軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

484.お茶会クライマックス!

「こちらストレートでございますっ」

メイがそう言ってポットを持ち上げると、いーちゃんがすかさずカップをセット。

見事な連携で紅茶を注ぎ、ふわっとお辞儀して踵を返す。

会場の給仕はメイとツバメが中心になって、見事に仕事を捌いていく。

そこにレンの助けも入れば、もう盤石だ。

アルトリッテも「エクスカリバーは近いぞ!」と気合を入れて、会場を駆け回る。

見事な運びで進んでいく、グレイシア家のお茶会。

「……ローストビーフの火加減はこれでいい。茶葉は……ちょっと多い」

魔法石による火加減は問題ないものの、若干【技量】によるサジの加減が難しい。

もう少しだけスムーズにできればと、少し慌て気味のマリーカ。

「マリーカちゃん」

そんな姿を見て、メイはキッチンに入り込む。

「こちらをどうぞっ!」

取り出したのは、技量値上げの【グレープ】を三つほど。

「……助かる」

「わたしは【敏捷】にしようかなっ」

そう言ってメイも、【オレンジ】を三つ取り出した。

「あら、仕事中につまみ食いかしら」

「ひゃあっ」

そこにやって来たのはレン。

「私も敏捷上げの【オレンジ】使っておくことにするわ」

尻尾をブルブルさせて驚くメイに笑いながら、【オレンジ】を手に取った。

「では、私は技量上げの【グレープ】を」

「なんだなんだ、何をしているのだ?」

タイミングよく集まってきたメイドたちは、メイド長にバレないようこっそりフルーツを手にする。

「盗み食いメイドね」

「てへへ」

「本当にメイド仲間のようです」

「うむ! まったくだな!」

アルトリッテも一緒に【敏捷】を上げて、気合を入れ直す。

「よーし、後半戦もがんばろうではないか!」

「「「おーっ!」」」

「ぜひ、そうしてください」

「「「「「ッ!?」」」」」

こっそり取る、わずかな休憩。

危ういタイミングで様子を見にきたメイド長に、五人は笑い合いながら持ち場に戻っていく。

「こっちの要求を少し飲んでくれるだけいいんだよ! それくらいできんだろうが!」

すると突然、一人の男が声を荒げ始めた。

貴族にしてはガラの悪いその男は、凛々しい面持ちの貴族NPCを問い詰める。

「そのような悪事に加担することはできない」

しかし相手の貴族は、それをすげなく突っぱねた。

どうやらガラの悪い男が、悪事の共謀を持ちかけているようだ。

「そうかよ……そういう事なら、力づくで受けてもらうしかねえなぁ! お前ら!」

「「「おう!」」」

現れた五人の男たちは、各々武器を手に取った。

パーティ会場に流れ出す、騒然とした空気。

「ここが山場みたいね! いきましょう!」

この事態に、意識を張っていたレンはすぐさまクエストの方向性を把握。

「大きなスキルと魔法は禁止。移動スキルなんかも衝突を起こさないよう気を使った方がいいわ!」

「りょうかいですっ!」

「了解しました!」

「うむっ!」

すぐさま動き出す四人。

「【電光石火】!」

手前の悪漢を、ダガーを手にしたメイド姿のツバメが斬り抜ける。

「【キャットパンチ】パンチパンチ!」

その横を小走りで駆けていったメイは、短剣をかわして猫パンチで男を打倒。

「【投擲】!」

くるっと回転したツバメが投げた【ブレード】が三人目の男に刺さり、スキルの使用を強制停止。

「助かるわ! 【魔力剣】!」

動きの止まったところを、わずかに遅れて駆け込んだレンが魔力の刃で斬り倒す。

「【ファイアボール】!」

四人目の男が放つ魔法攻撃。

それは貴族たちを巻き込むこともいとわない、悪辣な炎球砲だ。

「させるかーっ!」

アルトリッテはこれを、あえて喰らうことで受け止めてみせた。

この時すでに、四人目の男の前にはツバメの姿。

「【アサシンピアス】」

突き刺すダガーが、男を一撃で打倒する。

「きゃあっ!」

あがる悲鳴。

五人目は人ごみに紛れる形で場所を移動していた。

その狙いはお嬢様。

この一撃を防げるかどうかは、クエストの可否に大きく関わってくる。

最後の難関はどうやら、早い判断も求められるようだ。

しかし今のメイたちは、4人と1匹。

小さな使い魔は、人々の足元を駆け抜けられるのが強みだ。

「うおおっ!?」

イタチのタックルが、男を小さくのけ反らせた。

生まれる、わずかな隙。

「優雅ポイントがどうなるか危ういけど、けが人出すよりマシと信じて――――メイっ!」

「おまかせくださいっ! 【バンビステップ】【ラビットジャンプ】【アクロバット】!」

メイは貴族たちの頭上を、華麗な伸身宙返りで飛び越える。

着地と同時に、繰り出された短剣の二連撃を華麗にかわし、【キャットパンチ】を三連発。

そして偶然HP1だけ残った敵の前で、メイド服のスカートを大きく揺らして一回転。

「それーっ!」

その顔面に、猫の尻尾を叩きこんだ。

倒れ込んだ男は、そのままバーンと大きくテーブルを叩くような形で倒れ込む。

「【加速】」

跳ね上がるティーセット。

これをツバメが、トレーに受け止める形で見事に回収。

一個だけ大きく跳ねて、取り損ねてしまったカップは――。

「……間に合っ……おぼふ」

騒ぎを聞いて駆けつけてきたマリーカが、これをスライディングキャッチ。

身体の大きなマリーカが小さなティーカップを手に、滑った勢いで再び壁にぶつかる姿を見て、レンはさすがに噴き出してしまう。

だが最後の『意地悪』と言っていい仕掛けである『跳ね上がったティーセットの回収』まで含めて、お茶会の仕事はこれ以上ない完璧な形で片付いた。

アルトリッテは思わず「やったーっ!」と拳を突き上げる。

「チッ、覚えてろよ!」

男は仲間を連れて、そそくさと屋敷から逃げ出していった。

「なんということだ……! グレイシア家のメイドは素晴らしい!」

すると貴族たちの間から、拍手が鳴り始める。

それは一気に広がり、喝采へと変わっていく。

「大したものだ! 我が家にもこんなメイドがいてくれれば……っ!」

「一体どのようにして、このような優秀なメイドを見つけたというのだ……!」

貴族たちは盛大な拍手と共に、賛辞の言葉を投げかける。

これにはグレイシア家の面々も、鼻が高そうだ。

「冒険者ですし、戦闘能力が高いことは予想しておりましたが……まさかここまでとは」

やって来たメイド長は、大きくうなずいた。

「メイドとして給仕をこなすだけでなく、お客様の顔を立て、そして時には守る。お見事と言う他ないようです」

「ありがとうございますっ!」

「片づけは私たちで行います。貴方たちは控室にて待っていてください……聞いていただきたい話があります」

そう言い残して、メイド長は去っていく。

「……これ、ミッションじゃない?」

まだ倒れたままのマリーカに、手を差し出すレン。

どうやらお茶会クエストで一定以上の成果を出したパーティには、続くミッションが用意されているようだ。