軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

470.野生の王者と仲間達

「いやー、野生児ちゃんマジで強えんだけど……」

そう言いながらもアンジェラは、メイに妖刀を向け勝ち気な笑みを浮かべる。

「でも新大陸をもらうのは、このあたしだから」

「そうはさせませんっ! 島のみんなは、わたしが守りますっ!」

視線がぶつかった瞬間、アンジェラが走り出す。

「こっからは全力でいっちまうから、覚悟しなぁぁぁぁー!」

得意の【縮地】で、一気にメイとの距離を詰める。

「【妖気発勝】!」

HPを喰い、煌々と輝きだす【村雨】

それは刀による攻撃の全てが、威力を向上する武器スキル。

「【縮地】【瞬殺】!」

駆け抜けていく剣閃が、赤い軌跡を描く。

パリィ対策に『降りおろし』を控え、その分『突き』を多く含んだ攻撃で攻める。

「よっ、それ、よいしょっ!」

メイが速い攻撃をかわして、バックステップで距離を取ると――。

「まだまだまだぁ! 来なよ【四王炎魔】!」

「わあっ!?」

アンジェラを囲むようにして現れる、四体の炎魔。

「爆破!」

「あわわわっ!」

「――は、まだいいか」

そう言って、ニヤッと笑う。

「【縮地】【瞬殺】!」

「えっ? うわわわーっ!」

高速接近からの斬り抜けをギリギリでかわすと、アンジェラはそのまま反転。

「【見返り鬼刃】【瞬殺】!」

「【装備変更】【アクロバット】!」

そこへさらに、炎魔の火剣降りおろしが続く。

「【アクロバット】からの【アクロバット】ーっ!」

メイはバク転三連発で、これを回避する。

すると今度は、炎魔たちが同時に業火の剣を掲げた。

どこで爆発するか分からないという脅威の中、迫る四体の同時攻撃に対して――。

「【裸足の女神】っ!」

炸裂する爆炎の斬撃を置き去りに、超高速移動で駆け抜ける。

するとその先で、アンジェラは静かに妖刀を鞘に納めた。

「……?」

ここで刀をしまう意味が分からず、メイはわずかに困惑する。すると。

「――――【明王斬華月】」

「えっ? ええええ――っ!?」

再び妖刀を抜くのと同時に、百を超える高速斬撃が一斉に放たれる。

多重の網目のようになった斬撃の乱舞は、360度の全てを切り捨てる。

「うわっ!」

その一つが脚をかすめ、バランスを崩したところにもう一発。

「うわああああああ――――っ!!」

倒れ込み、転がるメイ。

これで残りHPは、互いに半分を切った。

「ここまで大技を連発したのは初めてだな……」

誰もが恐れる、トップの中のトップ。

ゲームを渡ってなお、最上位に君臨するアンジェラの強さは本物だ。

「そんじゃ、一気に終わらせるか……野生児ちゃん」

誰がどう見ても、赤髪の妖刀使いが優勢。

何よりアンジェラ自身が、勝利を確信している。

そんな中――。

「や、野生児ではございませんっ! ちょっとだけ自然と仲の良い、普通の女の子なんですっ!」

両手と尻尾をブンブン振って野生児疑惑を否定するメイに、いまだ焦りはなし。

「しょ、少々お待ちくださいっ」

なぜかアンジェラから半身を隠すように、そそっと半身を草陰へ。

「……【蓄食】」

「バナナ……?」

「野生児ではございません!」と否定をした直後に、鮮やかなバナナを両手に取り出すメイ。

【腕力】上げのアイテムを、まとめて十個消費する。

「よーし!」

これにて、準備は万端。

メイはあらためて気合を入れ直す。

「お待たせいたしました!」

そう言ってぺこりと頭を下げ、走り出す。

「それではいきますっ! 【バンビステップ】!」

「叩き斬れ! 【四王炎魔】!」

アンジェラは即座に炎の魔神たちを動かす、数的優位を取った。

動き出した炎魔が、炎の大剣を振り上げたところで――。

「【ソードバッシュ】!」

「はあっ!?」

ジャングルに響き渡る轟音。

駆け抜ける嵐のような壮絶な衝撃波が、炎魔四体をまとめて消し飛ばした。

「【ソードバッシュ】! からの【ソードバッシュ】!」

「な、なんだよこれっ! 威力が狂ってんだけど! 【縮地】! 【縮地】ィィィィ!」

吹き荒れる衝撃波は、ただ立っていることすらままならない。

基礎技とは思えない猛烈なその威力に、アンジェラは慌てて距離を取る。

「【モンキークライム】!」

しかしメイは一気に木をかけ登り、そのまま枝をかけて跳躍。

「【裸足の女神】!」

「うおおっ!?」

着地と同時に、短距離の超高速移動であっという間に懐に入り込んだ。

「【フルスイング】!」

「おおおおおお――――っ!?」

基礎技である【フルスイング】では考えられないような壮大なエフェクトと共に、叩きつけられる剣。

これをスレスレでかわすと、地が割れ土が天高く舞い上がった。

「と、とにかく一度、距離を取って――!」

迫り来る災害のような攻勢に、アンジェラは退避を決断。

大急ぎで動き出すが、傾き伸びた木々の枝が、網の様につながり道を塞ぎだす。

「なんだよこれっ!? こんなのさっきまでなかっただろ!」

立ちはだかる木々の檻に、逃走は不可能。

「仕方ねえ! 来い! 四王――」

アンジェラは爆発させるつもりで、炎魔を呼び出そうとするが――。

「なっ!?」

草むらから飛び出してきた豹の体当たりによってキャンセル。

さらに鷹が爪で迫り、棍棒を持った猿が接近。

「冗談じゃ……ねーぞっ!」

見事な連携をどうにか回避すると、そこに飛び込んでくるのはメイ。

剣の振り降ろしから、斬り上げ、そして振り払いへと続くシンプルな連撃は、風切り音すら嵐のような爆音を響かせる。

「おいおいおい! ただの攻撃でこれかよっ!?」

これを必死に避けると、メイは『目先を変える』ため倒木に手を伸ばし――。

「【ゴリラアーム】!」

そのまま叩き付けにいく。

「しゅ、【縮地】ィィィ!!」

渾身の横移動でかわすと、さらなる前進から振り降ろされる大木。

「どんな攻撃なんだよそれはーっ! うおっ!?」

突然飛び込んできたトラの体当たりに、アンジェラは体勢を崩された。

「それええええええ――――っ!」

メイはさらに前進、倒木を全力で降り抜く。

「うおおおおおお――――ッ!?」

アンジェラは土煙を上げて転がり、倒れ伏す。

するとそのまま一回転、メイは勢いに乗せて倒木をぶん投げた。

「ぐああっ!!」

これをどうにか転がって回避したものの、地面に突き刺さった倒木が地面を掘り返し、アンジェラはまたも地面をバウンド。

慌てて上げた目に映るのは、右手を突き上げたメイの姿。

「――――それでは。おいでくださいませ、狼さんっ!」

魔法陣から吹き上がった白煙の中から現れたのは、巨大な雪狼。

吹雪をまといながら猛スピードで密林をひた走り、そのままアンジェラへ飛び掛かる。

「お、おおおおおお――――っ!?」

獲物をくわえた白狼が天を向くと、そのまま氷雪の爆発が吹き上がった。

吹き飛ばされたアンジェラは凍結を取られ硬直。

「――――続きましてクマさん、よろしくお願いいたしますっ!」

メイはさらに召喚を続ける。

魔法陣からせり上がって来るのは、巨大なクマの親子だ。

「そいつはさすがに欲張りすぎじゃね!? 二連続の大型召喚なんてさぁ!」

毛皮のマントに石斧と石槍という、野生児リスペクトスタイルで走り出すクマ親子。

だが隙間となった時間の長さは、凍結の解除を間に合わせた。

アンジェラは安堵の息をつきながら退避に動き出す。しかし。

「……なんだ、お前?」

虚空から突然、目前に姿を現したカメレオン。

あまりに唐突、そして敵味方も分からない状況に判断が追い付かない。

「ど、どこから来たんだよ! うおおおおーっ!?」

長い舌の一撃が、アンジェラを弾き飛ばす。

思った以上に強烈な守護獣の攻撃に地面を転がり、それでもどうにか体勢を立て直した瞬間。

すでにクマは空中にいた。

「マジ……かよ……っ! 召喚がつながるってなんだよそれ――――ッ!!」

石斧を放り出し、叩き付ける【グレイト・ベアクロー】

「【身代わり悪鬼】ィィィィ!!」

これをどうにか防御スキルでダメージ減とするが、その勢いにアンジェラは木の幹に叩きつけられた。

「みんな、ありがとーっ!」

召喚と召喚の間をカメレオンがつなぎ、生まれたまさかの三連撃。

メイは帰っていくクマと狼、消えるカメレオンに大きく手を振って見送る。

「なんだよなんだよ、なんなんだよっ! この森が、島が……野生児ちゃんの味方なのかっ!? イベント最後まで温存してきた【身代わり悪鬼】もあと一回しかねーし。こんな事になるとか聞いてないんですけど!」

残りHPは残り2割を切った。

まるでこの大陸の全てが敵になったかのような感覚に、思わずうろたえるアンジェラ。

見れば今も、ヘビやワニが隙をうかがっている。

「止めらんねーよ、こんなの……っ」

【蓄食】状態のメイに、木々や動物たちまでもが味方するという状況に、つい本音がもれる。

「でも……勝敗は別だかんな」

それでも、アンジェラは立ち上がる。

「来なよ! 【四王炎魔】!」

それはやりすぎだろと言われた、アンジェラの奥義の一つ。

「焼き尽くせぇぇぇぇ!!」

四体同時に炸裂させれば、大ダメージは確実。

そのまま追撃に向かえば、逆転勝利もありうる。

自爆前提の炎魔をたちを先頭に、駆け出すアンジェラ。しかし。

「がおおおおおおおお――――っ!!」

【蓄食】によって威力を上げた【雄たけび】が、四体の炎魔を粉々に吹き飛ばした。

「それが、どうしたァァァァ!! 【妖気発勝】【縮地】! 【瞬殺】【瞬殺】【瞬殺】! 【縮地】【見返り鬼刃】【明王斬月】――――ッ!!」

決死の攻勢は、容赦のない神速乱舞。

赤い稲光を走らせる超高速斬りの三連発から裏回り、そして反転からの高速斬撃飛ばし。

目にも止まらぬ斬撃の嵐に、メイはしっかりと目を凝らす。

突きを足の運びでかわし、振り払いを身体の傾けで避け、斬り抜けをしゃがんでやり過ごす。

そして『振り返ってからでは回避』が難しい反転斬撃は――。

「【アクロバット】!」

なんとアンジェラに背を向けたまま、ノールックのバク宙一つで飛び越えた。

「大したもんだよ……っ! 間違いなく、これまで戦った誰より強え!」

覚悟を決めたアンジェラは、妖刀を鞘に納める。

「【妖気発勝】」

妖刀に宿る赤い閃光。

HPを吸わせた【村雨】は、威力を向上。

「【瞬殺】」

さらに妖刀を使った攻撃の速度も上昇。

「いくぞ……」

振り返ったメイを見据えて大きく息を吸い、再び妖刀を引き抜いた。

「【明王斬華乱月】だああああああ――――ッ!!」

【妖気発勝】による威力向上と、【瞬殺】による速度上昇を乗せて放つ、最高速の斬撃乱舞。

それはアンジェラの持つ全てを使い切っての最終奥義。

圧倒的な速度と威力を誇る赤光の乱舞を目の当たりにして、生き残った者などいない。

まごうことなき『必殺』の一撃だ。

「いきます。全身全霊……全力全開っ!」

そのすさまじさを前に、メイも覚悟を決める。

「や、や、や……【野生回帰】だぁぁぁぁぁぁ――――っ!!」

発動と同時にメイの防具が全て外れ、インナー姿になる。

装備は【猫耳・尻尾】を残すだけ。

「【裸足の女神】!」

ドン! と爆音を鳴らし、衝撃波を巻き起こすほどの超加速。

わずかな身体の傾けで斬撃のわずかな隙間を駆け抜け、放たれた超高速の乱舞を置き去りにして、一気に敵の懐へ走り込む。

「……マ、ジかっ!?」

「【フルスイング】だああああ――ッ!!」

「【身代わり悪鬼】ィィィィ!!」

どうにかスレスレでHPを残すが、アンジェラは十数メートルに渡って弾かれた。

大慌てで体勢を立て直そうとするその目に映るのは、メイの背中を飛び越えてくるイタチ科の姿。

「うおおおおっ!?」

巻き起こした爆風が、アンジェラを転倒に追い込む。

「それでは――――何卒よろしくお願いいたします!」

この隙に呼び出したのは、大空を舞う召喚獣ケツァール。

するとその『通り道』を開くかのように、木々が一斉に避けていく。

そのままメイをひろい上げると、月の浮かぶ夜空高くへと舞い上がった。

「……ッ!?」

起き上がったアンジェラが、顔を上げ驚愕する。

そこには、すさまじい勢いで落ちてくるメイの姿。

「……なんだよ。なんなんだよこれ……! マジでぇぇぇぇ――――っ!!」

「ダイビング【ソードバッシュ】だああああああ――――ッ!!」

「うおおおおおおおお――――ッ!?」

その一撃は島全ての木々を激しく鳴らし、密林の奥地で戦うテーラ組プレイヤーの髪を、フロンテラ船団のマストまでをも大きく揺らした。

HPの全てを失ったアンジェラは、静かに目を閉じる。

驚異的な激しさを見せた最後の戦いは、メイの勝利で幕を閉じた。