軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

615.王と王者

奥義級スキルである【破山黄龍撃】を破られたジュンシーは、静かに息をつく。

「【覇王連技】」

そして、新たなスキルを発動させた。

「余の慈悲なき連技を、受けてみよ……【飛龍】」

高速の飛び込みで一気に距離を詰め、ジュンシーはツバメを狙う。

「【龍鳴拳】」

放たれた拳を、かわしたところで――。

「【龍鳴拳】【龍鳴拳】【龍鳴拳】!」

「ッ!?」

続くは黄金の気を放つ、拳撃の連打。

右左右、踏み込み再び右左右と、高い火力と速さを両立する拳打でツバメを追い込む。

それは時限的にスキルを『コンボ化』するという、恐ろしい技。

ツバメはそれでも、この高速六連撃をどうにかわしてみせた。

「【爆龍】」

「ッ! 【跳躍】!」

続く気の爆発も、ジャンプでギリギリかわす。

それは素晴らしいまでの回避劇。しかし。

「【削岩回転脚】!」

「エアリア――ああああああっ!」

最後の一撃への対応が、惜しくも間に合わず直撃。

2割強のダメージと共に、弾かれ地をバウンドした。

「ツバメ!」

「よそ見している暇があるのか? 【飛龍】」

「ッ!?」

「【龍鳴拳】【龍鳴拳】【龍鳴拳】っ!」

「くっ!」

連発によって弾ける、黄金の気。

メイやツバメの回避を思い出しこれを必死に避けたレンは、【爆龍】に備える。

「【大地突衝】!」

「そっち!?」

続く連携は、地面から突きあがる岩剣。

しゃがもうとしたことで回避が後れ、慌てて防御に切り替える。

だが防御してしまえば、その場を動けない。

「【龍鳴拳】【爆龍】!」

「きゃあああ――っ!」

大きな踏み込みから続く一撃に計3割近いダメージを受け、弾き飛ばされた。

ジュンシーは攻める。

次の狙いは当然メイだ。

速い踏み込みで迫るジュンシーに、メイはカウンター気味に剣を振り上げる。

これを急停止からの上体そらしで避け、繰り出す連続拳打。

「【龍鳴拳】【龍鳴拳】【龍鳴拳】!」

メイは三連撃を難なく避け、続くスキルに意識を集中。

どのパターンできても回避できるように、体勢を整える。

「【臥龍】」

「っ!?」

しかし続いたのは、まさかの初見範囲スキル。

「上からっ!?」

真上から降りる気龍という攻撃に、完全に虚を突かれた。

「【アクロバット】!」

それでもメイは、これを大きなバク宙でギリギリ回避。

着地と同時に反撃に入ろうとするが、続くのはまたも初見範囲スキル。

「【昇龍】!!」

「わあああああ――――っ!」

「ああっ!」

「きゃあああっ!」

先ほど地に潜った龍が再び天に帰っていくような連携に、三人まとめてダメージを受けた。

メイは1割強、レンとツバメは余波だけで1割ほど。

スキルをつなぐことで生まれる怒涛の攻勢は、三人だけで立ち向かうにはあまりに厳しい。

「ははははははは! 力なき者が不遜にも我が前に立ったことを、地獄で悔い続けるがいいっ! 【双龍破】!」

ジュンシーは止まらない。

響く龍の鳴き声と共に、放たれた二匹の気龍。

「【ラビットジャンプ】!」

絡み合うように迫る龍を、立ち上がったばかりのメイは跳躍で回避するが、二匹は後方で盛大に炸裂。

「わああああーっ!」

ダメージこそ喰らわなかったものの、激しい余波に再び三人は地を転がる。

「ははははは、はははははははっ! 賊どもには無様に地を這い転がるのがお似合いだっ!」

その攻勢に容赦なし。

狂ったような笑みを浮かべたまま、ジュンシーは大きく両腕を開いてみせた。

「――――【羅盤無尽光】」

「「「ッ!?」」」

足元に現れた羅盤に、四神の紋が浮かび上がる。

それは間違いなく、奥義級のスキルだ。

「このまま押し切るつもりなのっ!?」

「さすがに、これはマズいです……っ」

震え出す大気に思わずレンが息を飲み、ツバメも唖然とする。

迫る大きな危機、そんな中――。

「……レンちゃん、ここでこのアイテムって使えるかな?」

メイが不意に、口を開いた。

「それって【進化の秘石】?」

「うん。まだダメージはあんまり受けてないし」

「そういうこと……! その発想はなかったけど、メイならいけそうね!」

「面白いことになりそうです!」

うなずく三人。

先行して使用した【蓄食】による敏捷上げもあり、まだメイのHPは多く残っていた。

「さあ終わりの時間だ。余の伝説の始まりを飾るにふさわしい、無様な死を晒すがいい! これは新王からの命令だっ!」

「私たちは全力で回避して、反撃に備えましょう! 【低空高速飛行】!」

「了解です! 【疾風迅雷】【加速】!」

「――――消えろ、賊ども」

笑みと共に、両手を大きく開いてみせるジュンシー。

すると羅盤の内側に、黄金の気が一斉に噴き上がり出す。

戦場に鳴り響く龍の咆哮、天地を震わすほどの一撃。

直撃すれば最悪即死というそのスキルを前に、なんとメイは動かない。

「……【ドラミング】」

メイは【進化の秘石】を使用。

黄金の気の流れの中、胸元を『四度』叩いてみせる。

直後、ジュンシーの放った一撃は三人を巻き込み炸裂した。

立ち昇る猛烈な光の奔流が、荒れ狂う。

しかしメイは微動だにしない。

レベルを上げた【ドラミングⅡ】は、敵の攻撃を受けても『進む』ことが可能だ。

ゆっくりと歩き出し、やがて加速。

「【裸足の女神】」

猛スピードで削り取られていくHPは、なんとメイをもって5割に迫るほど。

それでもメイは、黄金の輝きの中を真っ直ぐに駆けていく。

そして風水羅盤のど真ん中まで来たところで、大きく剣を引いた。

「な、にっ!?」

両手を開き、笑みを浮かべたままでいたジュンシーが、その目を驚愕に見開く。

「いきますっ! 必殺の【ソードバッシュ】だああああ――――っ!!」

「がっ、ぐああああああ――――っ!!」

猛烈な衝撃波が、ジュンシーを吹き飛ばした。

「【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】っ!」

黄金の輝きに2割のHPを削られたツバメは大急ぎで攻撃範囲外に抜け出ると、メイの一撃が決まり光が消えていくのを見て即ターン。

ここは分岐点。

こちらの攻勢が続くか、仕切り直しになってしまうか。

攻めを継続するには、なんとしてもジュンシーに一撃くわえなくてはならない。

「くっ! 【砲龍】!」

「【リブースト】!」

ツバメは全力で集中し、放たれた気砲を超加速でスレスレ回避。

「【電光石火】! 【紫電】っ!」

「ぐああああっ!!」

そのまま斬り抜け、振り返り様の雷光で動きを止める。

流れを、見事につないでみせた。

「ありがとう! ツバメちゃんっ!」

メイはすでに、右手を上げていた。

「――――それでは、よろしくお願いいたしますっ!」

魔法陣から現れたのは、一頭の巨大クマ。

武道着をまとった老子グマは、ひょうたん酒を手にしたまま高速千鳥足で接近。

そのまま飛び上がると、ひょうたん酒をグルグル回して狙いをつけてから放り捨て、グレート・ベアクローを叩き込む。

「ぐああああああ――――っ!」

砂煙を上げて、転がっていくジュンシー。

だがメイはまだ、右手を上げたまま。

ワクワクしながら【友達バングル】を発動する。

「続きまして! ――――誰が来てくれるかなっ!?」

メイの呼びかけに応えたのは、一頭の白い中型犬。

風のような速さでジュンシーを追い、宙に浮かべた『お札』を一斉発射。

「くっ!? がああああっ!!」

見事な追撃で、さらにジュンシーを転がした。

「わあ! 犬神ちゃんありがとーっ!」

「お久しぶりです」

現れたのはなんと、ヤマトで出会ったブラック陰陽師の相棒犬。

右手を上げたままのメイはお礼とばかりに大きく手を振って、さらに追撃を仕掛けにいく。

「続きまして! ――――おいでくださいませ、狼さんっ!」

魔法陣から吹き出す大量の白煙。

その中から出てきたのは、一頭の巨狼。

「ウォオオオオオオ――――ッ!!」

遠吠えと共に駆けだした灰色狼は、雪片を巻き上げ地を駆ける。

そしてそのまま、体勢を崩しているジュンシーに食らいつき天を向く。

巻き上がっていく氷嵐が、容赦なく炸裂する。

「ぐ、ああああああああ――――っ!!」

空高く、飛ばされるジュンシー。

そして狼の一撃には『氷結効果』あり。

「――――【魔眼開放】」

開いた右目が、黄金に輝く。

ヒザを突いたまま悶えるジュンシーに【銀閃の杖】を向けたレンは、【色炎のお守り】を起動し、さらに【限界向上湯】を使用。

「スキルの連発のお返しは、ここでさせてもらうわよ! 【フレアバースト】!」

爆炎の一撃は【魔眼開放】によって威力を向上。さらに。

「【フレアバースト】【フレアバースト】【フレアバースト】【フレアバースト】【フレアバースト】【フレアバースト】【フレアバースト】ォォォォーっ!」

クールタイムを大きく軽減し、上級スキルの連発も可能にする【限界向上湯】によって放たれたのは、視界を焼くほどの爆炎連射。

紫の炎に、ジュンシーは何度もバウンドしながら地を転がった。

「派手で良かったでしょう?」

大量の火の粉が散る中、まだ残り火のついた杖を華麗に降ろして笑うレン。

身体を張ったメイの一撃をツバメがつなぎ、動物たちのリレーから、レンの上級魔法連射へと続くコンビネーション。

この連携はなんと、ジュンシーのHPを一気に残り2割を切るところまで減らしてみせた。

「わきまえろ……」

鳳国将軍、黄龍のジュンシー・ラウはゆっくりと立ち上がる。

そして、怒りに震える手を強く握り締めた。

「わきまえろ、賊どもがァァァァァァァァ――――ッ!!」

「「「ッ!!」」」

怒りの咆哮と共に、【飛龍】によって高速の接近を果たすジュンシー。

「【覇王連技】! 【龍鳴拳】【砲龍】【龍鳴拳】【砲龍】【削岩回転脚】!」

「ッ!!」

これまでのスキルを乱雑に混ぜた、まるで先が読めない連携。

「右! 左! もう一度右っ! 左に寄ってから【アクロバット】ーっ!」

驚異的な連携を前に、メイは真正面から立ち向かいこれを回避。

「【大地突衝】【飛龍】【昇竜】【臥龍】【昇龍】――っ!!」

だがジュンシーも、範囲攻撃を連発することで攻勢を強めていく。

「わわわわっ!?」

「な、なによこれっ!」

「すさまじい勢いです……っ!」

こうして三人の体勢を、大きく崩したところで両手を突き出す。

「【双龍破】!」

「「「ッ!!」」」

放たれた二匹の気龍が炸裂。

ダウンを取られた三人のHPは、いよいよ危険域だ。

「……黄龍よ、その力の全てを解き放て」

途端に向けられる、冷酷な視線。

ジュンシーは掌を天に伸ばす。

すると空が黒雲に埋まり、雷光が閃き出した。

「【黄龍地変撃】」

「「「ッ!?」」」

ジュンシーは掲げた手を振り降ろし、強く地を叩く。

途端に走る、巨大なヒビ割れ。

地面が一斉に、落ち崩れていく。

鳴り響く地鳴りは、地変を謳う最終奥義の威力を如実に物語っている。

「この残りHPだと、少し厳しいですね」

「ここは大人しく逃げに徹しましょうか。最悪メイだけでも生き残れれば――」

「勝機はある」と言おうとしたところで、メイが手を上げた。

「レンちゃんツバメちゃん、ここはわたしにおまかせくださいっ!」

【蓄食】によって上がった【敏捷】

迫る『地変』の波に、なんとメイは正面から立ち向かう事を選んだ。

「メイがやるっていうのなら、信じるわ」

「はい、私たちは全力で逃げ切ってみせます」

「勝って一緒に喜びましょう」

「りょうかいですっ!」

三人はうなずき合い、同時に動き出す。

「【装備変更】【バンビステップ】! よーい…………どんっ!」

掛け声と共に、走り出すメイ。

落ちる前の足場を踏むことで、崩れゆく地面を細かな跳躍で駆けていく。

「【裸足の女神】!」

目前の落下に、超加速で対応する。

しかし目の前に現れたのは、落ちた地面によって左右に割れた崖。

「【モンキークライム】!」

それなら、岩壁を蹴って突き進む。

わずかな出っ張りに、時に手をかけ足をかけ、崖を駆けていく。

だが進んだ先にもはや道はなく、崩れ落ちていく岩塊たちが見えるのみ。

それでもメイは止まらない。

今まさに落下している岩塊の上に飛び乗ると、両手を地に突きバランスを取った。そして。

「よ、よ、【四足歩行】だああああーっ!」

さらに速度とバランスを大きく上昇。

今度は落ち行く最中の岩を足場に変え、その上を高速で飛び移っていく。

巻き込まれれば、メイとはいえ大ダメージ必至。

運営ですら、この最終奥義を跳び越えてくるプレイヤーが出るなどとは想定していない。

よって乗り越えるための『道』など作っていない。

しかしそれでもなお、メイの足は止まらない。

落ち行く岩塊を次々に跳び越えて、一気に前進。

その先に、ジュンシーの姿を発見した。

「【ラビットジャンプ】!」

落ち行く岩の天辺を蹴り、空高く跳び上がる。

「【アクロバット】!」

災害級の一撃を乗り越えたメイは、空中で一回転。

鳳に来る前に『栽培』しておいた【世界樹の実】をかじると――。

「【装備変更】」

【大地の石斧】を取り出し、高く掲げる。

「いくよぉぉぉぉ――――っ! 【地裂撃】ぃぃぃぃ――ッ!!」

「……っ!?」

石斧が地面に刺さり、ガクンとジュンシーの足場が崩落。

「からの――――【グレート・キャニオン】だああああああ――――ッ!!」

「あ、あ……ああああああああ――――ッ!!」

腕力用の【世界樹の実】によって、大きく上がったその威力。

それは【黄龍地変撃】をさらに上回る、絶大な一撃。

地面から突きあがるいくつもの岩の塔は、最高部で200mメートルを超える高さを誇る。

何棟もの超高層マンションが、地面から突然飛び出したかのような凄まじい光景。

吹き飛ばされたジュンシーは、天高く舞い上がりそのまま落下。

地面に強く叩きつけられ、HPゲージ全損となった。

「そんな……黄龍の加護を得た余が……覇を成す世界の新王が……こんなところでぇぇぇぇ……っ!!」

驚愕の面持ちと共に、あげる叫び。

ジュンシーはそのまま、力なく倒れ伏した。

「やったー!」

「大地を使う攻撃なら、メイの方が格上ね!」

「本当にあの奥義を乗り越えてしまうとは、お見事でした!」

劇的な勝利を飾り、三人は拳を突き上げる。

こうして鳳に反旗を翻したジュンシー・ラウとの戦いは、メイたちの勝利によって幕を閉じたのだった。