軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

585.素材を取りにいきます!

「基礎は十二分に力を付けられた様じゃな。ここから先へ進むなら、体内の『気』を起こしてやる必要がある」

「はい、よろしくお願いします!」

基礎修行を終えたシオンは、意気込みを高める。

「そうすることで、自らの中に眠る気への『感覚』を開くのじゃ」

「どうすれは良いのですか?」

「秘仙郷には、かつて仙人たちが薬の素材となる植物などを育てていた碧玉湖がある。そこに生える【鳳翼霊芝】煎じて飲めば、シオンの持つ本来の力を目覚めさせることができるじゃろう」

「素材を集めて、お茶にするってことね」

「なんだか、とても優雅なクエストです」

「ほんとうだねぇ」

漂う大人な雰囲気に「お茶かぁ」と、すっかり頬を緩めるメイ。

「ふむ。茶器は用意してある、持ち帰った素材は好きに使うがいいぞ。ただワシは全然詳しくなくてのォ。碧玉湖も長らく放置された状態じゃ。中には危険な草や実などもあるじゃろう。十分に気を付けるのじゃぞ」

「りょうかいですっ!」

「それではさっそく、行ってまいります!」

不穏な言葉は『選定に失敗すれば状態異常もあるぞ』という忠告。

しかし上手く選べれば修行に成功し、プレイヤーの一時的なステータス向上も見込める。

そんなクエストに、気合十分なシオンを先頭に挑む。

道場を出た四人は、道場の裏手から続くつり橋で秘仙郷の奥地へ。

並ぶ塔型の岩山から、二段になっている物を見つけて登頂を開始した。

「わあー! きれいだねーっ!」

「本当ですね」

二段の岩山は、太い円筒の上に細い円筒を乗せたような形状をしている。

そしてより高い岩山から流れ落ちる清水が、太い円筒の上部で美しい湖を作り出している状態だ。

「秘仙郷は本当に風光明媚よねぇ」

その光景に、思わず三人並んで見惚れてしまう。

見る角度によって、碧にも翠にも見えるその湖。

その周りには多様な植物が生えており、ここにあるものはどれも煎じて飲むことができるようだ。

「私たちも素材を持ち帰って、お茶にしていいのよね?」

「どれがいいかな!」

「果物のようなものもありますね。これは楽しくなりそうです」

三人はさっそく、素材集めに動く。

選択を間違えれば、状態異常を抱えたまま次のクエストに向かうことになるため、飲まないという選択もできる。

だが『楽しさ優先』のメイたちに、その考えはない。

「私は……この岩に張り付いてる感じの葉を選んでみようかしら。なんか緑茶みたいな雰囲気あるし」

そう言ってレンが手にしたのは、【大紅袍】という茶葉のようだ。

なかなか渋い選択をする辺りに、レンの趣向が垣間見える。

「この木イチゴのようなものでも良いのでしょうか」

ツバメが手を伸ばしたのは、【徳利苺】という小さな果実。

赤く小さな見た目は、そのまま食べても美味しそうだ。

「色々あるなぁ、どれがいいんだろう」

メイは悩みながら辺りを見回す。すると。

「形が悪くて残っちゃったのかな?」

気になったのは、一つポツンと残った桃。

桃と聞いて思い浮かぶ美しい形状とは違い、縦に押しつぶしたような見た目をしている。

「わたしはこの桃にしようかなっ」

結局メイは、潰れた桃を選択。

その果実は【仙桃】という名のようだ。

「さて、肝心の【鳳翼霊芝】の方はどうかしら」

レンが様子を見に行くと、シオンは悩んでいた。

「……どうしたらいいんだ」

見ればシオンの前には二つのキノコ。

それは見た目がほぼ同じ。だが。

「……よく見ると、違う気がするね」

「本当です」

気づいたメイの言葉に、ツバメもうなずく。

並んで生えた二つのキノコ。

どちらかは【鳳翼霊芝】に似たもの、ということだろう。

「正解を知らないのに二種類あるんだとしたら、一気に面倒になってくるわ」

老子の言っていた『危険なものもある』という言葉が、引っかかる。

「しかも老子は詳しくないって言ってたから、帰って『どっちが本物ですか?』は通用しないんでしょうね」

見れば見る程、同じにしか見えない二つのキノコ。

仮に違いを見つけたとしても、どちらが正しい【鳳翼霊芝】なのかは分からない。

ここまで完璧な修行をこなしてきたシオンの、今後を占う選択になりそうだ。

「……匂いが違うよ」

するとメイが不意に、声を上げた。

「本当?」

メイならでは着眼点に、レンも鼻を近づけてみる。

「確かに違うわね」

「こちらはほとんど匂いがありませんが、こちらは甘い匂いがします」

「多分こっちじゃないかな。本物は」

そう言ってメイは、匂いのしない方を選んだ。

「どうして?」

「ジャングルにいた時は、『濃い甘い匂い』は危険なのが基本だったから。こっちはあの『嫌な甘さ』を思い出すんだ」

「なるほど……」

言われてレンは、あらためて鼻を近づける。

「言われてみれば確かに、甘すぎる気がするわ」

「芳香剤のような、気になる匂いです」

「いーちゃんはどう思う?」

ここでさらに、メイはいーちゃんを呼び出す。

二つのよく似たキノコを前に、いーちゃんはスッと妙な甘さのない方を手に取り持ち上げた。

「これはもう、間違いなさそうね」

「メイさんと、いーちゃんさんが『これ』と言うのであれば、間違いないでしょう」

「何より、メイで間違えるんだったもうどうしようもないわ」

こうしてメイたちは各々が飲むための素材と、シオン強化のための【鳳翼霊芝】を選び、道場に戻ることにしたのだった。