軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

590.修行の終わり

「これでこのクエストもクリア目前ね」

「斉天大聖さん、強敵でした」

「バジリスクちゃんも、ありがとー!」

石化光線で大きなチャンスを作り出したバジリスクを抱きかかえて、メイは歓喜する。

『得意げな顔をしたまま』帰っていくバジリスクに、手を振るレンとツバメ。

【友達バングル】の効果は、なかなか面白いことになりそうだ。

「これで朱雀のもとに戻ることができる」

四人は岩山を登り、再び朱雀のいる樹木の前へ。

「驚きました。我ら四神ですら慄く力を持つあの猿を追い払ってみせるとは……素晴らしい能力をお持ちのようです」

「ありがとうございますっ!」

まばゆい炎をあげながら語る朱雀に、メイはうれしそうに笑う。

「……この木は、耐火能力が高そうです」

「ふふ、今そこに目をつける?」

一方ツバメは、炎にどれだけ触れても焦げ一つ付かない木をものめずらしそうに眺めていた。

興味深そうに木の表面を見つめるツバメに、レンは思わず笑ってしまう。

「加護を与えることは容易だが、その際に生まれる隙を突かれてはひとたまりもなかった。だがこれでもう安心だ。それではシオンよ、そこにひざまずくがよい」

「はい」

シオンが言われるままその場にひざまずくと、朱雀が大きく羽ばたいた。

途端にまばゆい光が、ゆっくりと広がっていく。

シオンの足もとから天高く噴き上がった炎が空を焼き、火の粉が雨のように舞い落ちる。

「すごーい……!」

「覚醒の演出って感じがするわね」

「見とれてしまいます」

その美しい光景に、思わず感嘆の息をつくメイたち。

「これが……四神の加護」

炎と気が融合したものが、ごうごうとわき上がる。

加護を得たシオンは、自身の力を確かめるように拳を握った。

その拳に生まれる炎は力強く、それでいて穏やか。

強い力を身に付けたことが、容易に見て取れる。

「それじゃ、帰りましょうか」

「帰りましょうっ!」

こうして朱雀の加護を受けたシオンはさらに力を付け、四人は老子の元に戻ることにしたのだった。

「……ほう、見違えたぞ。無事に四神の加護を得られた様じゃな」

「はい」

道場に戻ると、老子はその目を大きく見開いた。

「新たな力、ここに少し見せてはくれぬか」

老子がそう言うと、シオンは静かに気を発する。

炎と共に放たれる気の熱に、老子は満足そうな笑みを見せた。

もはやシオンの気の力は、最初に出会った時とは別人のようだ。

「見事、全ての修行をやりとげたようじゃな。もはやこれ以上ないレベルの武術家になったと言えるじゃろう」

たたずむシオンの姿を見ながら、深くうなずく老子。

間違いなく、最高評価だ。

「……シオンは優しく、多くを望まない。穏やかで、脚光を求めず、無闇に力を誇示することもない。ただそれ故に、高い才能を持ちながらもそれを発揮しきれていなかったのじゃ」

これまでのことを思い出しながら、老子は静かに語る。

「かつてこの道場で修行していた時も、必要以上の力を付けるということはなかった。ファーランとシオンはどちらも非常に優れた才能を持っておるが、そこが大きな違いじゃろうな」

「本当に先輩後輩のような感じなのですね」

「これだけの才を持つ者が二人同時に現れるとは、驚いたものじゃのォ」

そう言って老子は不意に目を閉じた。そして。

「……あの者は、静かに暮らしておるのじゃろうか」

不意に声のトーンを落として、そうつぶやいた。

「今から25年ほど前に現れた一人の若き弟子。かの者の才能は長きを生きるワシですら驚くほどじゃった。しかし同時に、恐ろしいほど深く強い野心も秘めていた……よって四神の話などは隠したまま卒業としたのじゃが……もしかの者が今も欲望のままに生きておれば……」

「急に雲行きの怪しい話が出てきたわ」

「そーなの?」

「ここでこのような話をし始めるということは、どこかにそれを受けて始まるクエストなんかがあるからだと考えられます」

「なるほどー」

こくこくとうなずくメイ。

レンとツバメは、しっかりフラグを立ててきた老子に苦笑い。

「礼を言うぞ。良い心がけと才を持つシオンがここまで大きく成長できたのは、間違いなくお主たちのおかげじゃ。昨今は鳳国の街の荒れ方に嫌な予感を覚えていたのじゃが……これなら少しは安心できるじゃろう。それどころか今のシオンやお主たちなら、歴史に名が残すような活躍をするかもしれぬな」

そう言って老子は笑う。

「老子、お世話になりました」

新たに身に付けた力を十分に確かめたシオンは深く頭を下げ、老子も満足そうにうなずいた。

「また、いつでも来るがよい。そうじゃ、これはシオンの修行を助けてくれたお礼じゃ。持っていくがいい」

【進化の秘石】:レベル要素のあるスキルの段階を、一つ上げることが可能。

「ありがとうございますっ!」

「これは良い物をもらえたわね」

「どう使うか、考えるだけでもワクワクしますね」

こうして修行クエストを無事に終えたメイたち。

シオンの育成は、最高の成長を達成して終了を迎える形となった。

そして秘仙郷を出た四人は再び、鳳の街へと帰っていくのだった。