作品タイトル不明
588.vs斉天大聖
「朱雀はオレ様の獲物だ! 邪魔はさせねえぞ!」
これまで誰もたどり着いていないボスとの対峙。
現れたのは斉天大聖を名乗る、人間ほどの大きさをした金毛の猿。
二足歩行型の動物が敵になることは多いが、その装備や造形から一目で特別な存在なのだと分かる。
その迫力に、思わず息を飲むレン。
「さあ、勝負だァァァァ――ッ!!」
気合の咆哮と共に始まる戦い。
「【バンビステップ】!」
「【加速】!」
メイとツバメはすぐさま走り出し、斉天大聖のもとへ。
「【フルスイング】!」
「【電光石火】!」
降り下ろす大きな一撃を斉天大聖がかわしたところに、ツバメが高速移動攻撃を仕掛ける。
「あらよっとォ!」
これを、見事な足の運びでかわす。
「【誘導弾】【ファイアボルト】!」
ボス戦になるだろうと予想してたレンはここで、着けておいた【宵闇の包帯】を取り、30発の炎弾で斉天大聖を狙う。
「キキッ! 当たらねえぞ!」
これも素晴らしい身軽さで、見事に回避。
だが全ての回避はやはり、簡単ではない。
追撃のために動いていたツバメが、しっかりと敵を射程に抑えていた。
「【紫電】」
駆ける雷光が斉天大聖に当たり、弾ける火花。
「【フルスイング】だーっ!」
そこに駆け込んで来たのは、もちろんメイだ。
降り下ろされる剣の一撃は、派手なエフェクトと共に。しかし。
「おっとォ! あっぶねえ!」
斉天大聖は大きなバックステップでこれを回避。
「もしや、雷は無効ですか」
「高速【誘導弾】【フレアストライク】!」
驚くツバメ。
しかしメイの【フルスイング】直後を狙って放った炎砲弾が立て続けに直撃。
斉天大聖は大きく弾かれ転がった。
「アチチチッ!! なーんてなァ!」
「炎も耐性持ちなの……っ!?」
なんとダメージはゼロ。
そしてレンの予想は正解だ。
炎も雷も、実は風も効かない斉天大聖が、ここで攻勢に出る。
手にした棒で突き、突き、そして払い。
「そらっ! 伸びろ如意棒!」
「うわあっ!?」
これをバックステップでかわしたメイに、一瞬で長さ5メートルにまで『伸びた』払いが迫り来る。
その腕力はかなりのもので、砂煙が強く舞う。
突然の範囲攻撃をしゃがんでかわしたメイは、棒が戻っていくところを狙って反撃へ移る。
「それーっ!」
振り払う剣が、斉天大聖を叩かこうとしたその瞬間。
「【変化】!」
「ええっ!?」
なんとその姿を、赤いトンボに変えて回避した。
「もう一回っ!」
再び、今度はトンボを狙って放つ攻撃。
「もういっちょ【変化】!」
今度はリスになって着地して回避。
「【変化】だァ!!」
そして最後はトラ。
飛び掛かりから放つ爪の一撃は鋭い軌跡を生み、相手を引き込むほどの空気の流れを生み出す。
「おもしろーい!」
だが『四足獣の爪攻撃は、ほぼ斜め上段から降り下ろされる』と知っているメイは、速い側方への移動でかわしてみせた。
次々に姿を変える斉天大聖に、メイは目を輝かせる。
「【変化】!」
巨大な猪になった斉天大聖が放つ突撃。
これを横っ飛びでかわすと、姿を戻して振り返る。
手にした【如意棒】の払いから突き、カエルに【変化】して高く跳躍。
そして空中で元の姿に戻ってから、叩き付けを狙う。
「【如意棒】ォ!」
この一撃をバックステップでかわしたところに、再び広範囲を払う一撃。
これもかわしたメイが、距離を詰めにいこうとしたところで――。
「【如意超伸突】――ッ!!」
「「「ッ!?」」」
その突きは、高速にして強力。
爆発的な伸長を見せた【如意棒】はなんと、一瞬で岩山を貫いた。
まともに喰らっていれば岩山まで運ばれ直撃という、なかなか見られないダメージの受け方をしたことだろう。
だがこれもメイは、とっさの横っ飛びで回避していた。
するとここで、隙をうかがっていたシオンが飛び込んで行く。
「【鶏行歩】!」
腰を落とし、大きく踏み出す速歩法で勢いをつける。
「【気功突拳】!」
放った一撃は鋭く、そして強い衝撃を生み出した。
「チッ!」
舞い上がる猛烈な砂煙。
これに地を転がった斉天大聖は、慌てて体勢を整える。
「アレを避けるなんてやりやがるなァ! 来いっ! 【筋斗雲】!」
斉天大聖が跳躍すると、その足もとに飛び込んでくる一片の雲。
その速い飛行で、一気に上空へ。
そのまま筋斗雲を蹴り空中へと踊り出した斉天大聖は、空中で【如意棒】を抱えて一回転。
「こいつならどうだ! まとめて消し飛んじまえェェェェ!! 【如意乾坤撃】!!」
「え、ええええええ――――っ!?」
長さだけでなく、その大きさ自体を一気に巨大化させた【如意棒】を降り下ろす。
その大きさはもはや、ビル一棟を振り降ろすがごとく。
「【裸足の女神】っ!」
直後、巨大化【如意棒】の振り降ろしは地面に深く突き刺さった。
巻き起こる強烈な衝撃と風は範囲攻撃と化し、付近にいたツバメを襲うが――。
なんとダメージなし。
『余波』や『派生』から身を守る効果は、先のクエストで飲んだ【徳利苺】茶の効果だ。
しっかり地に足をつけた状態で、転倒を取られるようなこともなかった。
そしてそれは同時に、『隙』を突けるという事。
「メイさんたちは無事ですね【加速】【リブースト】!」
メイがシオンを抱えて逃げたのを確認したツバメは、すぐさま走り出す。
大きな一撃を放った直後の斉天大聖は、着地硬直もあり攻撃はもちろんスキルの使用もできない。
「【雷光閃火】!」
特攻から突き刺したダガーが、火花をまき散らして爆発。
「高速【フリーズストライク】!」
弾け飛んだところに放たれた即座の追撃が直撃。
体勢を立て直そうとする斉天大聖に起こる、予期せぬ展開。
「なんだとォォォォ――ッ!?」
『攻撃魔法を炸裂させ二段階攻撃』にする効果を与える【大紅袍】茶によって斉天大聖を大きく転がし、ついに3割強のダメージを与えることに成功した。
反撃の狼煙を上げたツバメと、すぐさまそれに応えたレン。
二人は軽くほほ笑み合う。
「ツバメちゃんレンちゃん、ないすーっ!」
【如意乾坤撃】からシオンを抱えて逃げていたメイも、歓喜に拳を突き上げた。