軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

612.王宮を目指しますっ!

「ありがとう! 助かった!」

「いえいえ! こちらこそですっ!」

小隊三つに囲まれ窮地におちいったパーティを助けたメイは、王宮へ続く北門に目を向ける。

見えたのは、王宮内への侵入を防ぐために置かれた守りの兵士たち。

「強いなオイ……っ!」

「さすが本丸、守りが固いぞ」

「敵数も多いし、部隊長は強い。さすがに高レベルクエストだけあるっ!」

そこには先行していたいくつかのパーティが、かなりの苦戦を強いられている。

「【暗光爆破】!」

「マズい! 防御だ! 守れ――っ!」

放たれた範囲魔法に、大慌てで防御を固めるクエスト参加パーティ。

「今だァァァ! いけェェェェッ!」

ここでさらに、赤眼の敵兵士たちが突撃してくる。

戦いはいよいよ入り乱れになり、苦戦が窮地に変わり出した。

「いきますっ!」

そこへ駆け付けたメイは、さっそく混戦の中へ飛び込んでいく。

「【装備変更】っ!」

選んだのは意外にも、【王樹のブーメラン】だった。

「それっ! それそれそれーっ!」

ブーメランを投じず、巨大な棍棒として振り回すことで敵兵をまとめて弾き飛ばす。

「メイちゃんだ!」

「メイちゃん来たぁぁぁぁ!」

速い敵兵の小剣をしゃがんでかわし、立ち上がり際に振り上げ攻撃。

迫る二人組の兵士がスキルを放つ直前に懐へ踏み込み、振り払いで転がす。

魔法剣士の魔剣を跳躍でかわし、そのまま【アクロバット】からの叩きつけ。

着地際を囲みにきた、八人の兵士は――。

「そーれえっ!!」

大きな一回転でまとめて弾き飛ばした。

「すっげえ……!」

「あんな大きさの武器を持って、よくあれだけの回避ができるな」

「おい待て! 隊長格が来るぞ! しかも……同時にだ!」

わずかな立ち回りで戦況を変えつつあるメイだが、現れた北門を守る兵士のリーダーたちは、クエストボス並みの力を持っている。

それが同時に四人やってくるという最悪な状況に、慄くパーティ。

だがメイは止まらない。

「行け! 真紅竜!」

リーダー格の従魔士が呼び出したのは、巨大な飛竜。

大空を一直線に飛んで来る大迫力の魔獣に、メイは【王樹のブーメラン】を両手で持ち直し、ハンマー投げのように三回転。

「せぇぇぇぇの! それぇぇぇぇ――っ!!」

轟音と共に投じられた大型ブーメランは、一直線に突き進み直撃。

真紅龍はそのまま落下した。

「い、今だ! やれやれーっ!」

それを見たプレイヤーたちは、すかさず集中攻撃をかける。

「――――【獄火炎】!」

メイは走り、二人目のリーダー格のもとへ。

豪華な金の杖を突き出した錬金術師は、激しい炎を燃え上がらせる。

「【装備変更】【バンビステップ】!」

しかしメイは臆することなく炎に飛び込み、【王者のマント】で炎を振り払う。

「【ラビットジャンプ】!」

そのまま高く跳躍、手にした剣を振り上げた。

「【フルスイング】だあああーっ!」

「ウォォォォォォ――――ッ!!」

転がり倒れ伏す錬金術師型リーダー。

「――――【収縮烈氷弾】!」

しかしここで足の止まったメイを、三人目のリーダー格魔導士が狙い撃つ。

それは炸裂すれば高いダメージとなる、高火力の氷結魔法スキルだ。

「【装備変更】!」

メイはさらに武器を換えつつ振り返る。

「せーのっ! 【フルスイング】――ッ!」

手にしたのは【魔断の棍棒】

迫る魔法弾を、豪快なフォームで打ち返した。

「ウァァァァァァ――――ッ!!」

「【バンビステップ】!」

炸裂する氷結の嵐。

倒れ込む魔導士を横目に、一気に敵兵の間を駆け抜けたメイは四人目のリーダー格戦士の懐へ。

繰り出される剣の攻撃を難なくかわし、付近を確認しながら空いた方の腕をつかむ。

「【ゴリラアーム】……そのまま、それええええ―――っ!!」

味方とは程よい距離があることを確認しながらの放り投げは、敵兵の集団に直撃。

こうなれば後は、体勢の崩れまくった敵兵たちにスキルを叩き込むだけだ。

「【破邪光弾】!」

「【炸裂の矢】!」

「【ブリザードレイン】」

「ありがとうございますっ!」

即座の追撃に、ぺこっと頭と尻尾を下げるメイ。

なんと到着から数十秒で、戦局をひっくり返してしまった。

「ボス級のリーダーたちが一瞬で……」

「これがメイちゃんですよ!」

「そうそうこれだよ! これが見たかったんだ!」

北門前の一大防衛陣を打ち破ったところで、メイは先行して城内へと駆け込んでいく。

すると大盾を持った兵士たちが、大量に飛び出してきた。

どうやら物理攻撃に強い兵士たちを壁のように置くことで、強固な守りを実現しているようだ。

そのすぐ背後に弓術師を置いている辺りが、いやらしい陣形。

敵陣本営だけあって、かなりの手間が取られそうだ。

「それそれそれーっ!」

だが、それでもメイは止まらない。

投げたのは【豊樹の種】

「大きくなーれ!」

敵兵たちの足元に巻かれた種は、メイの合図で一斉に伸び広がる。

一瞬で生まれた密林の壁は、敵兵にからみついて動きを止めた。

「この中に、雷が得意なプレイヤーさんはいらっしゃいますか?」

「はいっ!」

一人の女性召喚士プレイヤーが名乗りを上げたのを確認して、メイは右手を突き上げる。

「――――それではどうぞ、お越しくださーい!」

空中に現れた魔法陣から落ちてきたのは、一頭の巨象。

着地と共に、その場にいた全員が「うわっ」と一瞬飛び上がる。

巨象がその長い鼻を空に向け、放水するとフィールドに天気雨が降り出した。

「おねがいしますっ!」

「そういうことですか! 【雷獣召喚】!」

女性召喚士が呼び出しのは、黄金の毛並みを持ち、尾が二つに分かれた巨大なネズミのような魔獣。

飛び上がってその姿を『雷』に変えると、豊樹に捉えられていた兵士たちに特攻。

『雨』で範囲を大幅に広げた雷が、一発で敵陣を打ち崩した。

「ないすーっ!」

「す、すげえ……」

歓喜するメイと、驚きに呆然とする同行プレイヤー。

だがここは敵の本陣、王宮内には次々と増援が集まってくる。

「ここは相当『湧く』みたいだな」

「これ、決戦の場にまで入ってきそうだぞ」

「メイさん! 使徒さんたちは?」

「後から来ますっ!」

「それならアサシンちゃん闇の使徒ちゃんが来た時のために道を作りつつ、敵兵を喰いとめておいた方が良さそうだな」

「よし、メイちゃんは先にいってくれ! 俺たちは敵兵を止めつつ使徒ちゃんたちを誘導する!」

「はいっ! おねがいしますっ!」

「「「まかせとけっ!」」」

気合を入れ直し、陣を組み直す同行組。

メイは走り、そのまま朱剣城の中央部へと向かう。

流れる『気』のエフェクトが、明らかに一点へ向かっている。

その後を追って行くと、王宮の広場には大きな風水羅盤。

そこでは背に真紅のローブをまとったジュンシーが、メイを待ち構えていた。

「……さすがだね。四神の加護を得たシオンに『この者たちの力あってこそ』と言わしめただけのことはある」

龍穴までたどり着かれてしまった上に、一人きり。

それだというのに、ジュンシーの態度には余裕しか見られない。

「隣の国を攻めて、そのうえ天子ちゃんたちまで狙おうなんて、許しませんっ!」

「それなら力づくで止めるしかないよ。次代の王である、この僕をね」

そう言って、ジュンシーは笑う。

「ついにこの時が来たんだ。四神の加護を持つ者がそろい、黄龍が目覚める。その加護は世界を動かすほど……だが、黄龍を呼び出すにはまだ少し時間がかかるみたいでね」

拳を握り、開く。

その度に、少しずつ解放されていく『気』

「わずか数年で師に迫るほどだった才能は、本来難しい『気力を隠す』ことすら容易なほどだった。長い時間、誰もが僕を少し武術をかじった程度の文官だと信じて疑わなかった。僕が王とならずに誰がこの世界に覇をなすというのか。年老いた王も、力なき天子も、腑抜けた隣国も全て踏み潰して……誰が真の王なのかを民にはっきりと示すんだ。そして……血で血を洗う新たな戦乱の時代を、ここに始める!」

「そんなこと、させませんっ!」

「ならば……鳳の新王ジュンシー・ラウがお相手しよう」

長らく押さえつけられていた強烈な『気』が解き放たれ、王宮内を駆け抜けていく。

老子に100年に一人の才能と恐れられた天才は、静かに拳を握った。