軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

785.北極圏に到着です!

「すごーい……!」

「ほ、本当ですね」

帝国の調査船に潜り込み、北極遠征にやって来たメイは思わず声を上げた。

これにはまもりも、焼き芋をもぐもぐしながら感嘆する。

「『星屑』でも雪のマップは色々あるけど、この光景は初めてね」

「壮観です」

朝を迎え、陽が登ってくると世界は一変した。

見えるのは白氷の世界。

真っ白な氷山がどこまでも続き、そこには新たに降り積もった雪がいくつも丘を作っている。

その姿はどこか、雪で作った砂漠のようにも見える。

そして白みがかった空に深い青みを見せる海、それ以外に何もない。

「息が白くなるのは、やはり雰囲気ありますね」

そんな演出にメイも「はーっ」と息を吐き出してみる。

すると見事に、白い煙が上がった。

わずかにひんやり感じるのも、北部地帯ならではの演出だ。

「下船準備!」

メイたちが見たことのない世界に見惚れていると、そんな声がかかった。

どうやら、この広大な氷山の傾斜がない部分に上陸するようだ。

船を氷山の端に寄せると、先行した身軽な兵士がつり橋のようなものをあっという間に掛けていく。

橋の完成と共に兵士たちが次々に船を降り、隊列を作る。

メイたちも、その最後尾に並ぶことにした。

すると遅れて四人の黒仮面と、上級兵たちが降りてきた。

「貴様たち下級兵の仕事は、探索だ」

上級兵たちが指示を出す。

「何か見つけたら速やかに、狼煙で報告すること」

「「「ハッ!」」」

「魔物もいるが、探索中に海へ落下しても回収は行わない。死にたくなければ魔物にも注意して行動しろ! 散開!」

「「「ハッ!」」」

集められた下級兵たちは、寒さに震えながらこの広い北極圏の探索に散らばっていく。

「なるほど、危険な仕事に向かわせて使い捨てってこういうことね」

「ひどいよー」

メイたちも【狼煙】を受け取り、兵士たちの後に続く。

「……なんだ?」

「いえいえいえいえっ! なんでもありませんっ!」

うっかり黒仮面を見つめてしまい、思わぬ問いかけを受けたメイはブンブン首を振る。

四人はそのまま、逃げるように探索へ。

雪の砂漠の中に、散らばっていく兵士たち。

メイたちは氷山の端側から迂回するように進んでいく。

氷山同士の間にはいくつもの流氷が浮かんでいて、跳び移って隣の氷山に移動することもできるようだ。

「…………」

「どうしたの、まもり」

「い、いえ、ジャンプした時に軸足が滑って、ちょうど隙間に落ちそうだなと思って……」

「確かにここ、滑りますね」

「そういうことならお任せくださいっ」

「っ!」

メイはまもりを抱きかかえて、走り出す。

「【バンビステップ】!」

そこそこ滑る足元も、しっかり調整。

流氷の上を見事な連続跳躍で、ポンポンと渡る。

「すすすいませんっ。それでなくても重いのに、鎧まで着てしまっていて」

「いえいえっ! 全然大丈夫ですっ!」

見通しがいい上に【遠視】あり。

メイはまもりを抱えたまま、だだっ広い北極マップの様子を観察。

新たな氷山の上に立つと――。

「「…………」」

その陰にいた巨大な生き物の姿に、二人思わず目を奪われる。

「シロクマだーっ!」

巨大なシロクマに、思わずテンションが上がる。

しかしシロクマは完全な魔獣。

後ろ足で立ち上がると、その高さはなんと家一軒を超えるレベル。

唸り声をあげる姿は、この付近のボス格であることを確信させる迫力だ。

「こういう時、敵が出るとこっちで正解感あるわね!」

【浮遊】で付いてきたレンとツバメが、メイたちの背後に付く。

「きます!」

シロクマは倒れ込むようにして右腕を叩きつけにくる。

これを四人、後方へ下がることで回避する。

「足元が滑るの、ちょっと気になるわね!」

「いきます【電光石火】!」

ツバメは【村雨】に持ち替え斬り抜けを放つ。

見事な一撃はしっかり決まるが、シロクマはこれを防御。

「と、止まりません……っ!」

斬り抜けの勢いのまま氷上を滑っていくツバメに、レンはうっかり笑ってしまう。

するとシロクマは遠ざかっていくツバメを放置し、低い姿勢から右腕を振り上げる。

【氷雪斬】は、硬質な爪の振り上げで足元の氷を切り裂き飛ばす飛び道具。

「「「っ」」」

その速さと広い攻撃範囲にメイは回避、レンとまもりは防御でやり過ごす。

氷つぶての威力は高く、バチバチと大きな音を鳴らす。

この隙を使い、シロクマは攻勢を続ける。

レンに向け、飛び掛かりから放つのは剛腕の振り降ろし。

「【かばう】! 【地壁の盾】!」

見事に防御を決めるが、まもりは斜め軌道からの振り降ろしに、クルクル回転しながら氷上を滑っていく。

「【バンビステップ】!」

ここでメイが、滑りに気を使いつつ接近。

するとシロクマは、その手を高く振り上げた。

【叩きつけ】は、目前に拳を振り下ろす強烈な一撃。

「うわわわわ!」

これをメイ、急ブレーキでどうにかギリギリで止まる。

しかし直後、割れた足元の氷塊が跳ね上がった。

「【アクロバット】からの【アクロバット】!」

高速移動以外のスキルに滑りはなく、効果も変わらない。

メイは二度のバク転で、どうにか氷塊の突き上げを回避。

だがシロクマの攻撃はこれで終わらない。

【流氷投擲】の発動。

突き上がった大きな氷塊の一つを抱え、なんとそのまま投擲を繰り出してきた。

「メイっ!」

その迫力に思わず声を上げるレン。

「【ゴリラアーム】!」

喰らえば高ダメージに加えて、弾き飛ばされ転倒。

そんな攻撃に、メイは真正面から相対。

なんと投じられた氷塊を、受け止めた。

もちろんこのままでは終わらない。

「せーのっ! それええええええ――――っ!!」

氷塊の投げ返し。

まさかの展開に、シロクマは回避が遅れ直撃。

体勢を崩した。

「【フレアストライク】!」

すかさずレンが追撃し、シロクマを大きく弾き飛ばす。

この状況に三人は、シロクマとの距離を詰めにかかる。

しかし滑りの効果もあり、足取りは慎重。

ここでシロクマは、先んじてスキルを発動する。

「「「ッ!!」」」

咆哮をあげると、足元に一斉に【ひび割れ】が起き、冷水が噴き上がる。

猛烈な飛沫は、浴びた部分を局所的な『氷結』に追い込み動きを制限する。

メイたちの動きを止めたシロクマは、走り出す。

そのまま勢いに乗り跳躍。

放つ【ホワイト・ベアクロー】は、跳躍から全体重を乗せた一撃を叩き込む、シロクマの必殺技だ。

その狙いはまもり。

「あわわわわっ! 【不動】【地壁の盾】っ!」

威力の高さゆえ、地面に走る盛大なひび割れ。

その迫力と飛び散る火花に大慌てになりながらも、まもりは真正面からこれを受け止めた。そして。

「――――今よ」

レンのそんなつぶやきに応えるように、反撃に入る。

「【解放】【フレアバースト】!」

【マジックイーター】によってためていた、魔法による反撃。

爆炎が北極の空を真紅に染め、シロクマを大きく吹き飛ばした。

「こんなの、一度見せられたらプレイヤーは怖くて近づけませんね」

ようやく戻ってきたツバメが感嘆する。

「恐ろしいカウンターだわ」

「カッコいいーっ!」

「あ、ああありがとうございますっ!」

見事な反撃に、思わず盛り上がる四人。

「最後はメイ、お願い!」

「りょうかいですっ!」

転倒状態のシロクマ。

レンの言葉の意味を即座に理解したメイは、右手を突き上げる。

「それでは――――よろしくお願いいたします!」

切り立った氷山の壁面に、生まれた大きな魔法陣。

そこから出てきたのは、スケート靴をはいた巨大クマ。

クルクルと氷上でステップをした後、身体を大きく反って柔軟性を披露。

そして独特の『今から跳びますよ』の姿勢の後、高いジャンプへ。

そのまま三回転半の『アクセル』を決めた後、【グレート・ベアクロー】を叩き込む。

すると遅れて出てきた子グマが、『10点』の札を掲げた。

「お見事でしたっ!」

クマがクマに必殺技を叩き込み、クマがそれを採点。

今度はスピードスケートスタイルで魔法陣に帰っていく親子グマを、拍手で見送るメイたち。

後は、最後の詰めを叩き込むだけだ。

「待って!」

しかし残りHPを見て、メイは一応攻撃を中止。

するとシロクマは降参とばかりに、その場に突っ伏した。

このシロクマ、実は『従魔枠』

従魔士であれば、倒さず力量を見せた時点で仲間にすることもできるタイプの魔物だ。

そうなれば。

「もしかしてこの子も、【友達バングル】で出てくるのかしら」

メイはシロクマの前足にポンポン触れる。

「白黒ベアの競演、想像するだけで可愛いですね」

「白黒ベアは……パンダになっちゃうんじゃない?」

そしてそんなツバメとレンの掛け合いに、メイとまもりが笑うのだった。