作品タイトル不明
468.混戦Ⅲ
「さあさあさあ、勝負だぁぁぁぁーっ!」
フロンテラ陣営リーダー、妖刀のアンジェラの登場と共に始まる最後の戦い。
「野生児ちゃんさえいなければ、勝負は分からないわよぉん」
そう言って手にした大鎌を肩に担いだキュービィの背後には、白竜が控える。
メイの相手は、アンジェラが引き受ける形を取るようだ。
「うまいことやるわね。でも『考える時間』はしっかりもらったわ」
ヘビたちの目も、今も変わらずそこにある。
もうこれまでのような、一方的な展開は望めないだろう。
「私も準備ができました」
「それじゃあそろそろ、勝負を付けましょうかぁん……アビヤードちゃん!」
「シャアアアアアア――――ッ!!」
キュービィが白竜をレンを差し向けることで、再開する戦い。
「ッ!」
【凍結嚙みつき】を必死のバックステップでかわし、縦の尾撃を横っ飛びで回避する。
するとそこを狙って飛び掛かって来るのは、二匹目の白竜。
「さあ、どっちが本物かしらねん。この勢いじゃ、ヘビを確認する余裕もないでしょぉん?」
動きも早く、攻撃範囲も広い白竜が二体。
近接での戦い、やはりレンには分が悪い。
「それなら、こういうのはどうかしら!」
するとレンは大きく跳び下がり、その場に足を止めた。
当然白竜はこの隙を逃さない。
「ッ!!」
飛び掛かってきた白竜の尾が、そのままレンに直撃。
しかしダメージはなし。
そして続く本物の個体が、レンの前に飛び込んだ瞬間。
足元から爆炎が激しく噴き上がった。
「狙い通り! 【設置魔法】に【幻術】は関係ないみたいね! 【フレアバースト】!」
『幻術』の設定は、あくまで『敵の感覚』に対して有効。
ならば『踏み込む』ことでも起動する【設置魔法】は、本物と偽物を判別するスキルとなる。
レンの爆炎二連発に吹き飛ばされた白竜のHPは、一気に4割ほど減った。
「ツバメ、お願いっ!」
「はいっ!」
白竜を任せることができれば、キュービィとの戦いはかなり楽になる。
勢いのままに、動き出すツバメ。
「【疾風迅雷】【加速】」
「ええっ!?」
突然姿を消したツバメに、驚く二人のキュービィ。
【暗転のブーツ】は高速移動の動き出しと終わり際以外、使用者の姿を消してしまう。
「【加速】【電光石火】!」
姿を消すツバメの前に困惑するキュービィを、切り裂く一撃。
幻影が消えるのを確認したツバメは、すぐさま残った本体に狙いを付ける。
「【電光石火】!」
「【流転避行】!」
キュービィは慌てて瞬間移動スキルで回避。
再び【幻術】で二人に分かれる。
「【疾風迅雷】【加速】!」
どちらが狙われるのかは、消えたツバメが現れるまで分からない。
これによってキュービィは、一気に後手に回る。
「【加速】【電光石火】!」
「【流転避行】! もう一人っ!」
二人ではもたないと確信したキュービィはここで、消費が多くクールタイムの長い『三体目』の幻影を起動。
しかしツバメはここで、ヘビの視線を確認。
「そこのキュービィさんが本物です……っ! 【リブースト】!」
「ッ! 【首狩り一閃】!」
放つカウンターは、まさに首を斬りにいくような角度の斬撃。
しかしツバメの選択は意外にも、接近ではなく『様子見』の横移動。
「うそぉん!?」
キュービィの大鎌は、虚しく空を斬る。
「【跳躍】【アクアエッジ】【四連剣舞】!」
「ッ!!」
続く乱舞。
これを似つかわしくない必死の飛び込みで、かすめるにとどめた。
「……まずいわねぇん」
戦況は完全に、ツバメたちに傾き始めている。
「こっちも決着をつけないとね。対策はもう思いついてるんだ!」
「そう上手くいきますかな! 一斉掃射【同時撃ち】!」
「【ラピッドワン】【回転跳躍】【裂空一矢】!」
放たれた矢が、摩訶羅那の胸元を貫いて木の幹に突き刺さる。
そして消された【幻術】をかけ直す余裕は、今のキュービィにはない。
放たれた魔力砲を大きなステップでかわし、ローランはすぐさま新戦法で攻める。
「【ヴァニシング】【速射】!」
「くっ!」
「【ラピッドワン】【ヴァニシング】【五矢撃ち】!」
「やっかいな……っ!」
消える矢の連射。
こうなってしまってはもう、発動のタイミングが大事なローブは役に立たない。
見えない矢は次々に身体をかすめ、HPを削っていく。
それでも摩訶羅那は、矢を放たれるたびに回避行動をとるしかない。
矢の攻撃判定の狭さを信じて、ひたすらに駆け回る。しかし。
「【ラピッドワン】【ヴァニシング】【速射】!」
大きなステップから放つ三連射。
ローランはこれをあらかじめ、『回避するであろう方向』を予期して矢を放っていた。
【爆裂矢】で射た一撃は見事、摩訶羅那を捉えて炸裂。
「なああああ――っ!!」
そして慌てて体勢を立て直そうとする摩訶羅那が顔を上げると、ローランの視線はあさっての方向を向いていた。
その先にあるのは、本物のキュービィを見るヘビの姿。
「【ヴァニシング】【裂空一矢】【バーストアロー】!」
「キュービィ殿! 避けてくだされ――っ!!」
「なぁにぃ? ……きゃあああんっ!?」
不可視の矢を喰らい、吹き飛ばされるキュービィ。
もはや視認も許さないローランとツバメの攻撃に、いよいよ七新星コンビは混乱し始める。
「【加速】」
迫るのは、移動方向が見えない暗転状態のツバメ。
現れたかと思えば、即座に【リブースト】で再び姿を消した。
追い込まれた、完全な窮地。
「……でも」
キュービィの目が怪しく光る。
「これで終わりよぉん」
ツバメが必殺の一撃を狙いにくる瞬間を、狙っていた。
「――――【死神】」
高速移動での飛び込みに、置くような形で放つ斬撃スキル。
「「ッ」」
これまで見たこともない、空間を切り裂く白黒のエフェクト。
放たれた超近接用スキルの『成立距離』は、非常に狭い。
重い大鎌で、敵の半径50センチ以内まで接近しないと成功しない必殺スキルは、もちろんそれだけ高火力。
重装の前衛すら屠ってしまう一撃がカウンターで決まれば、アサシンなど即死確実だ。
「……どう、なってるのん?」
ただし、それは直撃すれば。
確かにヒットしたはずのスキル、その手ごたえのなさにキュービィは困惑する。
「【雷光閃火】」
その目に映ったのは消えていく【残像】と、ダガーを手に駆け出すツバメの姿。
必殺の一撃をかわされ動けないキュービィに刺さった【アクアエッジ】は、猛烈な火花を散らして爆発。
「きゃああああああ――――んっ!」
大きく吹き飛び、転がる。
「マズいですぞ!」
これを見た摩訶羅那は、慌ててペンデュラムたちを差し向けようとするが――。
「させないよ! 【バーストアロー】!」
「ッ!!」
あえて木にぶつけた矢が炸裂し、炎をあげる。
視界を奪い、援護は不可能に。
そして生まれた最高の隙を、レンとツバメが見逃すはずがない。
「……【魔眼解放】」
夜闇に、右目が金色に輝き出す。
あふれ出す魔力が風を生み、長い髪を、マントを大きく揺らす。
レンは【銀閃の杖】を、起き上がろうとするキュービィに差し向けた。
「天神よ――昏き炎に燃ゆる我を見よ。其の身にまとうは魔神の祝福。覚悟せよ。暗夜に瞬く極光は、深淵宿りし者の反逆の狼煙なり――」
「――――【ダークフレア】!」
漆黒の魔力の輝きは、まばゆいほどの光を放ちながら集束。
闇色の爆炎を天高く盛大にまきあげた。
「きゃああああああ――――ん!」
HP全損。
無敵と呼ばれた【幻術】を破られたキュービィは、黒の炎に焼かれて消えた。
「幻術士と特異型魔導士が組んで、一方的に惑わされるとは……こんなコンビネーション聞いたこともありませんぞ……っ!」
驚愕に唖然とする摩訶羅那。
三人は即座に、残った魔導士を撃ちにいく。
「【連続投擲】!」
「【誘導弾】【フレアストライク】!」
「くっ!」
摩訶羅那は四つの【ブレイド】を、必死のダッシュでかわす。
しかしそれに続く『曲がる炎砲弾』に腕を弾かれて大きく体勢を崩した。
「これで決めるよ! 【ヴァニシング】【バーストアロー】!」
最後を締めるのは、ローランの一撃。
摩訶羅那はイチかバチかで【竜鱗のローブ】を振るう。
「……ここまでの、ようですな……無念」
しかし消える矢にタイミングを合わすことはできず、直後の爆発に吹き飛ばされて消えた。
「……何も聞かないで。とにかく今は何も聞かないで」
この流れの中でも『レンがしてる詠唱ですよ』をしっかり演出したツバメによって、困惑の視線を向けてくるローラン。
「ええと、その……カッコいいと思うよ?」
「だから違うのよ! お願いだからその優しい笑みを止めてーっ!」