軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

600.白虎の力

「さあ、試練の始まりだ! 我が攻勢を乗り越えてみせろ!」

白虎はその大きな身体を、俊敏に動かし迫り来る。

「【加速】」

飛び掛かりと共に放つ爪の一撃は、先頭にいたツバメがその下を高速ですり抜けた。

着地からの振り返り。

その隙を狙って踏み込んだのはフェイ・リンだ。

手にした紋様入りの鉄扇を振り払う。

これを回避した白虎に、返す刃からさらに大きく踏み込んでの振り降ろし。

「【閃鉄】!」

駆けていく空刃を、白虎は側方へ転がることで回避する。

「なかなかやるわね! 【連続魔法】【誘導弾】【フリーズボルト】!」

レンは左手の松明を気にしつつ、魔法で加勢。

すると四発目の氷弾がかすめ、わずかにダメージを与えた。

見た限り、そこまで驚異的な能力を有しているようには見えないが――。

「グォォォォォォ――――ッ!!」

「「「ッ!!」」」

ここで最初の仕掛けを施してくる。

なんと咆哮と共にピンポイントで吹かせた風が、レンとシオンが持つ松明の灯を消した。

「ウソでしょ!?」

驚くレンの声に応えたのは、全面に走る金鉱脈の輝き。

これで視界は確保されるが――。

「点いたり消えたり、ままなりません……っ」

気まぐれについては消える、壊れかけの蛍光灯のような状態。

視界は間隔の長いストロボ。

一コマごとに近づいてくる白虎に、メイが相対するが――。

「あれっ?」

ここで白虎はメイをまさかのスルーで、レンに急接近。

そしてここで再び、真っ暗になった。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

イチかバチかの横っ飛びローリング。

次の瞬間、鳴り渡る猛烈なサウンドエフェクト。

照明が点くと、さっきまで立っていた場所には深い深い爪跡が刻まれていた。

「あっぶな!」

その威力に、高い火力を確信。

戦いに強烈な緊張感が走り出す。

再び消える金鉱脈の輝き。

白虎が駆け出した方向にいたのはシオンだが――。

「ツバメちゃん! そっちに向かってるよ!」

照明が復活した瞬間、すでに白虎は目前。

シオンに向かうと見せかけての、ターゲット変更作戦だ。

「【加速】!」

しかしメイの早い警告が活きる。

ツバメは即座の高速移動で、喰らいつきを回避することに成功。

消える金鉱脈の輝きの中、メイは【夜目】で白虎の動きに集中する。

「次はレンちゃん! 左からくるよ!」

「それならこれでどうっ! 【フレアストライク】!」

この恐ろしい仕掛けの中での戦い。

「ないすーっ!」

「いい指示、助かったわ!」

メイの指示によって、カウンターを叩き込むことに成功。

白虎は転がり、1割強ほどのダメージを受けた。

「このクエスト、なかなかスリリングね」

「この爪の威力に、視界のオンオフは緊張感あります」

体勢を立て直した白虎。

照明が活きているうちに、攻勢に出たのはシオン。

「【鶏行歩】【気功突拳】!」

「【ファイアボルト】!」

白虎が飛び下がったのを見て、続けざまの魔法で追撃。

しかし白虎が前足で地を叩くと、黄金の壁が突きあがって魔法を弾いた。

さらに小さな跳躍から両前足を強く着くと、付近の金鉱脈が輝き一斉に刃となってせり上がる。

「っ!」

レンが慌てて逃げたところで再度、金鉱脈の輝きが消えた。

「このタイミングで……っ!」

「ツバメちゃん、そっちに向かってるよ! 跳んだ!」

「紫電――ッ!?」

対空カウンターを狙うツバメだが、白虎はそのまま頭上を跳び越えていく。

狙いは、背後にいたのはフェイ・リンだ。

「させるかっ!」

フェイ・リンはHPを2割減らされたものの、鉄扇で爪の攻撃をしっかり防御。

するとそこに、シオンが割り込んだ。

「「【気功突拳】!」

「【閃鉄】!」

続く連携が、白虎をかすめる。

反撃は、両前足の強烈な叩きつけ。

足元と天井が、同時に輝き出す。

「【装備変更】! とっつげきー!」

「「ッ!?」」

【鹿角】メイの突撃が、シオンとフェイ・リンをまとめて弾き飛ばす。

直後上下から突き出した金鉱脈の刃が、二つの剣山を重ね合わせたような恐ろしい光景を生み出した。

「さすがメイさんです!」

メイはこの大技から2人を同時に助け出し、さらに自分自身も無傷で危機を回避。

そして、時が来る。

再度おとずれた暗闇の中、白虎はメイを狙う。

聞こえる荒々しい足音。

五人の中で唯一、暗闇の中でもしっかり周りが見えているメイは、白虎に向き直る。

「――――ここっ!」

高い飛び掛かりから放つ爪の一撃など、メイにはサービスも同然だ

「とっつげきー!」

暗闇が晴れた瞬間、放たれるメイのパリィ。

それは白虎の強烈な一撃を、見事に弾き返した。

誰もが状況把握に時間を取られる中、初撃を叩き込んだのはフェイ・リン。

「【閃鉄】!」

空刃が白虎を斬り付け、バランスを崩したところにシオンが続く。

「【錬気発生】!」

これが決まり、弾かれたところに駆けつけるのはツバメ。

「【電光石火】!」

そしてここまで来れば、もちろんレンも照準をつけ終えている。

「【フリーズストライク】!」

氷砲弾が炸裂し、転がる白虎。

メイから始まったカウンターによって、白虎のHPはなんと5割も消しとんだ。

「グォォォォォォ――――ッ!! まだまだ! 来い、我が眷族たち!」

体勢を立て直し、叫ぶ白虎。

現れたのは、柴犬くらいの大きさの子トラたち。

「わっ! かわいいーっ!」

「確かに可愛いです」

5頭の子トラたちはそろって前足を上げ、そのまま地面を叩く。

ぽふっと叩いた地面から、五本の鉱脈刃が突きあがる。

「この子たちもこの技使えるの!?」

「うわ、うわ、うわわわわっ!」

並んだ小トラたちが連続で地面を叩けば、始まる鉱脈刃の嵐。

その中を、白虎が駆けてくる。

「ッ!! 【加速】!」

飛び掛かり攻撃をかわす。

すると白虎は振り返り際に、右前足で空を薙ぐ。

「【リブースト】!」

繰り出される衝撃の刃。

さらに左前足での振り上げが続き、後ろ足で立ち上がった白虎は両の前足を降り下ろす。

猛烈な衝撃刃が、嵐のように吹き荒れる。

「「っ!」」

肩を弾いた刃でツバメがダメージを取られ、レンも腕を斬られて転がる。

さらに子トラたちは、両前足でパシパシ地面を叩きまくる。

「うわわわわーっ!」

地面から、天井からすさまじい勢いで突き出す金の刃。

メイはこれを走ってかわす。

こうしてプレイヤーが回避に集中しなくてはいけない状況を作ったところで、白虎の狙いはフェイ・リンへ。

金刃の山の中を駆け抜け、そのまま飛び掛かりに行く。

「【錬気発生】!」

しかし最高強化のシオンが放つ気の一撃で白虎をけん制、フェイ・リンを助けてみせた。

「すまない!」

すると余裕ができたフェイ・リンは、鉄扇を高く掲げる。

「【竜巻扇】!」

手にした扇を広げて、大きく払う。

すると内側から外側へと広がる突風が、小トラたちをコロコロと転がした。

「なんかすごく可愛い絵面だけど、いい攻撃だわ!」

「すごく可愛いですが、助かります!」

「可愛いし、ないすだよーっ!」

小トラたちが転倒すれば、敵の攻撃は一気に緩くなる。

「高速【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」

放つ速い炎弾を、白虎がかわしたところに続くのはツバメ。

「【加速】【リブースト】! 【電光石火】!」

高速の斬り抜けから、反転しての一撃で白虎を斬り飛ばす。

追撃を狙う五人。

しかし【受け身】で、早い体勢の立て直しを図った白虎。

残りHPがわずかになったところで放つのは、子トラとの合体技だ。

「きます……っ!」

後ろ足で立ち上がった子トラたちが、一斉に前足を地に叩きつける。

そしてその後方では、黄金の輝きを灯した白虎の右前足が強く地面を叩いた。

それが合図。

洞穴内全ての金鉱脈が、まばゆいほどの輝きを灯す。

「いきますっ!」

果敢にも、ここで動き出したのはメイ。

「【裸足の女神】! 【バンビステップ】!」

洞窟内全ての金鉱脈が刃を突き出し、始まる猛烈な『斬撃』の波。

この空間を丸ごと『ミキサー』に変える脅威の一撃が、レンたちに届こうとしたその瞬間。

閃光のように速い【鹿角】モードのメイは、迫る金の刃の波の中を一直線。

「【フルスイング】だぁぁぁぁ――っ!!」

雷光のような速さで距離を詰めて放った一撃が、白虎を弾き飛ばした。

その凄まじい威力に、白虎はそのまま壁を転がり上がって落下。

トラの敷物のような体勢になったところでHPゲージが消え去った。

「……見事だ。我が加護を受けるがいい」

白虎と小トラが並ぶと、金鉱脈が優しく輝き出した。

どうやら無事、加護を受けることができるようだ。

「シオン、そして冒険者たちよ、礼を言うぞ」

そう言って、うれしそうに笑うフェイ・リン。

「まったく世界は広いな。冒険者殿もこれほどまでに強いとは……君たちはどこかの国の武将ではないのか?」

そんな問いに『ジャングル』という言葉が浮かぶも、無言を貫くレンとツバメなのだった。

「……加護を身に付けたようだな」

待ち受けていたガオウの言葉に、静かにうなずくフェイ・リン。

「ならば、貴様の力を見せてみろ」

「望むところだ! ……だがまず、腹ごしらえからだ!」

早くも涎がたれそうになっているフェイ・リンと、臨戦態勢で待っていたガオウ。

二人の将軍は、王宮内へと足早に消えていく。

「困ったものですね。ほどほどにしておいてくださいよ、食事も試合も」

そう言って、苦笑いを浮かべるジュンシー。

「ありがとうございました。冒険者の皆様も話に聞いていた以上の優秀さのようです。このような才媛がそろうことは百年、いえ千年に一度の奇跡でしょう」

そう言って、いつもながらの穏やかな笑みを見せたのだった。