軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

589.友達参上!

「キキッ! なかなかやるじゃねえか! だが勝負はここからだぜッ!」

叫んで駆け出す斉天大聖。

「【連続魔法】【誘導弾】【フリーズボルト】!」

「【変化】!」

これを豹に化け、軽々かわして跳躍。

空中で巨大なワニとなり、そのままボディプレスをしかけてきた。

「「「ッ!!」」」

とっさに大きく下がる前衛三人。

すると斉天大聖は、胸元が膨れ上がるほど大きく息を吸い込んだ。

放つ呼気が、暴風と化す。

「「「ッ!!」」」

その威力はすさまじく、【耐久】の高いメイ以外は転倒を取られるほど。

「【如意棒】!」

突きから伸びるその一撃が、メイを狙う。

しかし多少バランスを崩していただけのメイには、回避も難しくない。

足を一歩動かすことで、迫る如意棒をかわす。

すると再び、斉天大聖は大きく息を吸った。

「もう一回来るっ! おおきくなーれ!」

今回は暴風後の狙いがメイだったから良かったが、それ以外なら一撃もらうことになる。

【豊樹の種】をまき、【密林の巫女】で一気に生やす小さな密林。

生まれた木々は密度が高く。風を寄せ付けない。

密林は狙い通り、吹き付ける強風の対策となった。

そして風が、弱まった瞬間。

「【ラビットジャンプ】! 【装備変更】!」

ジャンプ一つで密林を越え、装備を【狐耳】に変更。

「【裸足の女神】!」

これ以上の『風』攻撃をさせまいと、一気に距離を詰める。

突然目前にすべり込んできたメイに、斉天大聖は反応し切れない。

「【キャットパンチ】!」

青い炎をまとった猫パンチが決まる。

斉天大聖も【如意棒】による反撃に出るが、振り上げをかわされ二発。

降り下ろしをかわされ二発。

さらに振り払いをしゃがみでかわして、踏み込みから三連発。

「からの――【カンガルーキック】!」

シンプルなジャンプ前蹴りは防御崩しにも使えるが、同時に相手をフラつかせる効果がある。

青の炎を乗せた蹴りが火の粉を上げ、斉天大聖のバランスをわずかに崩した。

「ここだ……っ!」

そこに跳び込んで来たのはシオン。

「【気功破掌】!」

気を込めた一撃が決まり、斉天大聖に一割ほどのダメージを与えた。

「ないすーっ!」

「いいアシストするわね!」

楽しそうなメイの声に、思わず笑みがこぼれるレン。

「【フリーズブラスト】!」

いかに回避が上手とはいえ、起き上がったところに氷嵐が巻き起これば逃げ切れない。

レンの追撃は見事な選択だ。

「キキッ!」

しかしここで斉天大聖は、なぜかその場で蜻蛉返り。

「瞬間移動!?」

次の瞬間には、魔法攻撃の範囲外にいた。

【蜻蛉返り】は予備動作が大きいものの、俊敏な斉天大聖はモーション自体が早い。

レンの放った氷嵐を回避し、距離を取ることに成功した。

「攻撃も防御も変幻自在です」

「これはすごいわね」

距離を取った斉天大聖のHPは、6割を切ったところ。

「キキキキッ、やるじゃねえか!」

そう言って笑うと、不意に左腕を持ち上げた。

そして腕の毛を、まとめて引き抜く。

妙な挙動にメイたちが困惑していると、斉天大聖は抜いた自らの毛を吹き散らかす。そして。

「分身ですかっ!?」

ツバメが思わず声を上げた。

現れた三十体近い斉天大聖が、一斉に動き出す。

「【フリーズブラスト】!」

これにレンは、即座に範囲の広い魔法で足止めをかける。

しかし移動速度の速い斉天大聖たちは、氷嵐をかわして迫り来る。

三体の斉天大聖が同時に振り上げる【如意棒】

「「「伸びろ!」」」

三連の振り降ろしは、わずかに時間差あり。

そのため回避し切れず、ツバメとレンがかすめて弾かれた。

「攻撃判定ありとか、反則じゃない……っ!?」

「伸びろ【如意棒】!」

まさかの『判定持ち』分身という事態に声を上げたレンに向けて、一直線に迫る【如意棒】

これをレンはその場に伏せて回避する。

すると斉天大聖たちが、突然道を開くように左右に散った。

背後には、大きく空気を吸い込む猿の姿。

「隠れてっ!」

レンの叫び声に皆、メイの作った密林に大慌てで隠れる。

直後、猛烈な突風が一帯を駆け抜けていった。

「もうめちゃくちゃね……でも分身体にHPがないということは、おそらく何かしらの衝撃を与えれば消える仕様だわ」

分身体が攻撃判定持ちという、恐ろしいこのスキル。

その分、何かしらの判定を与えさえすれば即座に消えるものだとレンは予想。

「りょうかいですっ! 【蓄食】!」

メイは対抗するために、ここで早くも【蓄食】を発動する。

「それでは行ってきます!」

一気に【腕力】上げのバナナを使用したところで密林の前へ、さらに。

「【装備変更】! ウォオオオオオオ――――ッ!!」

【狼耳】の【遠吠え】でターゲットを自身に集中させ、迫る斉天大聖たちを待つ。

そして正面から駆けてきた猿の一団が、一斉に飛び上がったところで――。

「がおおおおおおおお――――っ!!」

その威力を大きく向上させた【雄たけび】を放つ。

ビリビリと身体を痺れさせるほどの咆哮は効果範囲も大きく、分身体をまとめて消し飛ばした。

一方最後尾から必殺の一撃を叩き込もうとしていた斉天大聖は、高く跳んだままの状態だ。

「それではいきます!」

メイが手のひらを突き上げる。

「――――誰が来てくれるかなっ!?」

すると【友達バングル】が、強く輝いた。

「ああっ!」

まばゆい光と共に現れた者の姿に、思わず声を上げる。

「バジリスクさんです!」

「これはいいところに来たわね!」

やって来たのは、大型犬ほどの体躯にトサカをつけた、トカゲの様な姿の魔獣。

飛び上がっていた斉天大聖は、そのまま5メートルほどの長さに伸長した如意棒を叩きつけにくる。

しかしバジリスクは、これをちょこまか走りで回避。

続く振り回しも、その小回りの良さで避けたところにツバメが駆け込む。

「【電光石火】!」

「【変化】!」

斉天大聖は、これをネズミになることで回避。

「【誘導弾】【連続魔法】【フリーズボルト】!」

「【変化】!」

続くレンの魔法を、ウサギになることでかわす。

見事な回避だが、ツバメとレンは最初からバジリスクのアシストが狙いだ。

次の瞬間、バジリスクの目から走る二本の光線。

連続攻撃によってわずかに体勢を崩していた斉天大聖は、光線をバク転で回避したものの完全回避には至らない。

そしてバジリスクの光線は、『完全回避以外は惨事』を招く恐怖の一撃。

かすめた光線が、斉天大聖の左脚の一部を石化した。

「相変わらず優秀ね!」

「お見事です!」

二人の言葉に、得意げな顔をするバジリスク。

「こりゃヤベェなおいっ!」

移動力を大きく下げられた斉天大聖は焦りと共に、【如意棒】を振り上げる。

「それなら、こいつで勝負だ! 叩き潰せ【如意乾坤撃】ィィィィ――ッ!!」

半ば無理やりな一撃だが、あっという間に巨大化した【如意棒】は地を叩けば衝撃波を起こすほどの一撃だ。

この状況。

本来であれば、付近にいたプレイヤーたちが一斉に『無事を祈りながら』防御か逃走かを選ぶところ。しかし。

なんとメイは、その場で腕を組んで仁王立ち。

笑みを浮かべたまま、斉天大聖の一撃を正面から受けた。

一撃でプレイヤーに驚異的な大ダメージを与える【如意乾坤撃】だが、ここで【仙桃】茶の効果が発動する。

『大ダメージの一撃を受けた際に一度だけ、アーマー効果と共に喰らったダメージを丸ごと回復する』

「メイ相手にようやく与えた大ダメージがその場で回復するって、相手がNPCじゃなかったら発狂ものね」

強敵のHP回復という地獄の展開に、苦笑いのレン。

そして斉天大聖は、大技を放ったことで硬直状態にある。

一方アーマー効果によって仁王立ちのままでいたメイは、手にした剣を高く掲げていた。

「大きくなーれ!」

【蒼樹の白剣】が【密林の巫女】によって、一気に巨大化する。

「いっくよ――っ! 【フルスイング】だああああ――――っ!!」

それは斉天大聖の【如意乾坤撃】に負けない、それこそ秘仙郷の岩山塔をそのまま武器にしたかのような大きさの一撃。

【蓄食】によって上昇した【腕力】によって振り降ろされた剣は、そのまま大地に突き刺さって地面を割り、衝撃が陽炎山一帯を駆け抜けた。

「がはああああー!」

地を転がった斉天大聖のHPゲージが吹き飛び、勝負あり。

だがその身はすでに不死に近い状態ということもあってか、消えることもなく、「お手上げだ」とその場に座り込んだ。

「へへっ、さすが秘仙郷だな。とんでもねえヤツがいたもんだ。朱雀から不老不死を奪う作戦は諦めるとするか。お前たちとの戦い、最高に楽しかったぜ! あばよ!」

そう言い残して斉天大聖は、さっさと引き上げていったのだった。