軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

494.vs海賊船長

「海賊が船に上がってきます!」

悪徳貴族船に残ったツバメの声に、レンとマリーカが振り返る。

見れば小回りの利く小型の船で、海賊たちが乗り付けてきていた。

「直接船に乗り込んでくる敵もいるのね」

貴族船に飛び乗ってきた海賊たちは、手にした剣で攻撃を仕掛けてくる。

「でも、この程度ならツバメには準備運動よ」

「【ウィンドスライス】!」

「【ウォーターシザース】!」

「【加速】」

風の一文字と、水刃の二連撃。

これを速い移動で回避したツバメは、すぐさまスキルを発動。

「【アクアエッジ】【四連剣舞】!」

今まさに貴族船に登ってきた海賊ごと、海に叩き返す。

海戦となれば『乗り込む』形もある。

そう予想したレンが、ツバメを残したのは正解だ。

しかし敵も数で押してくる。

新たに到着した小型船は三艘。

海賊たちは一斉に貴族船に登ってくるが――。

「……【霊鳥乱舞】」

高火力広範囲の魔法攻撃で、一気に押し返す。

すると次の瞬間、ドンという強烈な爆発音が鳴り響いた。

「船! 動かすわよ!」

レンは慌てて舵を取る。

火を噴いたのは、大海賊船に取り付けられた長距離射程の大砲。

水飛沫が、高々と上がる。

レンは見事なかじ取りで、これをかわした。

「普通にやってたら、乗り込んできた海賊の相手をしながらロングレンジ砲を避けるっていう難関なんでしょうね!」

レンの船さばきとツバメの速い対応、そしてマリーカの一斉攻撃。

見事な連携で、敵海賊たちに優位を取る。

「――――【フルスイング】!」

そこに聞こえてきたのは、連なる海賊船を一撃でまとめてへし折ったメイの姿。

「……海の悪魔として、海賊たちの間で伝説になりそう」

「本当ね」

すでに余裕すら感じさせる三人。

マリーカのつぶやきに、レンはクスクスと笑った。

「それではいきましょうっ!」

「うむ!」

「【ラビットジャンプ】!」

「【ペガサス】!」

メイとアルトリッテはうなずき合い、「せーの!」で跳躍。

大海賊船の甲板へ飛び上がった。

「なんだこいつら! やっちまえ!」

海賊たちは、すぐさま攻撃を仕掛けてくる。

「【フルスイング】!」

派手なエフェクトと共に振り降ろす一撃。

これが甲板に突き刺さると、船がぐらりと揺れる。

「「「うおおっ!?」」」

そして大きな揺れに合わせて、敵海賊たちが一斉に体勢を崩した。

「おお、なんだそれ! おもしろいではないか!」

「もう一回いきますっ! 【フルスイング】!」

慌てふためく海賊たちの姿が面白く、メイはもう一回甲板に剣を叩き込む。

「「「うおおおおっ!」」」

「「あはははははははっ!」」

笑いながらも、アルトリッテはこの隙を突きにいく。

【天馬靴】による跳躍【ペガサス】で船が大きく揺れる瞬間を回避し、隙だらけの海賊たちのもとに踏み込んでいく。

「【ホーリーロール】!」

叩き込む光の回転撃で、海賊たちをまとめて吹き飛ばす。

「【ペガサス】【ホーリーロール】!」

さらに踏み込んで放つ一撃で、船上に大きくスペースを作り出す。

「アルトちゃん!」

「【ペガサス】!」

急なメイの声に合わせて、真上に跳躍。

飛んできた弾丸を、見事に回避した。

「なんだこれは?」

炸裂する銀の弾丸は、花火のような派手な爆発を起こした。

敵数の減った船上に飛び出してきたのは、海賊船長。

大きな海賊帽子に襟の大きなコート、提げた宝石付きのカットラスという装備はこれでもかという感じの海賊ぶり。

「銃だと!?」

空中で驚くアルトリッテ。

海賊船長の手にあったのは、『魔弾』を発する銃型の武器。

その威力や弾丸の速度は魔法と変わらないが、クールタイムが短いのが特徴だ。

「うわっ! うわわっ!」

連発する花火弾を、船長は次々に炸裂させていく。

戦闘範囲の限られた船上では、大きな回避が必要な攻撃はやっかいだ。

「【投石】!」

それでも爆発の範囲を把握したメイは、隙を見て反撃を挟み込む。

「【ジュエルシールド】!」

「物理防御ができるタイプか!」

これを船長が宝石の盾で装備したところでうなずき合い、駆け出す二人。

「【バンビステップ】!」

「【ペガサス】!」

「アルトちゃん!」

「任せるがいいっ!」

「【フルスイング】!」

メイの強烈な近接降り下ろしが、海賊船長の盾を叩く。

「【ホーリーロール】!」

その隙を埋めるようにアルトリッテが続く。

「【フルスイング】!」

そしてまた、互いの間に生まれた隙間をメイが埋める。

盾防御を続ける船長に、連続で叩き込んでいく剣撃。

「【ホーリーロール】!」

その威力に、船長は押されていく。

「【フルスイング】!」

物理耐性付きの盾防御でも、二人の高い火力が見る見るHPを奪っていく。

そしてそのHPが、半分を割ったところで――。

「――――【ゴーストバスター】!」

「「ッ!?」」

まさかの反撃を挟み込んできた。

それは海賊船長の、必殺奥義スキル。

カットラスに宿った暴れ狂う悪霊のエフェクトが、その凄まじい力を物語る。

喰らえば大ダメージに加えて体勢が崩れ、憑りついた悪霊による15秒のスリップダメージまで誘発する恐ろしい一撃だ。

海賊の多いこの場所でもらえば、その後の劣勢は確実。

「【セイントシールド】!」

しかし、アルトリッテにも盾がある。

押している状況の中でも、難なく守りへ意識を切り替えてみせた。

放たれた荒ぶる悪霊のごとき振り降ろしは、聖なる光をまとった黄金の盾によって弾かれる。

飛び散る火花。

そして大技の後には、大きな隙が生まれる。

「【装備変更】っ!」

見事な防御で身を守ったアルトリッテの横を駆け抜け、剣を振り上げる。

【狐耳】で放つは必殺の一撃。

「【ソードバッシュ】――――エクスプロード!!」

「ぐああああああああ――――ッ!!」

集まって来ていた海賊ごと、炸裂する青い炎で吹き飛ばした。

「アルトちゃん、ありがとー!」

「メイこそカッコよかったぞ! すごいスキルだな!」

金の盾を掲げて笑いかけるアルトリッテ。

メイは空いた左手でキツネを作ると、ニコッと笑ってみせた。

船長さえ倒してしまえば、後は片づけだけだ。

『起きないだろう』と運営に想定されていた、海賊船団の壊滅。

それを実現させる形でクエストの完全クリアを果たしたメイたちは、追手の船がいない海をのんびり進む。

「やはりメイの戦いはワクワクするな!」

「……船の上での戦いは予想できても、船ごと壊滅させるとは思わなかった」

「メイさんとアルトリッテさんが次々に海賊船を落として進む姿は、映画の様でした」

「あれは近接高火力のメイとアルトリッテじゃないとできないわね」

「むははははは! 最高に楽しい戦いだったぞ! やはりこの聖騎士には――――ぬはーっ!?」

船の縁でお調子に乗って、案の定海に落ちかけるアルトリッテ。

「……いつものこと」

「いつものことね」

「いつもではない! ……あ、ありがとう」

そんなアルトリッテをつかんだマリーカとレンは苦笑い。

ここは本来、大量の海賊船から必死に逃げ、船を消耗させながらどうにかこうにか進む海域。

しかしメイたちは自船のゲージを減らすこともなく、海賊船団を返り討ち。

再び穏やかな晴れ間の海を進む中で、その島を発見した。

「あの島……なんだろう」

三日月のような形をしたその島は、湾内をたくさんの船が行き交っている。

中継の島としてあるその街には武器屋やビアホールのような店が多く並び、街行く人々も海賊や貿易船の船員、商売人がほとんどだ。