軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

584.これが3つ目ね

「ふむ、どうやらかなり良い修行ができておるようじゃな」

二つの修行を最高の形でクリアしてきたメイたちに、老子は大きくうなずいた。

「以前より身体もできておる……基礎はこれが最後になるぞ」

そう言って老子は道場外の広い練習場に、木で作られた人型を設置した。

「気の力でこの木人を吹き飛ばす。そのためには強く、一点集中して発することが重要。これは基礎にして奥義じゃな」

「この木人、久しぶりだ……」

「さっそく、こいつを飛ばしてみるがいい」

最初に挑戦するのはシオン。

木人の前に立ち、静かに息をつく。

呼吸を整え、それからそっと手のひらを木人に向けた。

「いきます……ハァッ!!」

気合の声と共に、気が弾ける。

強い風と共に生まれた衝撃で吹き飛んだ木人は、練習場の中央付近まで転がった。

「ふむ、ここまでの基礎修行が活きているようじゃな」

二つの修行が最高値できているためか、発する気の威力もなかなかのものだ。

「じゃが、これくらいはできねばならんぞ」

木人をひろってきた老子は、特に気合を入れるような素振りもなく手を伸ばす。

「――――ハッ」

「「「ッ!?」」」

掌底から放たれる衝撃波が、爆風を巻き起こす。

木人は砂煙を上げて地を転がり、練習場端の壁に叩きつけられた。

「おおーっ!」

気の力を扱う老子らしい豪快な一撃に、目を輝かせて歓声をあげるメイ。

「これぞ師匠の技という感じですね」

「いいわねぇ。こういうの」

修行中に老子が飛び抜けた力を見せる展開は楽しい。

そして何より、闇とか光とかが出てこないのは本当に良い……と、遠い目でうなずくレン。

「さて次は冒険者たちの番じゃな。思う存分遠くへ飛ばすといい」

そう言って、ひろってきた木人を立てる老子。

「私たちは攻撃スキルでとにかく遠くに飛ばせばいいってことね。これって一人ならコンビネーションでもいいのかしら?」

「レンちゃん何か思いついたの? 見てみたいっ!」

「楽しみです」

どうやら武器は使えないらしく、レンは徒手のまま準備を始める。

「【コンセントレイト】」

そしてあらためて木人の前に立ち、集中するために深く呼吸する。

「それじゃいくわよ!」

気合の一声と共に、魔法を放つ。

「【フレアバースト】!」

レンの手から放たれた爆炎は、足元に炸裂して木人を大きく空に吹き飛ばす。

飛んで行く木人。

落下し始めたところは、おおよそレンの狙い通りだ。

「【解放】!」

ここで【設置魔法】【フレアバースト】が火を噴く。

地面から上がった豪炎が木人を吹き飛ばし、浮かび上がったところを『二面目』の【設置魔法】【フレアバースト】がさらに大きく噴き上げる。

「いいわね! ここまで大体狙い通り……っ!」

レンはしっかりと木人の行き先を見つめて、再び手を伸ばす。

「さあここが一番のポイントよ! 【魔砲術】【連続魔法】【誘導弾】……【フレアストライク】!」

ここで放つ追撃。

大きな爆発では、木人を下方へ落としてしまう可能性もある。

だが炎砲弾なら、斜め下から上手に当たってくれるはずというレンの狙いは見事成功。

直撃した炎の砲弾が、さらに木人を遠く弾き飛ばす。

「いいわね! それじゃあ最後はオマケ! 当たってくれたらラッキーって感じで! 高速【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」

最後はダメもとの炎弾連射。

しかしその狙いも、見事に成功。

接地前の木人に連続で直撃し、さらに距離を伸ばした。

「お見事です」

「レンちゃん……すごーい!」

なんと木人は、道場の壁を大きく越えて山の彼方へと消えていった。

「みごとじゃ……!」

そう言って、木人をひろいに行く老子。

「……本当に取りに行くのでしょうか。とんでもない距離になってしまいましたが……」

そのまま道場の壁のところまで行った老子に、自然と集まる注目。

すると場外へ飛んで行ったはずの木人が突然、老子の肩に担がれた。

「木人が瞬間移動してきました」

「さすがに道場外にまで取りに行くようにはできてないみたいね。ふふ、どうせなら岩山を駆け降りて木人を取りに行く老子が見たかったけど」

そう言って笑うレン。

ここは壁まで飛ばせば最高評価となるクエスト。

さすがに場外まで飛ばす想定は、されていなかったようだ。

「……すごい……私も!」

するとその姿を見て、シオンは気合を入れ直す。

木人相手に、再び気の発動練習を開始する。

そんな弟子の姿を見て、老子がつぶやく。

「シオンは優しく穏やかで、多くを望まない。そして無闇に力を誇示するようなこともない。だがそれゆえに貪欲さにかける一面もあってな。才能を発揮しきれていないのじゃ。やはりお前さんたちと一緒に修行させたのは成功の様じゃな。シオンをこれだけ熱くする冒険者たち、汝らの才能も見事の一言じゃ」

「ありがとうございますっ!」

「一体どこでそんなに力を身につけたのかの?」

「ジャングルですっ!」

「良い師に巡り合えたのじゃな」

「てへへ、ちょっと爬虫類色が強いですけど」

これもまた運営は想定していなかったであろうメイとの会話に、クスクス笑うレンとツバメ。

「……ふむ。シオンの顔つきが大きく変わったな」

最後の基礎修行も無事終了。

メイたちは見事、最高の結果で突き進むことに成功したようだ。