軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

510.予期せぬ展開ですっ!

「ありがとーっ!」

天気雨の中、メイは白象に向かってほほ笑んだ。

「いこう!」

「はいっ!」

水滴を跳ね上げながら駆け出すアルトリッテとツバメの狙いは赤竜だ。

右腕、左腕からの尻尾振りはすでに見た連携。

問題なくこれをかわしたところで赤竜は大きく後方へ跳び下がり、羽ばたきながらブレスを放つ。

「【ペガサス】!」

「【投擲】!」

しかし噴き出す炎は、これまでの三分一程度にまで雨で減衰。

アルトリッテは苦も無く距離を詰め、ツバメの投じた【雷ブレード】が雨水による範囲拡張を起こす。

「いくぞーっ!」

赤竜を落としたところで、ジャンプからの斬り下ろしを叩き込む。

そしてそのまま着地と同時に剣を振り回す。

「【ホーリーロール】! からの【ホーリーロール】だーっ!」

聖光の軌跡を描く回転撃が、赤竜のHPを削り取った。

白竜は大きく首を引く。

吐き出す氷の広範囲ブレスは、凍結の効果を上昇し威力を上げている。しかし。

「効きませんっ!」

猛吹雪も【王者のマント】の前には無力。

風に守られたメイを前に、ただかき消されていくのみ。

「このままいきますっ! 【モンキークライム】からの【ラビットジャンプ】!」

白竜の身体を駆け上がり、そのまま空中でくるりと一回転。

「ジャンピング【ソードバッシュ】だあああーっ!!」

二匹がかりでさえ、きっちりさばいてきた紅白の竜。

一匹だけなら、メイは問題なく圧倒してしまう。

ダメージは一撃で約4割。

互いのブレスとコンビネーションを封じられたドラゴンたちは、一転して窮地に陥った。

メイの『白象召喚』から、完全に流れが変わった状態だ。

「あれって……」

しかし赤竜6割、白竜3割。

紅白竜の合計HPが半分を切ったところで、小さな変化がおとずれた。

後衛から付近に目を走らせていたレンがその存在に気づいたのは、木々の隙間から現れた一人の青年。

それは草原の乙女のもとへと向かう際に出会った、謎の騎士だ。

現れた突然の乱入者に、目を奪われる。

「二頭の竜を、ここまで追いつめるとは」

感心したように言う騎士。

対して、森の乙女は――。

「――――剣を頼みます」

「ッ!!」

聞こえた言葉に、レンは思わず身を乗り出した。

「ずっと『知らない』『ここにはない』って言ってきたのに、今の言葉はおかしいわ!」

「……この流れでの『剣』、尻尾を出したとしか思えない」

森の乙女との短いやり取り。

騎士は魔法陣から呼び出した馬に乗り、駆け出していく。

「この状況でパーティ分けろっての!? アルトリッテはあの騎士を追って! やっぱりある! 【エクスカリバー】はこの島にあるっ!」

「うむ! 分かった!」

細い金の腕輪に触れると、現れる白馬。

飛び乗ったアルトリッテは、すぐさま騎士を追いかける。

当然この瞬間も、竜たちの動きは止まらない。

吹き付ける氷槍ブレスを慌ててかわしながら、レンは頭を働かせる。

「このクエスト、普通に超高難易度だわ……」

今回のクエストは、『ただ二頭の竜を倒せば次に進む』というわけではないようだ。

厳しい戦況に少し悩んだうえで、切り出す。

「メイもアルトリッテを追って。残った私たちが竜に負けても【エクスカリバー】さえ手に入れれば勝ち。メイがいれば、間違いなくアルトリッテの力になるわ」

「……メイ」

「はいっ」

「……私の足では追いつけない。アルトを――――お願い」

「おまかせくださいっ!」

託すようなマリーカの言葉に、気合が入る。

メイは赤竜の飛び掛かりを身体の下を駆け抜けることでかわし、叩きつけにきた尾をサイドステップで回避する。

「【連続魔法】【フリーズボルト】!」

「【霊鳥乱舞】!」

直後に二頭の竜を、二人の魔法がけん制する。

生まれた隙を突き、メイは少しずつ戦線を離脱。

敵のターゲットを切ったところで走り出した。

そうなれば当然また、戦況は変わる。

「【跳躍】!」

飛び掛かってきた赤竜の尾を後方への【跳躍】でかわすと、そこに続く形で白竜も飛び込んでくる。

尾の叩きつけは横への移動でかわし、反撃に転じようとしたところで閃く白光。

「ッ!! 【加速】」

叩き付けた尾から突きあがる氷剣の山。

かすめてツバメのHPが削られる。

ここへ赤竜が仕掛ける追撃は、前腕の連続叩き付け。

これをどうにかかわしたところに迫るのは、またも尾の振り払いだ。

「【跳躍】!」

宙への回避を選択した直後、白竜の口元に閃く輝き。

「ああああーっ!」

跳ばせて落とす連携。

氷槍ブレスがツバメのHPを、さらに2割ほど奪い取っていった。

「【ソフトリフレクター】」

放たれた氷槍の流れ弾。

マリーカはレンをかばうように魔力盾を生み出し、これを防ぐ。

「やっぱり二体同時は厳しいわね。メイがいかに圧倒的な存在か思い知るわ」

「そのうえアルトリッテさんまでいたわけですから……ドラゴン二頭相手でもどうにかなるわけですね」

思わずもれる言葉。

合計HPが半分を切っている二頭の竜は、さらに新たな攻撃を加えてくる。

「「「ッ!?」」」

白竜が大きく開いた両の翼を羽ばたかせ、巻き起こす暴風。

吹き抜けていく風が、三人の足を止める。

ここに飛び込んでくるのは赤竜。

追い風を背に受け、放つ長い尾の振り払いはなんと後列を狙いにいく。

「【ハードリフレクター】!」

慌てて物理攻撃防御スキルで、防御に回るマリーカ。

「「ッ!!」」

それでも大きく弾かれた二人は、共に2割ほどのダメージを受けた。

やはり前衛二人の離脱は、大きく戦況を不利にしてしまったようだ。

「マズいわね……このままだと雨が止むわ」

そして雨量は明らかに減り始めている。

雨が止めば当然、赤竜のブレスが威力を取り戻してしまう。

「どうやら、勝負がつきそうですね」

一頭でもクエストボス級のドラゴンが二頭。

巨竜同士が連携で攻撃を仕掛けてくるというかつてない戦いに、たった三人で挑むのはあまりに難しい。

「消えなさい。弱き者たちよ」

冷たく言い放つ森の乙女。

だが、危機はこれだけで終わらない。

「まさか……ここに海賊たちも合流するの?」

聞こえてきた喧騒は、海賊とプレイヤーの戦いのもの。

分隊長を中心にした十数人ほどの海賊グループが、激しい戦いを行っているようだ。

そして彼らは、レンたちのもとに近づいてきている。

「やっぱり海賊ルートでもここにたどり着くわけね。かち合うことになれば、海賊が私たちを狙うことも十分ありえる……」

目前の紅白竜。

近づく海賊たち。

メイとアルトリッテを送り出したレンたちに、大きな危機がおとずれていた。