作品タイトル不明
611.ツバメとスライム
スライムの参戦によって、流れが変わり出したフェイ・リンとの戦い。
「アア、喰わせろ……喰わせろォォォォ!!」
金の扇による連続攻撃を、ツバメは的確にかわしていく。
「【閃鉄】! 【閃鉄】! 【閃鉄】っ!」
続く空刃の連発は、しっかりその軌道を見据えて回避。
「【龍飛扇】!」
「【跳躍】!」
放たれた突風を真上へのジャンプで回避したところに、駆け込んでくるのはスライム。
「【閃鉄】【閃鉄】っ!」
振り返りと同時に放つ空刃を、水たまりのように潰れて地を滑り、跳ねて回避し距離を詰める。
二人の見事な回避に、翻弄され始めるフェイ・リン。
「【竜巻扇】!」
「こ、【硬化】ぽよ!」
風に転がらないよう、慌てて固定化するスライムに笑うツバメとプレイヤーたち。
「【投擲】!」
それでもしっかり、けん制は入れておく。
フェイ・リンがこれを回避したところを突き、スライムがすべり込む。
「【可変】【大回転】ぽよ!」
「くっ! 【天突】!」
身体を伸ばして棒状になり一回転。
フェイ・リンも跳躍スキルで回避するものの、かすめてダメージを受けた。
「【閃鉄】!」
着地際に放つ一撃が、砂煙を巻き上げる。
「あぶないぽよ……っ」
危うくめくり上がりそうになるスライムを、上からちょっと抑えてみるツバメと同行組。
直後、大きく広がったエフェクトに警戒する。
「範囲攻撃、きます!」
「まかせるぽよーっ! 【可変】【硬化】!」
「【十二舞投扇】!」
放たれる十二枚の金扇。
それはフェイ・リンを中心に渦巻のような軌道を描いて放たれる、回避が極めて難しい範囲攻撃。
「逃げ込めぇぇぇぇ!!」
「「「おおおおお――っ!!」」」
しかしスライムが堅固な壁となり、その背後に駆け込むことでダメージを回避。さらに。
「【不可視】【投擲】!」
壁が降りる直前に投じた【ブレード】は、モーションも本体も視認できないため回避不能。
「ぐあっ!?」
体勢を崩したところに、待ってましたとばかりに同行組の攻撃を続ける。
「【疾風斬】!」
「【アイスジャベリン】!」
「【ファイアシェル】!」
「くっ!」
これが次々フェイ・リンを弾き、かすめ、ダメージを与えたところで――。
「【加速】【電光石火】!」
その隙間を一瞬で駆け抜けたツバメが、そのまま斬り抜けへとつなぐ。
「敵の攻撃を弾いた後に、援護が入るのは助かるぽよ!」
追撃を狙って駆け出すスライムに、ツバメも止まらない。
「【加速】【リブースト】!」
フェイ・リンを前後に挟んだ状態で、振り返りと共に最接近。
「スライムさん!」
「かしこまったぽよ! 【帯電】!」
「【紫電】!」
「【砲弾跳躍】ぽよ――っ!!」
「グァァァァァァ――っ!!」
この位置取りからの【紫電】は、味方も感電させてしまう恐れあり。
しかしスライムが【帯電】を使えば問題なし。
狙い通りフェイ・リンは、弾き飛ばされた上に感電までしてしまうという最悪の状況に。
「【アイスジャベリン】!」
「【爆火砲】!」
「【剛腕叩きつけ】だぁぁぁぁ!」
「ウァァァァァァ――――ッ!!」
長いダウンとなれば当然、同行勢が動き出す。
一連の連携が、見事に決まった。
「気持ちいいな! スライムちゃんツバメちゃんコンビ、ちょっと強すぎんか?」
「この壁性能にツバメちゃんが速さで翻弄。できた隙に俺たちが続く感じ……! 最高だなっ!」
二人の前衛によって戦いが安定し、常に優位が取れる。
そんな状況にわく同行組。しかし。
「………アアアア……アアアアアアア――――ッ!!」
HPが半分を切ったフェイ・リンは、恐ろしい咆哮と共に赤眼をさらに強く輝かせる。
踏み込みはさらに速く、荒々しく。
「【超合金打点槌】ィィィィ!!」
その手に生み出された大柄な金のハンマーは、風の力を受け猛烈な振り払いへ。
「「「うおおおおーっ!?」」」
その凄まじい勢いに、思わず悲鳴を上げる同行組。
豪快な風切り音と共に振るわれた一撃をツバメは地に伏せることでかわし、振り上げをバックステップで避ける。
「はああああああ――っ!!」
続く一撃は、全力の振り降ろし。
金剛槌が叩いた地面に衝撃が走り、揺れに体勢を崩すプレイヤーたち。
「【超合金打点槌】ィィィィ!!」
この隙を狙い、大きな踏み込みから払う一撃はスライムを狙うもの。
「【可変】ぽよーっ!」
三日月型に屈曲して、脅威の一撃をかわす。
「ぽっ、ぽよぉぉぉぉ――っ!?」
しかしその勢いはすさまじく、ゴロンゴロンと転がる。
「オオオオオオオオ――――ッ!!」
「【跳躍】」
荒れ狂うフェイ・リンに対し、視線を空へ誘導しつつ攻撃を狙う。だが。
その赤い目は、空のツバメをにらみつける。
「【地獄大剣山】!!」
「なっ!? ああああーっ!!」
扇を振り下ろすのと同時に、金の剣山が突きあがる。
一つの剣が長さ5メートルほどにもなるその一撃に肩を斬られたツバメは、3割強ものダメージを受けた。
「【天突】!」
さらにフェイ・リンは、足元から突きあがる金の足場を使い高く跳躍。
「咲けェ! 【黄金斬花】ァァァァァァ――――ッ!!」
「「「うわああああああ――――っ!!」」」
扇で地面を叩くのと同時に巨大な黄金の花が生まれ、付近のプレイヤー達をまとめて切り裂いた。
その広い攻撃範囲に、同行組はダメージを受け転がる。
「【加速】!」
しかしこのスキルは一度、天子のお使いクエストで見ていたツバメ。
花を避けて駆けると、そのままフェイ・リンのもとへ。
「【雷光閃火】!」
「【白虎金爪断】!」
スキルを発動すると、黄金の欠片が集まり盾となる。
ツバメの一撃を弾いた黄金盾は散り、そこには金扇を大きく引いたフェイ・リンの姿。
「ガード、カウンター……ッ!!」
防御から反撃までを一つのモーションにしたスキルが、見事にさく裂。
金扇の振り上げと共に発生した猛虎の爪が、ツバメを切り裂いた。
「ああああああ――っ!」
追撃に動くフェイ・リン。
「そうはさせないぽよーっ!」
飛び込んで来たスライムはそのまま全身で『喰らいつく』と、フェイ・リンを包み込んだままゴロゴロ三回転して放り出す。
「助かりました! スライムさん、次は私ごと『押しつぶして』ください! 【疾風迅雷】【加速】!」
「りょうかいぽよっ!」
ツバメはフェイ・リンのガードカウンターに注意しながら高速移動の連発で翻弄し、ダガーで細かく攻撃。
「【飛び跳ね】ぽよ!」
あえて近距離戦に持ち込んだところで、スライムが高く宙に舞う。
そしてそのまま、ツバメたちの頭上に来ると――。
「【巨大化】! 【硬化】! からの――――っ! 【ボディプレス】ぽよーっ!」
そのままフェイ・リンと共に押し潰した。
「本当にツバメちゃんごといったー!?」
「いや、もしかして!」
同行組の予感は当たる。
「そちらは、オトリです」
ボディプレスが潰したのは【残像】のみ。
フェイ・リンだけがダメージを受け転がった。
「【加速】」
「【閃鉄】【閃鉄】【閃鉄】!」
すぐさま走り出したツバメ、起き上がったフェイ・リンの空刃をかわして接近。
「【電光石火】!」
放つ斬り抜けを、フェイ・リンは無理せずしっかり防御。
後に続くスライムに狙いをつける。
「【天突】!」
突きあがる金の柱を足場に跳躍し、放つは強烈な黄金槌の振り降ろし。
「喰らェェェェ! 【超合金打点槌】ィィィィ!!」
対してスライムは、しっかりとフェイ・リンを引き付けたところでスキルを発動する。
「――――【地獄大剣山】ぽよーっ!」
「な、にぃっ!?」
「こういう攻撃もできるぽよっ!」
先ほどの『喰らいつき』の正体は【吸収Ⅰ】
それは敵の主要スキルの一つをコピーし、戦闘中に使うことのできるというスライムの特性スキル。
「これで終わりです【加速】【リブースト】!」
斬られ転がったフェイ・リンのもとに最速で駆けるツバメは、リベンジとばかりにダガーを向ける。
「【雷光閃火】――っ!」
「【白虎金爪断】――――ッ!!」
しかし再び弾かれる、ツバメの一撃。
「ダメだ! 間に合わないッ!」
「フェイ・リンの防御スキル、やっぱりやっかいだ!」
甲高い金属音と共に、体勢を崩すツバメ。
続くガードカウンターに、誰もが頭を抱えるが――。
「――――【隠し腕】」
伸び出してきた、三本目の腕。
「な、なんだ!? 腕がもう一本出てきたぞ!?」
どよめきの中、その手に握られているのは【火天大戦斧】
【隠し腕】の強みは、使用者のステータスや職業による『装備相性』がないところ。
振り上げられた【火天大戦斧】はそのまま、フェイ・リンに叩き下ろされる。
「いきます! 【絶火烈空斬】!」
赤熱した刃は、猛烈な炎を上げて爆発する。
「ウアアアアアアアア――――ッ!!」
猛火が天を突き、下草を一瞬で消し炭に変える。
舞い散る火の粉の中、崩れ落ちたフェイ・リン。
自身を抱くようにしながらつぶやく。
「私はなぜ、このような真似を……っ」
「「「やったぜええええええ――――っ!!」」」
ツバメが大きく息をつくと、同行組が歓喜の声を上げた。
「ツバメちゃんナイスだな!」
「やっぱアサシンちゃんは、この綱渡り感よ!」
「三本目の腕が出て来た時は驚かされたな! ガードカウンターに割り込むなんて、すげースキルだ!」
「いい戦いになったぽよ!」
「皆さんありがとうございました。スライムさんも、とても頼もしいです」
「やっぱ今回の戦いは最高だったな! 来てよかったわ!」
「楽しかったぽよーっ!」
同行組に、スライムに囲まれほほ笑むツバメ。
鳳国将軍、白虎のフェイ・リンとの戦いは見事な勝利で幕を閉じた。