軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

606.始まる戦乱

「隣国へ狂化兵が踏み込めば……和平など露と消えてしまう」

鳳国の北方、隣国へとつながる平原にたどり着いたメイたち。

シオンは現状を語る。

「大きく強化された狂兵たちは和平締結に望む隣国を、王と天子様ごと蹂躙するだろう」

それは始まったジュンシーとの合戦のルールを説明するもの。

「要は侵攻する鳳国軍を、最終ラインにたどり着かせないことが求められるのね」

合戦クエストの基本はラインの防衛になるようだ。

「規模はファーランの反乱を大きく上回ってるよな」

「それどころか敵の中に将軍までいるとか、おそらくファーランも出てくるんだろ?」

「とんでもないクエストになったな……!」

戦いたくて仕方ないプレイヤーたちは、ワクワクを隠せない。

敵は一国レベルの大軍。

そんな中、敵兵の進行を抑えつつ将軍を打倒してジュンシーに勝利するのが目的だ。

本来ならNPCを配置して防衛させるというクエストになるのだが、そこが柔軟なプレイヤーに代わるのは幸運といえるだろう。

「それでは大将! お言葉を!」

見える砂ぼこりは、迫る鳳国軍のもの。

参戦プレイヤーたちの呼び声に、メイが一歩前に出る。

「鳳の街を守るために、皆さんの力を貸してくださいっ!」

そしてブンッ! と勢いよく頭を上げた。

「何卒、よろしくお願いいたしますっ!」

「「「おおおおおお――――っ!」」」

「ようやく、長き戦いの歴史が終わりを迎えようとしているんだ。冒険者たちよ――――よろしく頼む!」

「「「うおおおおおおおお――――っ!!」」」

シオンの懇願にも似た叫びに、始まる合戦。

迫るジュンシー陣営と、メイ陣営が広大な草原にてぶつかり合う。

今や遅しと待ちわびていたプレイヤーたちは、怒涛の勢いで敵軍の撃破に駆け出すが、その動きは冷静だ。

「レベルに自信がないやつらは、チームを組んで陣形を維持して戦え!」

「各隊のリーダー格は装備が違うはずだ! ある程度レベル高いやつが率先していけ!」

将軍にはメイたちがぶつかり、ラインを目指す兵たちを参戦勢が叩くという状況を狙って動く。

パーティの展開は、素晴らしいまでにスムーズだ。

「それではいきますっ!」

真正面から迫る敵兵の一団に、メイはさっそくあいさつ代わりの一撃を叩き込みにいく。

「【ソードバッシュ】!」

「「「ウワァァァァァァァァ――――ッ!!」」」

駆けていく衝撃波で、敵兵団をまとめて吹き飛ばす。

「【スプレッドウィップ】!」

「【ファイアボール】!」

「【エーテルキャノン】!」

衝撃波の範囲から逃れた敵兵を、すかさず参戦プレイヤーたちが打破。

敵の攻撃が始まる前に叩くことで、反撃もなし。

左右に見えた二つの中隊に、今度はレンも武器を構える。

すると参戦プレイヤーたちが、とっさに『道』を開く。

「【魔砲術】【フレアバースト】!」

「「「ギャアアアアアアア――――ッ!!」」」

放つ範囲攻撃が、挟撃を仕掛けてくるはずだった敵部隊を先行して打倒。

「【ショートダッシュ】【旋回斧】!」

「【斬空刀】!」

しぶとく隙間を抜けて来た残存兵を、二人組の戦士が片付ける。

その戦いぶりはなかなかのもので、滑り出しは上々だ。

「これこれ! これだよ!」

「こういうのを待ってたんだ!」

真正面からの激しいぶつかり合いに、熱くなる参戦プレイヤーたち。

左右に展開したプレイヤーたちも、部隊長に向けて動く者と一般兵の進行を止める者でしっかり別れ、各自の役割を見事に遂行している。

メイたちが中心になると理解しているからこその、安定した布陣。

四人は一気に草原を駆け抜け、敵将軍を探して進む。すると――。

「あれって……!」

【遠視】によってその姿を見つけたメイが、不意に足を止める。

草原の中、まるで待ち構えていたかのようにたたずんでいたのは、白い髪にピンクの髪束が目印のファーラン。

「姉弟子……」

自然とシオンが、向かい合う。

顔を上げたファーランは、その目を赤く輝かせていた。

「……私に任せてもらえないか」

そう提案したのはシオン。

「どうしますか? ここで戦いを待つというのは少し、厳しい状況のようにも思いますが……」

これは一対一での戦いの示唆。

シオンの戦いを見守ればその間、敵の侵攻を許すことになる。

とはいえここで任せっきりにすれば、敗戦してしまうかもしれない。

悩ましい展開。

「……私が残るわ」

そう言ったのはレンだった。

「このマッチアップを放って行くっていうのはさすがに気がかりだし、何かしらのフォローや助けが必要になるかもしれない。少し考えてることもあってね、それを確認してから進みたいのよ」

「分かりました」

「先に行ってるね!」

三人はうなずき合い、メイとツバメは先行。

レンと、レンの選択の行く末が見たいプレイヤーがわずかにこの場に残る。

若干、黒い衣装を着た人が多い。

「……寄こせ、みんな寄こせェェェェ!!」

咆哮と共に、シオンに向け駆け出すファーラン。

速い跳躍から繰り出す蹴りを、シオンが右腕で受ける。

弾かれ合う両者、三度目の姉妹弟子対決が始まった。

「【鶏行歩】! 【気功突拳】!」

腰を落とし、大きく速い一歩で踏み込むシオン。

気をまとった拳打をファーランは右足を大きく引くことでかわし、そのまま蹴り上げる。

「ッ!!」

これを早いバックステップで回避。

「【震脚】! 【覇道突拳】!」

踏みつけた大きな一歩が地面を揺らし、放つは高速の拳。

「ッ!!」

これをシオンは身体を傾けることでかわすが、駆け抜ける衝撃波に弾かれた。

その威力は、前回対戦時の威力を大きく上回っている。

「【纏絲勁】!」

ファーランが真横に払った手刀は、気の刃を生み出す。

迫る気刃が、一直線にシオンに迫る。

「【化勁】!」

これをシオンは、払いのけるスキルで天へ弾く。

「【錬気発生】」

そのまま【鶏行歩】で距離を詰め、放つは掌底からの気砲。

だが斜め後方への跳躍で、これをかわしたファーラン。

二人はここで向かい合う。

「【鳳火八卦掌】!」

「【青帝拳】!」

炸裂する真紅の気と、淡蒼の気。

互いをかすめ、後方へと駆け抜けていく。

「……寄こせ……寄こせよォォォォ!!」

「これが、姉弟子の新たな力……っ!」

青龍の加護を得たファーランはやはり、以前とは一味違うようだ。

力量も五分以上に高く、どちらが勝っても全くおかしくない。

「……加勢、しなくていいのか?」

ただ見守るだけの状況が、正解とは限らない。

それゆえに聞こえてきたつぶやき。

その言葉を前に、レンは悩み出すのだった。