軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

608.将軍ガオウと玄武の力

「戦え……オレと……戦えェェェェ!!」

頭上で大きな槍を回転させると、多量の水が舞い散る。

ジュンシーの龍穴を使った狂化作戦により、戦いを求める暴徒と化したガオウ将軍。

その場に馬を乗り捨てると、レンたちの前に立ちふさがった。

「オオオオオオオオ――――ッ!!」

「前列はシオンとファーラン! 私は援護をするから、皆も回避を中心に隙を見て攻撃を入れる感じでお願い!」

「「「了解っ!」」」

集まる視線にレンが応えると、同時に始まる戦い。

ガオウは両手に槍を掲げて、迫り来る。

右の長槍で突き、左の槍で突き、再び右の長槍を振り払う。

通常攻撃にも、水刃による距離増加あり。

「ハッ!」

この連続攻撃を、シオンは機敏な動きでかわす。

「【刺水】ィィィィ!!」

右の長槍を突き出すと、水の刃が一気に伸長。

これもシオンは、ターン一つで回避する。

「【水刃円舞】!」

「【舞鳥】!」

大きな払いに合わせて荒々しく飛ぶ水刃は、後方への跳躍で回避した。

モーションの大きな【水刃円舞】によって、生まれる隙。

そこに狙いをつけたファーランが動き出そうとするが――。

「【爆水飛槍】ォォォォ!!」

「ッ!!」

左の中槍を掲げると、水の大槍が生まれ飛来。

炸裂して大量の飛沫を巻き上げる。

「あっぶねえ!」

この一撃を足を引くことで回避していたファーランは、安堵の息をつく。

「槍はどっちもスキル持ち武器。二槍流だからこその連打と隙の少なさが強みね」

荒々しく爆ぜる水を使い、怒涛の攻撃を仕掛ける暴れ者。

それがガオウの戦い方だ。

「【鶏行歩】!」

そんな怒涛の攻勢を縫うようにして、シオンが踏み込んでいく。

「【気功突拳】!」

さらにそこへファーランも続く。

「【震脚】【覇道突拳】!」

「喰らうかァァァッ!!」

気をまとった一撃を立て続けに放つが、思わぬ機敏さでこれをかわすガオウ。

「姉弟子!」

「任せなっ! 【纏絲勁】!」

しかしファーランが続けざまに払う手刀が放つ、気の波紋まではかわせない。

「くっ!」

これをガオウが防御したところで、二人は同時に踏み込み掌底を突き出す。

「【錬気発生】!」

「【気功破衝】!」

「グオオオオオオ――――ッ!!」

二人がかりで放つ気砲が砂ぼこりを巻き上げ、ガオウを転がした。

前衛二人の見事な連携で、生まれた隙。

「チャンスよ! 【フレアストライク】!」

「【サンダーブラストアロー】!」

「【吹雪の白弾】!」

レンの言葉に、即座に同行組も攻撃を叩き込む。

「【水壁】ィィィィッ!」

しかしガオウがとっさに生みだした水のヴェールが、レンたちの攻撃を大幅に減衰。

ダメージは僅少。

ガオウは黒の籠手をまとった腕を降り下ろし反撃に移る。

「【天重落涙】!」

「「「ッ!!」」」

レンたちの頭上に現れたのは、巨大な水球。

大型車サイズの水の塊が、真っすぐ落下し炸裂する。

生まれた大量の水弾はまるで爆発したかのように弾け飛び、「ダダダダ」と打撃のような音を立てて直撃。

ダメージと共にバランスを崩す。

「喰らェェェェ! 【刺水】ッ!!」

「マズっ!!」

しぶきを上げながら迫るガオウが放つのは、必殺の刺突。

その狙いは、後衛の先頭にいたレンだ。

どうにか体勢を立て直しはしたものの、後衛の代表職と言える魔導士へ放たれる近接戦士の刺突。

最悪の状況にさすがに慌てる同行組。しかし。

「――ここっ!!」

『突き』の攻撃範囲は、スキルで多少広くなろうとも基本は『点』

これまでメイやツバメが時に足の動き一つ、時に首の傾け一つでかわしてきたのを見ているレンは、これをしっかり引き付けサイドステップで回避。

そのまま華麗に一回転して、杖を向けると――。

「【フレアストライク】!」

「グアアアアア――ッ!!」

炎砲弾の炸裂によって、ガオウは大きく吹き飛ばされて転がる。

「出た……! 闇の使徒長のゼロ距離爆炎魔法だ!」

「誰が使徒長よ! まだまだ、反撃はここから――――っ!」

ツッコミを入れつつもレンは【常闇の眼帯】を外し、掲げた【ヘクセンナハト】を強く振り下ろす。

「こっちは氷で返させてもらうわ! 【氷塊落とし】!」

【ヘクセンナハト】の魔法効果範囲向上によって、頭上に生まれる氷塊のサイズは大きく上昇。

二階建ての一軒家ほどもある巨大な氷塊が、中級魔法威力を上げる【眼帯】の効果によってなんと四つ。

落ちてガオウを押しつぶす。

草原に突き刺さる四つの巨大な氷塊はぶつかり合って砕け、粉砕して消えていく。

「すげえ……」

やや使いどころの難しい魔法を、究極の大魔法のようにしてしまうレンに、呆然とする同行組。

ガオウのHPは3割近く減少した。

「やるじゃねえか魔導士! 【震脚】!」

体勢を立て直しているガオウに向け、距離を詰めるファーラン。

しかしガオウの立ち直りの方が、わずかに早い。

「【水刃円舞】!」

右腕に持った長槍の振り回しが生んだ鋭い水刃は、容赦なくファーランに迫る。

「姉弟子! 【鶏行歩】【化勁】!」

後を追う形で踏み込んで来たシオンは、気による払いで水刃の軌道をそらす。

こうなってしまえば一転、硬直する二者に挟まれ自由なのはファーランのみ。

「ありがとよシオン! 【爆震脚】【青帝拳・昇根】!」

衝撃の波紋が走るほど強い踏み込みから放つは、強烈な気による突き上げ。

「ガアアアアア――――ッ!!」

その勢いはすさまじく、ガオウは空へと突き上げられた。

「【飛天の矢】!」

「【氷閃光】!」

すかさず続く同行組の対空攻撃が刺さる。

そして見事な連携の最後を飾るのはレン。

【宵闇の包帯】を取り、【ヘクセンナハト】を落ちたガオウに向ける。

「【誘導弾】【ファイアボルト】!」

「「「うおおっ!?」」」

その光景に思わず声を上げる同行組。

炎弾はその大きさを『弾丸から銛』ほどに変えた。

放たれた30を越える炎の銛は、流星群のように炎の尾を引き飛んでいく。

それは回避など不可能なほどに、猛烈な広範囲攻撃。

視界を焼くほどの炎弾が、【誘導】によって軌道を湾曲して突き刺さる。

「グアアアアアア――――ッ!!」

こうして一連のコンビネーションは、ガオウのHPを残り5割強というところまで減少させた。

「範囲が広がるだけでも充分面白い戦いができるわね、この杖……いいわ!」

「さすがだ……」

この一撃に、黒装備の少女が目を奪われる。

「見事だレン殿!」

「やるじゃねえか魔導士!」

レンのフォローに、シオンとファーランも振り返って笑う。

「あの二人にここまで初見で合わせるって、使徒長ちゃんやっぱすげえわ」

「魔導士はレンちゃんについてきて正解だな!」

「くくく、勉強になりますねぇ」

「前衛NPC二人の援護ってなかなかないけど。メイとツバメのコンビネーションに比べれば、余裕がある方よ」

シオンとファーランの一騎打ちをしっかりと『見届けた』ことで、二人のスキルは頭に入っている。

どうかしている動きの野生児と、見えなくなるほど速いアサシンの援護に比べれば、分かりやすいくらいだ。

「でも、勝負はここからよ」

しかしガオウにしても、ここまでは肩慣らし。

「コォォォォォォ……!」

湯気が立つほどの呼気と共に、その目を強烈に赤く輝かせた。