軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

784.サイドミッションです!

前夜祭のクエストを、見事に全て達成したメイたち。

建国祭の二日前にこの催事が行われたのは、これから向かうミッションとの兼ね合いもあるのだろう。

「あたしについて来てくれれば、問題ないはずだよ」

そう言って先頭を進む怪盗。

上級兵の制服を着こんだ怪盗は、本城から西側へ続く通路を進む。

現れる兵士たちはこちらに視線を向けてくるが、上級兵が先行しているためか気に留めない。

「下級兵の制服を着た面子だけで来ると、すぐに捕まっちゃうんでしょうね」

「イチかバチかバレたとこで全力ダッシュ、最後は力でぶつかるという、ステルスゲーム『最後の悪あがき』タイムの始まりですね」

王城西部に作られた建物は、帝国軍の施設になっている。

さっきまでいた王城の華やかさに比べて、一気に城外の質実剛健とした雰囲気が戻ってくる。

兵士の数を見るに、やはり強硬で駆け込んで何かができるような感じではない。

「ここで【認証珠】が必要になるんだ」

そう言って、見るからに重厚な鋼鉄製のドアに【認証珠】を近づける。

すると紋様に光が走り、ドアが開いた。

「わあ……」

建物内を進み、たどり着いた港湾区画に驚きの声を上げた。

普段見慣れた港町のものとは違い、しっかりとブロックで固められた船着場には灰色の大型帆船が一隻、篝火に照らされている。

着々と積み荷が運ばれていく飾り気のない船の威容に、思わず目を奪われる。

どうやらここは、レジスタンスにもらったマップにも書き込みがない、特別な区画のようだ。

「あの船で北極圏に向かうみたいだね。この調査には下級兵も結構な人数を乗せて向かうらしいから、紛れ込むのは簡単だよ」

「あっ、あそこにいるの黒仮面の人だよ……っ」

メイが目ざとく気づく。

そこには確かに、船に乗り込んでいく黒仮面たちの姿があった。

フローリスの時に逃げ去った者かは分からないが、黒仮面たちは船の内部に消えていく。

「キミたちは帝国が裏でしていることにも興味があるって言ってたね。それなら地下にある軍務室に行こうか。まだ出航には時間があるし、情報収集もしておくといい」

周りは上級兵ばかり。

言葉もほとんどないため、緊張感が漂っている。

そんな中を、怪盗に連れられ進む。

たどり着いた先は、研究棟にある部屋の一つ。

「これくらいの錠なら、この針金一つで――――」

見事な技で開けた部屋には窓もなく、真っ暗。

怪盗は、近くのランプに火を灯す。

「また、本だわ」

そこにあったのは机と本棚。

そして本棚に積まれているのは、古い本の数々。

見る限り、研究者が使っていた個室のようだ。

「いくつか、抜き取られた状態になっていますね」

書棚には本がたくさん収まっているが、そこから数冊持ち出されているようだ。

レンは本棚に一冊だけ差し込まれたノートに気づき、取り出し読んでみる。

「どうやら帝国は、『古代兵器』を探して手に入れようとしているみたいね。そしてそれは遺跡と同じ時代に作られたものってことみたい」

「フローリスの時の動きは完全にそうでしたね。それが何か遺跡に関わってくるのでしょうか」

「と、ということは今回の遠征も、『兵器』を探しに行くんでしょうか」

「帝国の栄華のためだけではない。一日も早く『兵器』を集め、強靭な国家を作る必要があるって書かれているわね」

「栄華のためだけではない……? 他にも理由があるということですか?」

そう言ってツバメも、デスクの上に積まれた本を一冊手に取った。

中身は白紙だったが、二枚の紙片がふわりと落ちる。

ツバメはひろって、書かれた文字を読みあげてみる。

「――――赤月の夜迫る。そなえよ終焉に」

「怖っ。もう一枚にはなんて書かれてるの?」

「ゼティアはすでに――――」

「すでに何? 死んでいる……とか?」

「いえ、ここまでしか書かれていません」

書かれた文字の急いで書かれた感と、ぶつ切り具合。

それが赤いインクだということにゾワゾワする。

「これはドキドキしちゃうね……っ」

「ほ、本当です」

まもりも盾をつかみ、こくこくとなずく。

「どうだった?」

「「「「ッ!?」」」」

そして遅れて声をかけてきた怪盗に、四人並んでビクリと身体を震わせた。

「お、お、驚かさないでよ」

大図書館からの戻り際、謎のアサシンから襲撃を受けていたレンとツバメは、思わず互いに抱き合うほど本気で驚く。

「あの時のアサシンがここまで迫って来たら、いよいよホラー感出てくるわね」

「でもいくつか本が抜けていると考えると、あり得ない話ではないですね」

「帝国の裏で動いている者たちの考えが、見えてきたんじゃないかな」

怪盗はそう言って、息をつく。

「あたしも偶然、遺跡で帝国兵と出くわしたんだよ。それ以来彼らの怪しい動きを追ってきたんだ……って、時間みたいだね」

聞こえてきたのは、鐘の音。

これは北極圏遠征の船が、出航する合図のようだ。

「さて……北極なんてところに何があるのかな」

「普通に考えれば古代兵器の一つなんでしょうけど、どうして北極なんて場所にあるのかしら」

「ドキドキしちゃうねぇ」

「はひっ」

闇に踏み込んでいく感覚に、尻尾をブルブルさせるメイ。

まもりと思わず身を寄せ合いながら、部屋を出る。

四人が怪盗と共に湾部へ戻ると、帝国兵たちが続々と濃い灰色の船に乗り込んでいくのが見えた。

そこには雑に押し込まれる、下級兵たちの姿もある。

「朝が来る前に出航するのは、やっぱり見られたくない行動をしているってことなんでしょうね」

怪盗に続く形で、調査船へと乗り込むメイたち。

すると程なくして、兵士たちを詰め込んだ船が出航する。

ラフテリアのような青空の下の航海ではなく、暗い夜の出発。

どこか寒々しさを感じる世界北部の海を、四人は怪盗と共に進んでいくのだった。