって一緒に進める時間が限られていたというもあるが、単純に難易度が高かったな」

「…………」

夜琉の言葉に、バニーの目が虚ろになっている。

正確には、全員が表情を硬くしている。

それだけの難易度を誇る洞窟なのだろう。

「そのうえ照明なしのダンジョンとくれば、その時点でなかなかね大変よね」

「さっそく、行ってみましょう!」

広がる暗闇にドキドキしながら、ダンジョンに踏み込んでいくメイ。

「待ってメイちゃん。今回は松明と魔法珠ランプを持ってきてるから、各パーティから二人ずつ四人で分担して持ちましょう」

「おっとと! りょうかいですっ!」

照明なしで真っ暗闇の洞窟に踏み込もうとするメイに、アーリィはそう言って笑う。

なぜか形式の違う照明を四人で持つ形をとったメイたちは、あらためて洞窟へ。

『見えているけど入れない』孤島、エルラト禁域。

近づくだけで高火力の攻撃を受け死に戻りをくらう謎の島への、侵入を目指すのだった。