軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

507.新たな試練ですっ!

「身体を小さくするアイテムや、装備品がどこにあるのか知りたい」

メイのたった『一言』で、強固な木々の檻は切り開かれた。

まだ恥ずかしそうに顔を赤くしたまま、マリーカは草原の乙女に問いかける。

「エルダーブリテンには不思議な国への道が隠されています。向かえば得られるものがあるでしょう」

「……まだ、隠された要素があった」

情報は多くない。

しかしマリーカの求める『小さくなる』アイテムは、これまで『明確な情報』がなかった一品。

可能性が確かなものになっただけで、普段目が死んでいるマリーカが「にへー」っとうれしそうにほほ笑んだ。

「そんな可愛い笑い方もするのね」

「はい、とても素敵です」

「かわいいーっ!」

「……そ、そんなことない」

そんなマリーカを見て、ついつい笑みがこぼれてしまう。

メイに至ってはマリーカに抱き着いている。

「次はいよいよ私の番だな!」

「この感じだと、なかなか厳しい試練になりそうね」

「覚悟が必要です」

メイの【密林の巫女】が見事な効果を発揮したことでクリアできたが、試練自体のレベルは間違いなくかなり高い。

だが、もちろんそれで引き下がるようなアルトリッテではない。

「草原の乙女よ! 次は私の番だ!」

「続けての問いとなれば、試練はより厳しいものとなるでしょう。それでも挑みますか?」

「もちろんだっ!」

「それでは、試練を始めます」

草原の乙女が右手を上げると、地面に描かれる魔法陣。

次の瞬間、四角い巨岩が次々に突きあがりホールのようになった。

五人を取り囲んだストーンヘンジ。

その中心に埋め込まれた魔法石の並びが輝き出し、試練が始まる。

「ウサギ……?」

足元に生まれた陣の中心から現れたのは、可愛い姿をした一匹のウサギ。

しかしその目を煌々と赤く輝かせる姿は、理性などない完全な魔物だ。

「ッ!?」

次の瞬間、嘘のような機敏な飛び掛かりでアルトリッテの首元をかすめていった。

「なんだ、この威力は!?」

鋭い前歯による飛び掛かりは、かすめただけでHPを1割近く削り取った。

攻撃方法は突撃からの喰らいつきのみ。

シンプルな分だけ威力が高いようだ。そしてさらに。

「何よ、この数……っ!」

「わあ! ウサギがいっぱいだー!」

真っ白なウサギが一斉に足元に発生し、その輝く赤い目をこちらに向けてくる。

数で押す。

走り出した魔獣たちの飛び掛かりは、まるで白い津波のようだ。

「【フレアバースト】!」

巻き起こる爆炎が、ウサギの波に大穴を開けた。

するとウサギたちは左右に分かれ、二つの群れとなって襲い掛かってくる。

「【魔力蝶】! 【ファイアウォール】!」

レンは魔力の蝶を四匹ほど展開し、飛び掛かるウサギを撃ち落としつつ移動ルートを限定する。

「ツバメはマリーカをお願い!」

「はいっ! 【加速】【リブースト】【六連剣舞】!」

炎の壁を飛び越えた個体は、ツバメの剣舞が出迎える形だ。

斬られたウサギたちは、次々に消えていく。

「はっ、やあっ! 今だ【ホーリーライト】!」

【エクスブレード】による斬り払いから放つ、聖なる光の柱。

アルトリッテは、迫るウサギをコンビネーションで打ち払う。

だが、数の増加は止まらない。

「くっ! 減らしても増える一方で切りがないぞ!」

わずかにかすめたウサギの歯が、HPをさらに削っていく。

どうやら敵の多くは、質問者であるアルトリッテを狙いにきているようだ。

「……慌てる必要はない。戦闘時間も範囲も決められているのだから、後半に隙を作って、最後はアルトの【サンクチュアリ】を使えばいい」

「なるほど! この範囲なら、ほとんどが【サンクチュアリ】の射程内になるな!」

「そういう事なら、時間稼ぎはおまかせくださいっ! 【装備変更】!」

メイの【猫耳】が、【狼耳】に換わる。

そのまま天を仰いだメイは、大きく息を吸った。

「ウォオオオオオオ――――ッ!!」

響き渡るメイの【遠吠え】

このスキルは広い範囲の『ターゲット』を、自分一人に集中させるスキルだ。

この場所でなら、全ての敵を一身に引き受けることが可能となる。

「いきます……【バンビステップ】っ!」

一つの波になるほどの量を誇るウサギを相手に、メイは回避集中モード。

「よっ、それ、それっ!」

頭の傾け一つ、足の置き方ひとつで決める回避。

細かく精密な動きは、牙をむき出しにしたウサギが数センチ横を飛び交っていくレベルの回避を見せる。

何より【狼耳】の、前転や横っ飛びのような動きからの立ち直りの速さが、メイの回避力を大きく上昇している。

「すごいです……っ」

高速回避が得意なツバメですら驚くほどの軽快さ。

かつてジャングルにいた時に戦っていたハチ型モンスターも、群れになって襲いかかってきた。

その時に身に付いた視界を広くしたままの戦法が、ここでもしっかり活きてくる。

まるで一体のモンスターかのように『一斉』に襲い掛かることによって、分かりやすい『飛び掛かり音』を立ててしまうのも、メイには『この方向から襲います』というヒントにしかならない。

50匹のウサギの波が、一気に飛び掛かってきたところでも――。

「【裸足の女神】!」

あっさりとその下を潜り抜けてみせた。

本来はタンク役に補助魔法と回復の連打、もしくは大人数での範囲攻撃で切り抜けるタイプのクエストを、見事な身体さばきで乗り越えていく。

「残り時間、もうわずかよ!」

ここで試練は、最後の山場を迎える。

「……やはり、まだ増える」

新たに増えた大量のウサギたちが、一斉にアルトリッテを狙いにいく。

「そうはさせないわ!」

メイが時間を稼いだことで準備できた二連発の【設置魔法】が、火を噴き敵の数を大きく減らす。

「【分霊】【霊鳥乱舞】」

後方に二体の陽炎を生み出したマリーカ。

三人で放つ光鳥の群れが、さらにウサギたちを蹴散らす。

「【アクアエッジ】【八連剣舞】!」

そしてその隙間を抜けたわずかなウサギは、ツバメがきっちり片付ける。

「……アルト」

「うむっ!」

生まれた隙。

怒涛の勢いで生まれ出る多量のウサギに対し、アルトリッテは静かに剣を引く。

「――――【サンクチュアリ】」

広がる光の領域。

それは時間と範囲限定で聖属性の武器やスキルの威力を大きく強化し、MPが尽きるまでその効果を発揮し続ける技だ。

「【ホーリーロール】からの【ホーリーロール】!」

襲い掛かってくるウサギの大群を、アルトリッテは強化された回転攻撃で斬り払う。

そして大津波のように迫りくる巨大な一団には――。

「ゆくぞ! 解放剣技【エクスクルセイド】だぁぁぁぁ――――っ!!」

荒れ狂う聖光が炸裂し、消し飛ぶウサギたち。

そらにその直後、巻き起こった盛大な爆発がトドメとなる。

この場にいたウサギたちは全て粒子となって消え去り、新たなウサギの生成までに若干の空白が生まれた。

そのまま時間は終了。

思い出したかのように、ストーンヘンジも消えていった。

残されていたのは、一つのアイテム。

【ウサギの前歯】:首狩りウサギの強靭な刃。

「なんだか、恐ろしいアイテムですね」

「でも、これは後々何かに使えそうだわ」

手に入れたアイテムを見て、ワクワクするレン。

ウサギの高い攻撃力を思えば、期待ができそうだ。

「お見事です」

恐ろしい試練を乗り越えた五人に、草原の乙女は静かにうなずく。

「試練を乗り越えた貴方の問いに答えましょう」

「うむ! 聞きたいことは一つだけだ! 【エクスカリバー】の在処を教えてくれっ!」

「そのようなもの、知りません」

草原の乙女は、冷たくそう言い放った。

「なに……?」

まさかの回答なし。

予想外の展開に驚くアルトリッテ。

「この先に進めば森の乙女がいます。彼女に問えば、何か……分かるかもしれません」

そう言って草原の乙女が指さした先には、湖へと続く木々の道が見える。

「とにかく、行ってみましょう」

「う、うむっ!」

口を閉じたままの草原の乙女。

メイたちは森の乙女がいるという木々の道へと、足を進めることにしたのだった。