軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

610.ツバメと白虎と軟体と

「【投擲】!」

倒れる敵兵たちの合間から駆け込んできた小隊長に、ツバメが放つのは【雷ブレード】

「ぐああああっ!!」

「今だ! 【リバースエッジ】!」

「【クロスブレード】!」

「【ファイアキャノン】!」

チャンスに踏み込んでいく参戦プレイヤーの近接攻撃から、続く魔力砲。

小隊長も中ボス級の能力を持つが、感電状態にされてしまえば隙だらけ。

続く連携に倒される。

「さすがアサシンちゃんだな!」

「これは戦いやすい……っ」

各所で敵兵をせき止めるための戦いが行われる中、メイたちは将軍を探しつつ前進。

「せーのっ! それーっ!」

メイは【遠視】で見つけた『不利な戦場』を見つけると、【王樹のブーメラン】を投擲。

敵兵をまとめて弾き飛ばし、戦局の優劣を一発で切り替える。

「メイちゃんサンキュー! 助かったぞー!」

「いえいえー! こちらこそですっ!」

掲示板民を始めとした参戦プレイヤーたちとしては、経験値、見知らぬ展開、メイと一緒というおいしい状況。

メイとしても、この大量の敵兵が防衛ラインを越えたら終わりというクエストに来てくれたプレイヤーたちに感謝。

手を大きく振って応える。

「よし! このままいくぜ――ッ!!」

それによってさらに、盛り上がる戦況。

「「「ッ!!」」」

そんな中、突然巻き起こった突風に足を止める。

広大な草原の中を一人、フラフラと歩いてくる一人の女戦士。

「……喰わせろ」

長く綺麗な黒髪を一つに結び、紫の着物のような衣装に軽鎧。

黄金の鉄扇を手にした鳳国将軍は、白虎のフェイ・リン。

「喰わせろォォォォ!!」

「来たっ! ここはフェイ・リンか!」

赤くギラギラと輝く目。

金の鉄扇を振り上げると、付近を払うような風が吹き抜けていく。

「オオオオオオ――ッ!!」

そして風が止まるのと同時に飛び掛かってきた。

「【閃鉄】!」

あいさつ代わりの空刃。

これを先頭にいたツバメがかわすと、そこから踊るような回転撃へと繋ぎ、最後は下から上に振り上げる。

「【閃鉄】!」

振りに合わせて空刃が飛ぶ。

このスキルは短い時間で連打可能なのがやっかいだが、ツバメには問題なし。

「【龍飛扇】!」

しかし扇を開いた瞬間に生まれたエフェクトを見て、覚える危機感。

「【加速】【リブースト】!」

シンプルな振り降ろしから生まれる突風は、思わぬ高火力。

下草を100メートルほど払い突き進む。

「「「うおおおおっ!!」」」

その範囲も広く、かすめた同行組もバタバタと転倒を取られ転がる。

早くもその強さを見せるフェイ・リン。

そんな中メイの視線は、わずかな迷いを見せていた。

「「「うわああああああ――――っ!!」」」

「ツバメちゃん、向こうのパーティが三つの敵兵隊に囲まれてるよ!」

聞こえた悲鳴。

メイの【遠視】に見えたのは、運悪く三つの敵兵隊に囲まれてしまった少人数パーティ。

隊長三人付きというのは、厳しすぎる状況だ。

「……わかりました。ここは私がなんとかします。進んだ先で落ち合いましょう!」

「りょうかいですっ!」

ツバメはフェイ・リンのターゲットを奪うため前に出る。

「【閃鉄】!」

放たれる空刃を肩を引くことでかわすと、続けざまの飛刃をターンでかわす。

「今だっ!」

この隙を突きフェイ・リンを取り囲むプレイヤーたち。

「【竜巻扇】!」

すると金扇を開き一回転。

フェイ・リンを中心に外へと広がる突風が、プレイヤーたちを押し返す。

そしてわずかに体勢を崩したところで発動する、白虎の加護。

「【十二舞投扇】!」

『金』を生み出す力が発揮され、生まれた大きな12枚の鉄扇。

一斉に外へ向かう渦巻のような軌道で飛んでいく。

「「「うおおおおおお――――ッ!!」」」

その攻撃範囲の広さもあり、多くの同行組がダメージを受けた。

それでも『体勢が悪く直撃は避けられない』とみるや、即防御に切り替えていたのは見事。

「これ、全然近づけねえぞ!」

「将軍強え……っ! 他のクエストならマジで大ボス級じゃねえか!」

風と刃を用いた大掛かりなスキルは接近が難しい。しかし。

「【加速】【加速】【加速】【加速】!」

広範囲攻撃ゆえに、隙間も多い。

ツバメは目を凝らし『道』を予想。

【疾風迅雷】で、フェイ・リンの前まで踏み込んでいた。

「【電光石火】!」

放つ斬り抜けを、見事にかわすフェイ・リン。

「【四連剣舞】!」

振り返りと同時に繰り出す四連の剣撃は、扇を広げ素直に防御。

白虎の加護を得た金の鉄扇は防御力が高く、ダメージは僅少だ。

「【疾風斬】!」

「【ファイアシェル】!」

フェイ・リンは立て直しも早く、追撃も踊るような足の運びで回避する。

「【竜巻扇】!」

反撃は払いの突風。

「【跳躍】!」

ツバメは吹きすさぶ突風を、後方へのジャンプで避け着地した。

「速い動きでの回避と丁寧な防御。範囲攻撃によるけん制はやっかいです……ッ!」

「【金花大嵐】!」

「皆さん! 気を付けてくださいっ!」

「「「うおおおおおっ!?」」」

見えた黄金のエフェクトと、振り上げた金扇。

花びらのような無数の金の欠片が、フェイ・リンを中心に炸裂する。

「回避は、ほぼ不可能という感じですね……」

ダメージは1割に届くかどうか。

威力は控えめだが回避はあまりに難しい、散弾のようなスキル。

「どう……攻めるべきでしょうか」

回避だけならまだしも、防御が上手いというのは思った以上にやっかいだ。

そして機を見て、回避不能の全体攻撃を使用してくる。

これが繰り返されれば、そう長くないうちに削り切られてしまうだろう。

悩むツバメ。

「……おや?」

見えた姿に覚えあり。

敵兵を払いながら前進してきたのは、一匹の――。

「スライムさん」

「ツバメさんぽよ!」

「お、おいっ! 危ないぞッ!!」

思わず足を止めた二人に、フェイ・リンは速いダッシュで駆け込んでいく。

そして狙いを、新参のスライムにつけた。

「【可変】ぽよ!」

金の扇による振り払いを、水たまりのようになって回避。

続く振り降ろしを棒状になって避けると――。

「【閃鉄】!」

「【硬化】ぽよ!」

再度振り払いにきた金扇の一撃を、棒状のまま受け止める。

ガキン! という硬質な音と共に弾かれる両者。

「ッ! 【電光石火】!」

すかさずツバメが斬撃を入れる。

「【疾風斬】!」

「【ファイアキャノン】!」

「クッ!」

すると同行組も後に続き、ついにフェイ・リンに連携がヒット。

そしてこの追撃が相手を転がす形になったことで、ツバメとスライムは同時に走り出した。

起き上がったばかりのフェイ・リンは、この窮地を乗り切るためにスキルを発動。

そのエフェクトに、ツバメが叫ぶ。

「気を付けてください! 回避を許さぬ広範囲スキルです!」

「そういう事ならおまかせぽよっ! 【巨大化】からのー【硬化】ぽよーっ!」

「【金花大嵐】!」

無数の金の欠片が弾け散る。

しかしメイを真似た叫びと共に大きく広がったスライムが壁となり、範囲攻撃を弾いてみせた。

「【加速】【跳躍】」

この流れを予期したツバメは、スライムの壁を跳び越えていく。

「【雷光閃火】!」

着地と同時に地を駆け、そのままダガーを突き刺す。

激しく飛び散る火花、そして爆発。

「アアアアアア――――ッ!!」

【金花大嵐】による反撃を狙ったフェイ・リンは、3割のダメージを受けて転がった。

「ナイスぽよーっ!」

「理想的な動きのタンクです。その上フェイ・リンさんとの相性も良い感じです」

バインバイン跳ねて歓喜するスライムに、ツバメは思わずつぶやく。

「この2人……いいんじゃないか?」

「ああ、いい感じだ!」

同行組も覚えた感触にわき上がる。しかし。

「【龍嵐扇】!」

「ぽよーっ!」

フェイ・リンが起き上がりと同時に放った風の余波で、ころころと転がるスライム。

「か、【可変】で形を変えてないと、大変ぽよ!」

コンビネーションの軸にもなれる軟体動物に可能性を感じつつも、思わず笑みをこぼすツバメだった。