軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

613.メイとジュンシー

「……【気功拳】」

拳に気をまとわせ、通常の攻撃威力を上げる戦い方。

四神の加護を得ずとも、大量の気があふれ出す。

それはジュンシー・ラウの才能を見せつけるかのような演出だ。

「いきますよ」

そう余裕で宣言したジュンシーは、軽く地を蹴った。

「っ!」

その速度はかなりのもの。

気によって地を蹴ることで、速度を上げるという移動法を使用しているようだ。

放つ右拳、空間のブレもその強烈な気によって生まれている。

一撃一撃がスキルによる攻撃並みの威力を持ち、それでいて通常攻撃のため速い。

徒手型の理想形と言える戦い方だ。

「よっ! はっ! それっ!」

「ハッ!」

「よいしょっ!」

連打の最後に放たれた掌底に『気』を放つスキルエフェクトがなかったため、メイはこれをしゃがんで回避。

「【キャットパンチ】!」

曲げたヒザを伸ばす形で放つ反撃は、見事にジュンシーのあごを捉えた。

カウンターヒットだが敵はボス、ダメージは僅少だ。

しかしメイに『この速さなら正面から行ける』と判断させるのには十分だった。

「【閃気拳】!」

「【アクロバット】!」

続く拳打から放つ『気』の炸裂を、バク転で回避する。

するとジュンシーはその手を伸ばし、掌底をメイに向けた。

「【爆気掌】!」

放たれる気功破。

「【バンビステップ】!」

この幅をしっかりと見極めたメイは一歩目を斜めに踏み出し、そのまま直進。

そして最後の踏み込みを再び斜めにすることでジュンシーの前へ。

「【装備変更】っ! 【キャットパンチ】!」

【猫耳】を【狼耳】に変え、二発の猫パンチを入れたところでジュンシーの足元に閃く気。

「【放気脚】!」

思った以上に大きな気の炸裂は、水辺で足を蹴り上げた際に生まれる飛沫のごとく。

これを横への飛び込みで転がったメイは、そのままノータイムで立ち上がり再び三発の【キャットパンチ】を叩き込む。

「【地震拳】!」

反撃は意外にも、拳を地面につく形。

広がる衝撃がメイを転倒させるも、そのまま早い受け身から立ち上がり、追撃に迫るジュンシーにカウンター気味の猫パンチを入れる。

「【大気爆砲】!」

突き出した両手から、放つ気功砲。

「うわわっ!」

これをとっさに前転で避けたメイは、そのまま最速で立ち上がって猫パンチをさらに二連続。

「【装備変更】【バンビステップ】!」

【狼耳】特有の転がりからの立ち直りの速さによって、まとわりつくような連携を入れ、ジュンシーが下がったところで再び装備を変えていく。

速い踏み込みは、下がったジュンシーの反撃よりも早い行動を可能にする。

「【キャットパンチ】! パンチパンチパンチパンチパンチ!」

先手を取ったメイの拳に灯った【狐火】の、青い炎が弾け飛ぶ。

これによって二歩ほど下がったジュンシーは、両手を重ねて突き出した。

「【大気爆砲】!」

「【装備変更】っ! 【アクロバット】!」

ここで再び【狐耳】から【猫耳】に変えたメイは、出された気砲を側方宙返りでかわして着地。

「【装備変更】っ!」

そして【猫耳】から【鹿角】へ。

「とっつげきだ――――っ!」

「くっ、うああああああ――っ!!」

狼、狐、猫、鹿。

次々と姿を変えていく戦法で、完璧に翻弄。

真正面からの体当たりを喰らったジュンシーは、砂煙を上げて転がった。

「やりますね……っ!」

やはり敵は大ボス、拳打の連発ではなかなか減りが遅い。

すぐに体勢を立て直したジュンシーは、「ハッ!」と一つ短く息をつき腰を落とすと――。

再び、弾丸のように飛び込んでくる。

「【閃気拳】、【放気脚】、【地震拳】!」

「うわっと!」

スキルの連発に、思わず面食らうメイ。

それでも見事な回避を続け、【地震拳】を小さな跳躍でかわしたところで――。

「【大気連爆砲】!」

それは右掌、左掌と続く気功破の連発。

右掌から左掌への切り替えは思った以上に早く、最後の一撃に虚を突かれる。

「あっぶない!」

それでも、しゃがみから横回転。

かすめる程度に収めてみせた。

そのまま脚を振り上げる形の後転で、起き上がろうとするメイの視界に映るジュンシーの接近。

「お願い、いーちゃん!」

「ぐっ!」

追撃の危機を、放つ暴風で吹き飛ばして一転隙を作り出す。

「それではいきますっ! 【蓄食】!」

片足を上げ、カンフー使いのようなポーズを決めるいーちゃんの横で、メイは取り出した『オレンジ』を一気に10個使用。

【敏捷】値を大きく跳ね上げる。

「【裸足の女神】っ!」

「ッ!?」

突然の急加速に、ジュンシーの反応が遅れた。

「【装備変更】【キャットパンチ】!」

そして巻き上がる、青の火の粉。

強烈な速度で放たれた猫パンチが、ジュンシーの頬を捉えた。

「パンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチ――――!」

炸裂する度、舞い散る青の火の粉によって視界が青く染まる。

「【閃気拳】!」

わずかな隙間を突いて放つ反撃も、回避の動きはすさまじいほどに機敏。

容赦なく回避して、再び猫パンチを叩き込む。

最低限の回避から放たれる高速の連打から、目にもとまらぬ回避を決めてまた連打。

細かな拳打の滅多打ちが、ジュンシーのHPを冗談のような速度で削っていく。

「くっ!」

その勢いに思わず大きく跳び下がったジュンシーは、さすがに苦しそうな息を吐く。

「だが、調子に乗るのはそこまでだ! 【天地即歩】!」

目を鋭く輝かせ、超高速の踏み込みから放つは強烈な拳気。しかし。

「――――【カンガルーキック】」

そこに置くような形で、小さな跳躍から繰り出していた蹴りがカウンターヒット。

青い火の粉と共に、ジュンシーは大きく体勢を崩した。

「いーちゃん! お願いしますっ!」

続く突風。

ジュンシーを吹き飛ばしたところで、メイは右手を突き上げる。

「それでは――――何卒よろしくお願いいたします!」

召喚の指輪が輝き、天に現れた魔法陣を割るようにして出てきたのは2羽の巨鳥。

そのまま寄り添うようにしてジュンシーに飛び掛かり、1羽目の蹴りが直撃した後、2羽目が蹴りと共に炸裂。

盛大な青の爆炎を巻き上げた。

「ありがとーっ!」

帰っていくケツァールに、大きく手を振るメイ。

「……くっ!」

爆発に吹き飛ばされたジュンシーは、砂煙をあげながら地を転がった。

「……やはりね」

HPゲージを削り切られたジュンシーはそう言って、ため息を吐く。

「シオンと共に王宮にやって来た時から、嫌な予感はしていたのです。この天賦の才を持つ僕にして『強者だ』と感じさせる何かが、君にはあった」

直撃を一度も受けることなく、一人でこの戦いを圧倒したメイにかけられる言葉。

「だが、それももう終わりだよ」

ジュンシーはそう言って、静かに笑う。

「気は満ちた! 鳳の龍穴は四神の長たる黄龍を呼び、我が力は永遠に語り継がれるものとなるだろう!」

その笑い声に応えるかのように、足元の風水羅盤に光が灯る。

「間に合ったみたいね」

「良かったです」

「レンちゃん! ツバメちゃん!」

「参加プレイヤーたちが敵兵を片付けてくれてるおかげで、真っ直ぐ来られたわ」

「助かりました」

参加プレイヤーたちは、正気を取り戻した将軍たちと共に敵兵の侵攻に対処。

今もなお増え続ける王宮内の増援兵たちは、ここまでやって来られたプレイヤーたちが担当。

それによってツバメとレンは、一直線にメイのもとにやって来ることができた。

一方、神々しい光を灯す風水羅盤と、その金の輝きに包まれていくジュンシー。

巻き起こった光の柱が天を突き、風が吹き抜けていく。

「……光栄に思うがいい。貴様らは我が伝説の最初の1ページ目に名を刻むことになる……真なる王に刃向かった稀代の愚か者としてな」

新たなHPゲージが表示され、勝利を確信したジュンシーは妖しい笑みを浮かべる。

しかしメイたちも、負けじと笑う。

「ここまで道を開いてくれた参加プレイヤーのためにも、負けられないわね」

「天子さんも、守らなくてはなりません」

「どんなに強い力を付けたって、レンちゃんとツバメちゃんが一緒なら、誰にも負けませんっ!」