軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

601.初めてのお使い

鳳国将軍フェイ・リンは無事、白虎の加護を受けることに成功。

メイたちは新たなクエストを探して、朱剣城を探索する。

「君たちに一つ、任務を頼みたい」

そこにやって来たのはなんと、国王だった。

「なんでしょうかっ」

一国の王が出てくるクエストにも、メイはさっそく笑顔で応える。

すると王は、静かにその任務を語り出す。

「今、鳳の街では甘藷点心が流行っているのだという。それを30ほど買い付けてきて欲しい」

「王様直々なのに、シンプルなお使いクエストね」

「これぞまさにお使いです」

「なんだなんだ!? 城下の話をしているのかっ!?」

するとそこに、天子が駆けつけてきた。

「甘藷点心は女官たちから聞いたことがある! 余も食べたいぞ!」

「そうだろうな。そこでだ、買い付けには天子と共に行ってもらいたい」

「うむ! 頼んだぞ! …………父上、今なんと?」

さすがに聞き間違いだろうと、怪訝な顔でたずねる天子。

「買い付けには、天子と共に行ってもらいたい」

「それは……朱剣城を出て、街に行っても良いということか!?」

「その通りだ。隣国との長い長い戦いが終わり10年……そろそろ城の中で生きるだけではなく、外の世界を知るべきだと、そう思ってな」

「なんということだ!」

王の言葉に、天子は目を輝かせる。

「メイたちが一緒なら大丈夫だ! あとはシオン! お主も街に詳しかったはずだな!? 先導は任せるぞ!」

ちょうどそこにやってきたシオンにも、天子が声をかける。

「お供いたします。最も、メイ殿たちが一緒であれば私など不要かもしれませんが」

「ほう、四神の加護を持つ武術家にそうまで言わせるとは。やはり冒険者殿は頼りになる」

「さあいこう! メイっ!」

目を輝かせる天子はメイの手をつかむと、居ても立ってもいられず走り出す。

「可愛いですねぇ」

「姉妹みたいでいいわね」

「だが、さすがにその格好は目立つ。街に溶け込むよう着替えてからだ」

そう言って笑う王。

そんな天子たちの姿を、柱の影からのぞく怪しい影があったことには、さすがに誰も気づかなかった。

「お、おおおおーっ! ついに鳳の街にコソコソすることなくやってきたぞー!」

「きたぞー!」

天子はメイの手を引いたまま、大通りの店を行ったり来たり。

「本来こういう状況だと神経を使うんでしょうけど、メイが一緒だと安心できるわね」

「はい。素晴らしい光景です……っ」

おそらく、お使いという名の護衛クエスト。

手をつないで街を駆けるメイと天子の姿に、ツバメは目を細める。

点心店の蒸籠から大量の水蒸気を上げるパフォーマンスに、並んで「うわはーっ!」となる二人には、レンもさすがに笑ってしまった。

「良い光景だな」

そんな天子たちを見て、シオンがつぶやいた。

「私が修行を始めた頃は、隣国との戦いはまだ終わってはいなかった。四神に守られた国とはいえ、街は荒れていたんだ。そして姉弟子は危険な区画から逃げるように道場にやって来て、その才覚を開花させていった」

ここにきて語られる、ファーランの情報。

「一緒に寝坊をして怒られた後、抜きになった夕食を私の分も盗み出しきてくれたのが姉弟子だ」

「……そう聞くと、悪い人とは言い切れない感じがしますね」

「姉弟子は、戦乱による荒廃からの復興に乗り遅れてしまった者たちのリーダーのようになっていたのではないかと思うんだ。物がない生活をしてきたのなら、強い野心を持つのもおかしいことではないだろう」

「その強さとたくましさが、ならず者たちには風格に見えたのかもしれないわね」

「私は運良く住民の結束が強い区画に住み、街に助けられた。その恩を返したいと衛兵になったのだが……」

「そこで二人の立ち位置が『対』になったのですね」

「……私が将軍の一人となれば、鳳をもっと平和でにぎやかな街にすることができるのだろうか」

迷いを見せるシオンに続き、街のあれこれに目を輝かせる天子とメイを眺めながら歩を進める。

たどり着いた点心店は、なかなか豪華な外装をしていた。

「甘藷点心を30個ほどもらうぞ!」

天子は堂々と買い物を済ませ得意げにした後、「そうだ!」と手を叩いた。

「ここで少し、いただいてしまおう!」

「いいと思いますっ!」

「ないすあいでぃあ!」とハイタッチのメイと天子。

「これはお行儀の悪い天子様ね」

そう言いながら、レンもかぶりつく。

「うまい!」

「本当だな」

「このタイミングで鳳に来て、本当に良かったです」

店の前に五人横並びで、さつまいもを使った点心にかぶりつく。

この光景は間違いなく、飲食システム導入の恩恵だ。

そして素晴らしい愛らしさを誇る天子と、元気・かわいい・野生的なメイがそろえば当然、視線だって集まってくる。

「あ、メイちゃんだ」

「お、おい……一緒にいるの鳳の天子じゃないか?」

「ウソだろ!? 今まで『可愛いけど声もかけられない』ってことで、有名だった天子ちゃんと買い食いとか、どんなクエストの流れなんだ!?」

「ていうかメイちゃんと天子ちゃんって、考えうる限り最高の組み合わせなんだが!!」

「何気にシオンも一緒だし、全然流れが想像つかん……」

それを見つけたプレイヤーたちも、メイと天子に歓喜の声を上げる。

そして大きな肉まんにかぶりつく姿に、「おお……」と感嘆。

「買い物を成し遂げるだけでなく、その場で点心を楽しんでしまうとは……余も成長したな!」

満足そうに笑う天子。

見事に目的を達成し、五人は朱剣城へと戻る道へ踏み出す。

「……さて、何かが起こるならこの辺りからだと思うけど」

「きたっ!」

最初に異変に気付いたのは、やはりメイ。

賑やかな街だが、それを考慮してもなお騒がしい足音にすぐさま視線を向ける。

メイたちのもとに駆け込んで来るのは、一頭のバク。

大型のクマほどもある、長い口を持った四足獣が跳び込んできたところでさらに――。

「来い! 牛頭!」

呼び出された二足歩行の牛が、鉄器を持って駆け込んでくる。

そしてそのまま、バクと正面からぶつかった。

弾かれ合う両者。

現れる黒の衣装の男たち、そしてそれに対抗するように現れた真紅の者たち。

「どういうことでしょうか」

「二つの勢力が天子を見つけて、奪い合いを始めたってところかしら? まあとにかく、私たちがすべきことは一つよ」

「その通りですね」

メイたちは、そろって武器を抜き払う。

そして怪しい者たちに向けて、堂々と宣言する。

「天子ちゃんは、わたしたちが守りますっ!」