作品タイトル不明
783.新たな提案
「まもりちゃんは、たくさん食べ物を持ってるんだね!」
「お、お恥ずかしい限りです……」
「結構色んな種類があるのねぇ」
「地方や街によって商品に違いがあるというのは、面白いですね」
メイがいーちゃんにもクッキーを渡すと、それを割ってもぐもぐ。
その姿に癒される。
「まもりちゃんは、普段もお菓子をよく食べたりするのー?」
「はひっ! 最近は期間限定ものが多いので、いつも何かしらを買ってしまいます! 秋のさつまいも、栗、そして冬の苺につながってく感じは最高ですねっ!」
「分かりますっ!」
「でも最近は、量がどんどん減ってしまっているので少し物足りないです……」
「うんうん、そうだねぇ……」
「食べ物を両手で抱えるまもりには、確かに死活問題ね」
「「「「あははははは」」」」
そうやって笑い合った後、ツバメは静かに立ち上がる。
「それでは、業務に戻ります」
再び囚人のような白目に戻り、3度目の【スティール】作業を再開。
「何がどうなっているのでしょうか……」
ツバメの『スティール待ち』という状況に、困惑するまもり。
「まあ、怪盗が出てきちゃったら【スティール】からは逃げられないわよね……」
「わたしたちは、追われているんだね……っ」
「…………?」
野生、中二病、そしてスティール。
二人の切なげな視線に、まもりはいよいよ首を傾げる。
「【スティール】【スティール】【スティール】【スティール】【スティール】」
「怪盗もセリフのストックがなくなったのか、真面目な顔で金庫を見るだけの置物になってるわ」
「【スティール】【スティール】【スティール】【スティール】【スティール】」
「ほ、他の人が変わったらダメなんですか?」
「【スティール】【スティール】【スティール】【スティール】【スティール】」
「これはツバメちゃんと世界の戦いなんだって!」
「世界……?」
急な設定に、首を傾げるまもり。
「【スティール】! 来ました!」
すると久しぶりにツバメが【スティール】に成功した。
「ツバメ?」
「今私は目を閉じています! よって手にあるものが【認証珠】なのかどうかわかりません! ですがこれを私が観測した時点で、ハズレになる可能性があります!」
まず盗めるか、次にそれが狙いものか。
二度の抽選という地獄に、おかしくなりだしたツバメ。
いよいよ『シュレディンガーの猫』っぽいことを言い出す。
「確認……おねがいします!」
「その理論だったら、まもりが見てみる? 結構1/5のクリティカル出してるし」
「よ、よいのでしょうか……」
思わぬ重責に、ゴクリとのどを鳴らすまもり。
「お願いします」
静かな決意の声に、まもりは右手のフレンチクルーラーを口に押し込んで歩き出す。
目を閉じたまま、審判を待つツバメの前に回り込む。
「い、いかがですか?」
「……に、【認証珠】です! これ【認証珠】ですよ……っ!」
「や、やりました! 今回はそこそこ早かったのではないでしょうか! 進みましょう、第二王子さんの部屋へ!」
思わず歓喜の声を上げるツバメ。
「やったー!」
メイもすぐに駆けつけ飛びつく。
「さすがだね。これで帝国の闇に触れられそうだよ」
すると「フッ」と笑いながら、怪盗もやって来た。
「……本当に、そう思っていただけているのでしょうか」
「ま、まあ一応、必要なアイテムはそろったわけだから……」
そんな怪盗とツバメのやりとりに、レンは笑ってしまうのだった。
◆
「第二王子さん、こちらが鍵になります」
「……ありがとう。建国祭はもう間近だ、当日はよろしく頼む」
以前豪商ドレークの後をつけてやって来た、監禁部屋。
銀髪の凛々しい第二王子に鍵を渡し、ひとまずこれで任務完了。
「これで、前夜祭の内にやるべきクエストは全て成功ね」
「やったー!」
「や、やりました」
拳を上げて喜ぶメイに、まもりも小さく拳を上げてみる。
「なるほどね、キミたちの狙いはこの国の住人を守ることなんだね」
怪盗は興味深そうにうなずいた。
「あたしはこれから調べものに向かうつもりなんだけど……キミたちはどうする?」
「そもそも貴方は、何を調べているの?」
「実は妖しい黒づくめの集団が、各地で不穏な動きをしていてね。その出所が帝国だと分かったんだよ」
「……フローリスの、あいつらね」
まもりも、静かにうなずく。
「そして帝国は明日にでも、外洋へ調査船を送るらしいんだ。そこに潜り込めればと思ってるよ」
『兵器』と呼ばれていた謎の物体の発見から、クエストが始まったフローリス。
外洋調査、気にならないわけがない。
「前夜祭と建国祭の間に、今回のクエストとは別の『フラグ』を回収するシナリオ。そんなところかしら」
「ドキドキしますね」
「うんっ」
「は、はひっ」
未発見の帝国クエスト。
その中でもさらに特別なシナリオ展開は、まるで秘匿されているかのようだ。
世界の深淵をのぞくかもしれない。
そんな感覚に、思わずメイの尻尾が奮える。
「まずはキミたちが手に入れてくれた【認証珠】を使って、研究の一端でものぞければ……って感じかな」
「それは建国祭までに戻って来られるのよね?」
「もちろんだよ」
怪盗の答えに、四人は自然とうなずき合う。
「参加しますっ!」
メイが元気に応えると、怪盗は静かにうなずく。
「がいようちょうさって、どこに向かうのかな」
「どこかしらね」
「それじゃ行こっか。目指すは城の西部に当たる兵務区画だよ。今回帝国の外洋調査は……北極圏を目指すものらしい」
「え、ええええええ――っ!?」
調査船の目的地は、なんと北極圏。
怪盗の意外な言葉に、驚くメイ。
しかしその尻尾は、期待にブンブンと震えていた。