作品タイトル不明
504.再会ですっ!
「なんだか、すごく騒がしい感じがするよ」
続く草原の道。
ついつい足早になってしまうアルトリッテと共に、先頭を行くメイが不意に立ち止まった。
「……足元がかすかに揺れてる」
「本当ですね」
いよいよ体感できるほどになった異変に、五人は意識を集中する。
「わあ! 動物がいっぱい走ってくるよ!!」
見えたのは、砂煙を上げながら走って来る動物たちの群れ。
ユニコーンにグリフォン、金色の羊などの幻想的な動物たちが大慌てでやってくる。
「大変だ! 大変だ!」
そこに大慌てで飛んできたのはフェアリーたち。
「どうしたのーっ?」
メイがたずねると、フェアリーがわたわたと説明を始める。
「野蛮な人間たちが突然やってきて暴れ出したんだ! 動物や妖精を捕まえて帰るんだって!」
「最初は戦おうとしたんだけど、でっかくて白い獣を呼び出してからはもう止められなくて!」
「逃げなくちゃ! 早く逃げなくちゃ!」
そう言い残して、飛び去って行くフェアリーたち。
「動物や妖精たちが、危機にあるのか……」
それを聞いて、アルトリッテはわずかに表情を迷わせる。
フェアリーたちの示した方向から、離れてしまうからだ。
「…………いや! 助けに行くぞメイ!」
「うんっ! でも大丈夫かな……」
この地に来ている他のプレイヤーが、先に【エクスカリバー】にたどり着いてしまう可能性もあると考えて躊躇するメイ。
「うむ! 罪なき動物たちの危機を捨て置いているようでは、聖騎士は名乗れぬからな!」
「アルトちゃん!」
「カッコいいです」
「むはははは! これぞ聖騎士アルトリッテだ!」
「……でも内心はドキドキ」
「そそそそんなことはないっ! ととととにかく私たちが助けるのだ!」
「うんっ!」
動物たちがやって来る方向へと駆け出す五人。
小さな湖のほとりで暴れ回っているのは、同じくこの地に流れ着いたのであろう海賊たち。
「倒れた動物どもを捕まえて帰りゃ、高い値段で売れるぞ!」
「フェアリーなんかは金持ち連中にうってつけだ!」
「あ、あの子は……っ」
メイの視線が留まる。
そこにいたのは海で見た、美しい白金の牙を持つ巨象の姿。
「どうしてこんなところに象がいるのでしょう……」
「あの海賊たちが、従魔か召喚獣として使ってるんだわ」
「オラ! やれやれーっ!」
言われるまま、暴れ回る白象。
美しい白金の象牙が空を薙ぎ、その鼻を振り回すだけで木々が倒れていく。
放つ水砲弾は、弾けて大きく土を巻き上げた。
必死に逃げ回る金毛の羊たちが、その余波でゴロゴロと地面を転がる。
「ですが……」
「そうね。完全に『無理やり使われてる』感じだわ」
「羊は毛だけ採れりゃいい! まとめてやっちまえ!」
その指示に白象は、首を振って嫌がるも――。
「いいからやるんだよォ!」
召喚士らしき海賊の手が光り、再び象は暴れ出す。
レンの見立て通り、攻撃を強制させられている感じだ。
抵抗するものの結局、魔法による強制で白象は金毛羊に鼻を向けた。
直後、放たれる水砲弾。
「【ペガサス】!」
「【バンビステップ】!」
「【加速】【リブースト】!」
足の速い三人が一気に金毛羊に駆け込み、抱きかかえる。
ツバメはどうにか一頭、メイとアルトリッテは両手で一頭ずつ抱えて回避する。
「ッ!」
見事に羊を守ったツバメ。
しかし白象の水泡の威力はすさまじく、その余波に地面を転がった。
「水砲弾の威力、範囲、どちらも侮れないぞ!」
「大きくなーれ!」
するとメイは即座に【豊樹の種】をまき、盾になる木々の壁を生み出した。
「……すごい。これで逃げる動物たちの安全が守られる」
動物たちの逃げる方向に壁を作ることで、水による攻撃から守る。
そんな戦法に驚くマリーカ。
「このパターンは象を倒しちゃわないよう気を付けて! 海賊は倒してもいいけど、象は残して様子を見るつもりで!」
「りょうかいしたっ!」
「りょうかいですっ!」
声を合わせたアルトリッテとメイは、海賊たちをビシッと指さした。
「善良な動物を捕えて売り払う、非道な悪行!」
「嫌がる子に無理やり戦わせるなんて、放っておけないよ!」
「よってこの聖騎士と!」
「普通の女の子が、許しませんっ!」
まるであらかじめ決めていたかのように、言葉を続けるメイとアルトリッテ。
「チッ、あの船に乗ってた冒険者どもか! 面倒くせえ、こいつらもまとめてやっちまえ!」
「「「おう!」」」
掛け声と共に動き出す海賊たち。
重い踏み込みから放つ斧の攻撃をかわすと、閃くスキルエフェクト。
「【アックス・スイーパー】!」
「【唐竹割り】!」
「【ペガサス】!」
放たれた横なぎを跳躍でかわしたアルトリッテは、【エクスブレード】を叩き込む。
「はいっ!」
一方のメイは上段から降り下ろされる斧を、15センチほど走行軌道をズラすことでかわして懐へ。
「それーっ!」
前衛同士の戦いで、二人が後れを取ることなどない。
続く華麗な攻撃で、海賊たちを討ち倒す。
「今だ! そのユニコーンを捕まえろ!」
だが中には、動物たちを狙う海賊も残っている。
ここでは動物をどれだけ助けたかは関係ないのだが、これを放っておくメイたちではない。
「【加速】【電光石火】!」
「【ペガサス】!」
ツバメが海賊を切り倒し、その隙にアルトリッテが金毛羊を抱え飛ぶ。
見事なコンビネーションも、ほほ笑み一つで難なく成功。
「【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」
新たに迫る海賊はレンがしっかり足止め。
「くっ、やりやがる! そんならそこのフェアリーだぁぁぁぁ!!」
「……【流星雨】」
そうなれば後はまとめて叩くだけ。
天に放った魔力の光球が弾けて、光の雨が降る。
範囲攻撃にもかかわらず高い威力を誇るその魔法は、それでいて綿密で回避を許さない。
マリーカの魔法が、駆け込んできた海賊たちをまとめて片付けた。
「やるじゃねえか……っ!」
見事なコンビネーションで、動物たちの防衛をしながらも戦い優位に進めていくメイたち。
舌打ちした海賊は、三日月島から追ってきた分隊長だ。
「いくぞ! 冒険者どもを全力でぶっ潰す!」
震える大地。
分隊長の叫びと共に、白の巨象が動き出す。