作品タイトル不明
503.妖精と伝説の剣
魔女の手伝いクエストを終えたメイたちは、【エクスカリバー】を求めてアヴァロニアを進む。
付近に感じる騒がしさは、島を駆ける海賊とプレイヤーたちのものだ。
「なんとか【エクスカリバー】につながる情報が欲しいところだな」
「思ったよりプレイヤーも多いし、先手を取りたいところね」
どうしても早足になってしまうアルトリッテに引かれるように、五人は草原を進んでいく。
そんな中、新たなきっかけを見つけたのはやはりメイだった。
「あっ、妖精さんがいるよ!」
草原の先にいたのは、二人のピクシー。
背中に生えた薄羽と赤毛が特徴の、小さな妖精だ。
「冒険者さん! 実はボクたち大変な物を見つけちゃったんだ!」
「そうなんだよ! あれは聖剣だよ!」
「な、なにーッ!?」
その言葉に、思わず「ぬはー!」と大きく身体をのけ反らせるアルトリッテ。
「そそそそれはどこにあるのだっ!?」
「こっちに来て!」
「うむっ!」
すぐさま駆け出すアルトリッテ。
その慌てぶりで何度か足をもつれさせながら妖精たちの後を追って行くと、たどり着いたのは小さなストーンサークル。
雄大な光景の中に転がる岩々の中心にまた岩があり、そこには一本の美しい剣が刺さっていた。
「これは……っ!」
鮮やかな金と青の装飾で飾られた剣は、伝説にふさわしい様相をしている。
アルトリッテは震える手を、そっと伸ばす。
「モ、モンスターだーっ!」
突然、ピクシーが叫んだ。
見ればいつの間にかアルトリッテたちの周りを、ブラックドッグたちが取り囲んでいた。
「いいだろう。相手になろうではないか!」
襲い掛かってくる黒の魔犬たち。
見るからに美しいその剣をアルトリッテがそっと引いてみると、まばゆい光が広がり出す。
「はあっ!」
そのまま聖剣を引き抜き、駆け込んできたブラックドッグを斬り払う。
剣を振る度に舞う聖なる光が軌跡を描き、敵を次々に打倒。
「これで終わりだ!」
飛び掛かってくる最後の個体。
アルトリッテはそれを大きな斬り上げで両断した。しかし。
「なっ!?」
全ての敵を斬り払ったその瞬間、手にした聖剣がぽっきりと折れてしまった。
「ええええええ――っ!?」
まさかの事態に、駆け寄ってきたメイが悲鳴をあげる。
現れた敵は無事に打倒できたものの、起きてしまった甚大な被害。
折れた聖剣を、アルトリッテはただじっと見つめる。
「大丈夫! きっと直せるよ! もちろん直すためのクエストも手伝うからね! 一緒にがんばりましょう!!」
あわあわしながらもそう言って、両方の拳を握りながら力強くうなずいてみせるメイ。
するとマリーカがそっと、アルトリッテの隣に立った。
「アルト。今感じている違和感はおそらく正しい」
「ありがとう……メイ、マリーカ」
二人の言葉に背を押されるようにして、アルトリッテは「これは大変だ!」と騒ぎ立てるピクシーを真っすぐに見据える。
「この折れた剣を持って修理できる者を探し回れということなら、たちの悪いイタズラだな」
「……これは意地悪なクエスト。いや、仕掛け」
マリーカもその言葉に続く。
「その剣は、伝説の鍛冶師に頼まなきゃ直らないよ!」
「居場所が知りたかったら、ボクたちの頼みを聞いて欲しいな!」
「断る」
「ええー……」
「それじゃあその剣、返してくれる?」
「いいだろう」
「いいんだね? 返しちゃったらもう……二度と手に入らないよ?」
ピクシーたちは、あまりに厳しい選択を迫ってくる。
「私が求めてきたのは【エクスカリバー】ただ一つ! その【選定の剣】らしきものは確かに色も形もよく似ている。だが私は何万回と資料を見てきたのだ! 間違えるはずがないっ!」
大きさも色使いも、よく似た剣。
しかし細部の違いを、アルトリッテは知っている。
「もしその剣が本物だとしても、それは【エクスカリバー】ではなく【選定の剣】としてだ。だがそれすらも怪しいぞ。何せピクシーはイタズラ好きな妖精だからな!」
「……あーあ、バレちゃった」
ピクシーたちはたいして悔しそうな感じもなく、変わらない笑みを浮かべていた。
魔法を解くと、折れた【選定の剣】らしきものは魔力の粒子を散らして消えていく。
ここでピクシーに捕まってしまえば、あれこれと『頼み事』に振り回されることになる罠のようなクエスト。
それをアルトリッテは、見事に乗り越えてみせた。
「わあ……おとぎ話みたい」
真贋を見極めたアルトリッテに、メイが感嘆の声を上げる。
「確か伝説の剣を抜いて手に入れる話は、【エクスカリバー】の前に出てきた剣の話なのよね」
「うむ! 同一の物とする説もあるから、少し悩んでしまったがな」
「びっくりしちゃったよー」
「本当です」
「マリーカも知ってたのね。【選定の剣】の話」
「……たまたまおとずれたチャンスが、私の方にきても良いように知識は入れてある」
「いいコンビですね」
【エクスカリバー】を手に入れる機会が、必ずアルトリッテに来るとは限らない。
そんな時のために、マリーカもしっかり下調べをしてあったようだ。
それは『求める物』のために冒険を続けてきた二人が、その絆を見せた瞬間だった。
「伝説の剣が欲しいんだったら、あっちに行くといいよ」
そう言って、湖の方を指さすピクシー。
「それも嘘じゃないでしょうね」
「へへっ、イタズラがバレたのに見苦しくだまそうとしたりはしないさ。そこに詳しいヤツがいるから、そいつに聞くといいよ」
「ばいばーい」
ピクシーたちは、手を振りながら消えていった。
「それでは私たちも進もうではないか! クエストの結果得られた情報なら、きっと何かすごいものがあるに違いない!」
「そうね。他に当てもないし、ピクシーのくれた情報を追ってみましょう」
「りょうかいですっ!」
「うむっ!」
アヴァロニア二つ目のクエストは、意外なイタズラ。
見事に乗り越えたメイたちは、道なき道をさらに進んで行くのだった。