軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

614.黄龍の力

前哨戦の終わり。

掲示板民が道を作っていたことで、レンとツバメは最高のタイミングでメイのもとにたどりついた。

「褒めてつかわそう、冒険者たちよ。余にここまで付いてきた者は初めてだ」

武闘での戦いを完勝したメイに、ジュンシーは笑う。

「しかし余は黄龍の加護を得た。お前たちの冒険は、ここで終わりだ」

その笑みは完全に、邪悪な王そのもの。

真紅のローブを払ったジュンシーは、ゆっくりと動き出す。

「鳳をかけた戦いの始まりね」

「天子さんのこともあります、負けられません」

「大丈夫! 三人一緒だからねっ!」

メイたちは各自、武器を構える。

「さあ……新たな王の御前にひざまずけ!」

軽い踏み出しは、地面に衝撃を走らせる。

「っ!」

一瞬で踏み込んで来たジュンシーは、引いた拳を突き出した。

「【龍鳴拳】」

龍の鳴き声と共に放つ拳が、黄金の気を炸裂させる。

先頭にいたメイはこれを、左ヒザを地に突く形で姿勢を落として回避。

速い拳の一撃が、気の爆発を起こす。

やっかいな一撃だが、予想通り低位置に判定なし。

姿勢を低くしたまま踏み込み、メイは手にした剣を振り上げる。

これを跳び下がることでかわしたジュンシーは、左掌を突き出した。

「【砲龍】」

「【アクロバット】!」

迫るのは、牙をむいた龍を象った気功波。

「うわっと!」

メイはこれを側転で回避。

地を駆ける龍の気は、そのまま後衛にまで届くほど。

炸裂と共に吹き荒れる風に、レンは思わず足をフラつかせる。

モーションの隙を暴風で補うスキルの後、ジュンシーはそのまま掌を返してクイっと持ち上げた。

「【大地突衝】」

すると地面が隆起して、地面から切り立った岩が突き上がる。

「【アクロバット】!」

足元から生まれた鋭い岩柱を、メイは華麗なバク宙で回避する。

「さっきまでとは、威力が全然違うよっ!」

二人は再び向かい合う。

メイの振るう剣を避け、かわし、拳で反撃するジュンシー。

放たれた連打を足の運びで回避し、続く掌底を目にした瞬間。

「【裸足の女神】っ!」

「【砲龍】」

敏捷向上中のメイはあえて直進し、そのまますれ違って転身。

振り返ったメイに対し、ジュンシーは高く上げた足をドン! と突き下ろした。

「【地龍崩脚】」

大きく広がるヒビに、メイとツバメは即座に反応。

「【跳躍】!」

「【ラビットジャンプ】!」

一瞬遅れてヒビが上下に隆降、踏みつけた足が地割れを起こす。

巻き込まれればダメージに加えてダウンまで取られるその一撃を、二人で回避。すると。

「【削岩回転脚】」

大きな回転蹴りに合わせて、外側に向けて巻き起こる衝撃波。

地面から突きあがっていくクレーターのような岩壁にまで、攻撃判定が付くその一撃。

「くっ!」

「わあっ!」

意外な範囲の広さと、飛ばした敵を蹴りで落とすという戦法に虚を突かれたツバメは、2割弱ほどのダメージ。

メイも弾かれ落下、5%のダメージとなった。

「高速【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」

しかし追撃は許さない。

レンは後方を【低空高速飛行】で横移動しながら、放つ魔法でけん制する。

追撃を止められたジュンシーは、その標的をレンに変更。

「【飛龍】」

その一歩は縦の跳躍にも、速い横の跳躍にも使える万能移動スキル。

高速の踏み込みから、強烈な気をまとう拳を突き出した。

「【龍鳴拳】」

「っ!」

メイが先に『見せていた』ことで、レンは横っ飛びで転がりこれを回避。

しかしそのスキルは、二段階目あり。

ジュンシーが突き出していた拳に力を込めると、黄金の気が集まっていく――。

「【爆龍】」

「レンちゃんっ! 【裸足の女神】ーっ!」

残る【蓄食】の効果で、その駆け出し速度は圧倒的。

超高速で地を駆けたメイはそのまま飛び込みレンを抱え、ゴロゴロと回転。

直後、黄金の爆発が盛大に巻き起こった。

「メイ! ありがとう!」

「いえいえーっ、こちらこそっ!」

互いを助け合ったメイとレンは、思わず安堵の息をつく。

「……いいぞ、黄龍の加護。次元が違う……っ!」

一方ジュンシーは、その拳を握って笑う。

速い上に強靭。

気の力に黄龍が司る『大地の力』を得た結果、その戦力はすさまじいものになっている。

「メイ、もしかして【蓄食】を【敏捷】に使ってる?」

「うんっ」

「それなら私が魔法で先手を打つから、そこにツバメとメイが駆け込む形でいきましょうか」

「はい」

「りょうかいですっ!」

前衛二人が力強くうなずき合い、杖を構えるレン。

「さあいくわよ! 【誘導弾】【フレアストライク】!」

放つ炎砲弾を、ジュンシーは大きなサイドステップで回避する。

「【バンビステップ】」

「【疾風迅雷】」

それを見て、メイとツバメが走り出す。

「【加速】【加速】【加速】!」

先行したツバメは、ジュンシーを誘い出すように『く』の字型の高速移動で翻弄。

「【砲龍】」

「【リブースト】!」

スキルを振らせたところで超加速し、隙を作り出す。

「【裸足の女神】!」

「【電光石火】!」

メイは右手の剣でジュンシーの左半身を狙い、ツバメは左手に持ったダガーで、ジュンシーの右半身を斬りに行く。

二人の走行軌道がクロスする形の連携は、回避を許さない。

「くっ! 【黄龍鱗】!」

しかし二人の連携がジュンシーを斬る直前に、全身から発せられた黄金の気。

二人の手に残ったのは、岩を叩いたかのような固い感触。

「【投擲】!」

振り返りと同時に投げた【ブレード】が刺さる。

「【ソードバッシュ】!」

そこに続く衝撃波がジュンシーを消し飛ばす。

「効かんなぁ!」

しかし『防御力を大きく上げる』そのスキルは、効果時間も長くなかなかHPを削れない。

「そういうことでしたら、メイさん!」

「うんっ! 【裸足の女神】!」

超高速で一気に距離を詰めたメイは、そのまま剣を振り上げる。

「【フルスイング】!」

まるで「どうぞ」とばかりに両手を開き、【フルスイング】を受けてみせるジュンシー。

大きく弾きはしたものの、ダメージは僅少だ。

ここは攻撃せず、【黄龍鱗】の効果が切れるまで『耐える』のが王道という状況。しかし。

「【加速】【加速】【リブースト】!」

余裕を見せつけるジュンシーのもとへ、ツバメは一直線に迫る。

「【六連剣舞】!」

「な、にっ……!?」

ツバメが手にした【デッドライン】には、【黄龍鱗】の硬さは関係ない。

防御スキルを貫き、六発全てを叩き込む。

これには思わずバランスを崩すジュンシー。

「――――まだです」

前衛二人が、道を開ける。

すると後方から【魔剣の御柄】を手にしたレンが、【低空高速飛行】で一直線に飛び込んで来た。

「はあっ!」

振り下ろした魔力の剣で斬り裂き、そのまま刃をジュンシーに向ける。

「解放ーっ!」

最後は【フリーズブラスト】を開放。

防御力向上スキルで余裕を見せつけたジュンシーを、氷嵐で吹き飛ばした。

「賊ども……っ!」

ダメージは少なく2割弱ほど。

しかし本来【黄龍鱗】は、『敵の無双時間を耐え抜け』という意図のスキル。

それを超えてきたメイたちに、ジュンシーはいら立ちを見せた。

体勢を立て直すのと同時に、右手を大きく引く。

途端に集まり出す、強烈な気。

黄金の気が収束するのと同時に、掌を突き出す。

「消え去るがいい! 【破山黄龍撃】!」

「「「ッ!!」」」

放たれた黄金の巨龍が、地面を砕きながら高速で突進してくる。

龍が進むたびに、えぐり出された地面がハーフパイプのような形状の岩壁が生み出す演出は、その威力の高さを物語る。

攻撃範囲は広く高い。

全力で逃げるか、防御するかを選ぶしかない状況だ。

「【加速】「リブースト】!」

「【低空高速飛行】!」

ツバメとレンは即座に退避。

「……いけるかも」

しかしメイはそう言って、右手を高く突きあげる。

「それでは――――よろしくお願い申し上げますっ!」

目前に現れたのは魔法陣。

波飛沫と共に現れた、巨大なクジラが宙を舞う。

なんとメイは、地を喰らう龍に真っ向から宙を行くクジラで反撃。

巨竜と巨大クジラは天と地ですれ違い、互いのターゲットを狙い駆ける。

「メイ!?」

「メイさんっ!?」

地を這う巨龍は目前。

まさかのクロスカウンターを放っていたメイに、ツバメとレンが驚きふためく。

そして硬直が解けた瞬間、振り返ったはメイは――。

「【裸足の女神】! よーい、どんっ!」

巨龍に追われる形で走り出した。

「「ッ!?」」

早い段階で横に逃げる以外に、回避法などない。

そもそもそう設計されている範囲攻撃スキルだが、なんと速度はメイの方が上。

砂煙を上げて駆けるメイは、そのまま巨龍が消えるまで逃げ切ってみせた。

一方ジュンシーは、硬直が解けた瞬間直上に巨大クジラ。

この状況での回避など、絶対不可能と判断して防御に徹する。

「くっ……!」

しかし体当たりから続く波の一撃に体勢を崩し、そのまま転倒した。

「……本当に、まだまだメイには驚かされるのね」

「正々堂々追いかけっこで逃げ切ってみせるとは、想像もしませんでした」

これには唖然とするしかないレンとツバメ。

一方4割強ほどHPを失ったジュンシーは、静かに目を細める。

「……なかなかやる。だが、王の本気はここからだ」

静かにそう言って、鋭く目を細めた。