軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

456.第二のクエストを終えて

「…………帰ろう」

ようやくレンたちを見つけることに成功したアトラクナイアは、そうつぶやいて踵を返す。

歩いて探すこと自体も難しかったが、たどり着いた時にもう戦いが始まってしまっていたのが大きかった。

「遅刻した時、教室に入りづらい感覚に似ている」

マイペースなアトラクナイアだが、こういう時だけはなぜか妙に気を使う。

握り締めたままでいる変わり種の武器【幻燈錬機】をしまい、来た道をそそくさと戻っていくのだった。

「メイ、早かったわね!」

「おかげで助かったぜ!」

レンと金糸雀はどうにかココを倒し、キュービィを撤退させることに成功。

二人は自然と、互いの武器を掲げ合う。

「あっ! ツバメちゃんたちも戻って来たよ! おかえりなさーい!」

「ただいま」

「ただ今戻りました」

こうして無事、テーラ陣営に遠征組が帰還。

『――――ただいまをもって、第2クエスト『起動キー』の確保を終了いたします』

『――――勝者はテーラ陣営』

「やったー!」

一連の戦いが終わり、再度集まったテーラ陣営はクエスト達成に歓喜する。

圧倒的不利から始まった戦いの、見事な逆転劇。

うれしそうに拳を突き上げるメイに釣られて、皆も思わず拳を上げる。

「【設置魔法】にハンマーで敵を叩き込むの、めちゃくちゃ気持ちいいよな」

「フォロースルーが、完璧にゴルフのスウィングだったわね」

「グラムちゃんの槍がバンバン飛んで、魔法がドーン! って決まったんだよ! すごかったよー!」

「ふん、当然だな。このテーラの最終兵器がいればあの程度造作もない! わっはっは!」

素直に「すごい!」と言うメイに、グラムはすぐ調子に乗る。

「ツバメちゃんの綱渡りの戦いも痺れちゃったよ! あんな抜き身の刀みたいなアサシンが暴れ回ってたら、ジャングルにしれっといるコーギーにも気づかないよね!」

「い、いえ、そんな大したことは」

「帰り道で木にぶつかって死に戻りになったらどうしようって、ちょっと緊張したのも楽しかったね」

「本当に気を使いました……」

「ローランちゃんはコーギーになるの!? 見てみたいなー!」

「そう? それならもう一回」

頼まれると弱いローランは、レンに借りてもう一度【変化の杖】を振る。

「わあー! かわいいいーっ!」

メイはさっそく、大喜びでローランコーギーを抱きしめる。

「あはははは、メイちゃんくすぐったいよ」

ギュッと抱きしめられて、笑うローラン。

そんな二人を見て、満足げにうなずくツバメと金糸雀。

再会を果たした六人は、キャッキャと盛り上がる。

「大型陣営の同盟に、笑いも出ないレベルの人数差。よく逆転できたよなぁ……」

「本当だよ」

「これも皆さんのおかげです! 助けていただいて、ありがとうございましたっ!」

同行組3度の『かばう』によって1ダメージも受けることなく済んだ『巫女』は、うれしそうに頭を下げる。

これには同行組も満足そうだ。

いつの間に来ていたのか、長老と不精ひげの男も安堵の息をついている。

一つ目に続いて二つ目のクエストも、完全勝利と言っていい状況だ。

「これで守り神と起動キーの二つを手に、大神の目覚めに向かうことができる。そんな感じかしら」

第二のクエストも終わって一段落。

メイたちを中心としたテーラ陣営は、ここで一つ息をつく。

「少し時間もできたみたいだし、各自のスキルとか戦い方なんかを確認しておきましょうか」

「それがいいね」

「そうだ、村長にも聞いておきたいことがあるんだったわ」

レンとローランの主導で、輪になって座るテーラ陣営。

誰もがやる気十分の中、最後の戦いに向けた作戦会議がワイワイと始まった。

フロンテラ陣営は、サンタ・マリーナ号前。

白竜に乗って戻って来たのは、エジプトの女王のような姿をした妖艶な女性。

「たっだいまぁ。野生児ちゃんたち、思った以上だったわぁん」

「……おや、ココ殿はどうしたのですかな?」

「やられちゃったん」

「なんと!」

ローブにおしゃれな丸メガネ。

目にかかる長い前髪を跳ね上げて驚くのは七新星の一人、摩訶羅那。

「あのココ殿が落ちるとは……っ」

「テーラ組、何気にすっごくね?」

長い赤髪をかき上げ、足をプラプラさせながらアンジェラは感嘆する。

「あのアサシンと弓術師も、二段構えのトリックで上手に『魔獣』を倒していきましたな」

「あらん、『魔獣』ちゃんもやられちゃったのん? 探索発見、暗殺防衛みたいな戦いは、本当に見事な手腕といえるわねぇ」

「んでさぁ、こっからはどーなんの?」

「最終局面は、テーラを叩けという形になるでしょうな。守り神を味方につけた彼女たちとの真正面からの勝負になりそうですぞ」

「マジかー。でも……直接ぶつかる形なら願ったりかなったりじゃん?」

「しかも新たな情報では、あの神槍のグラムたちと同一陣営だとのこと」

「グラムたちと……ああ! あの弓術師いたなー!」

ローランの事を思い出したアンジェラは、妖刀をいじりながらうれしそうに笑う。

「てゆーか、アタシたちの本命はあくまで直接対決だし、それが一番好き」

「まったくですな」

「その通りよねぇん」

「守り神も起動キーも上手くもってかれちゃったけどさー、ここから再逆転すんのが一番面白いんじゃね?」

あくまでその自信は揺るがない。

七新星の中でも特に、戦闘を得意とする面々。

三人はサンタ・マリーナ号の中、始まる戦いの予感に笑い合うのだった。

「……物理攻撃が1/8になる状態でも、そのまま物理で『象』を陥落だもんなぁ。マジで力こそパワーじゃねーか」

「すごかったねえ……実際戦ってみたらまた、全然迫力が違うよー」

「これでテーラ陣営は、守り神と起動キーの両方を持ってんだよな。あの人数でどうにかしちまうとか、やっぱメイちゃんたちレベルが違うわ」

仰向けで倒れ込んだまま、ため息をつく桜子。

「桜子ちゃんお行儀悪いよー」

木に引っかかったままつぶやく瑠璃花。

自分たちを吹き飛ばした上に、『像』も難なく破壊していったメイとグラムのコンビネーションを思い出して、二人大きく息をつく。

「でも……このままじゃリーダーとして申し訳ねえからなぁ」

そう言って、「よし」と気合を入れ直す。

桜子は寝転がったまま、パンパンと二度ほど自分の頬を叩いた。

「やっぱフロンテラとの同盟はこのまま継続でいくか。なにせ手を組んでなお、少数派のメイちゃんたちにぶち抜かれたわけだし」

「それがいいね」

枝の上から、瑠璃花も強くうなずく。

「……ここからは本気で行こうぜ。全力でぶつかって、テーラは私たちが潰すんだ」

「うんっ!」

フロンテラとアングルの両陣営は再び手を結び、全軍でメイたちテーラ陣営を叩く。

意気込む桜子たち。

「……ただいま」

そこに帰って来たのは、アトラクナイア。

「やるぞ!」

「……え? なにを?」

よく分からないけど、とりあえず自分も木に引っかかろうとしていたその手をつかみ、歩き出す桜子。

そこに瑠璃花も続く。

「あたしたちだってトップって呼ばれてんだ。このままじゃ終わらない!」

「うんっ! やろう!」

「なにを……?」

困惑するアトラクナイアの腕を引き、二人は最後のクエストに向けて静かに闘志を燃やすのだった。