軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

452.特攻フロンテラ陣営

「……雨が降り出したね。これは少し助かるかも」

こくりとうなずくツバメ。

フロンテラ陣営の持つ起動キーである『魔獣』のもとへ向かうのは、ツバメとローランの二人。

「この先からかな。敵プレイヤーが張っているのは」

付近の木に登ったローランは、【鷹の目】で付近を見下ろす。

それは高い位置からであれば、遠くまで見渡すことができるという弓術師ならではスキル。

サンタ・マリーナ号の前に広がる本陣。

そこには確かに、燃えるような橙の毛並みをした『魔獣』の姿がある。

額に魔法石を持つ3メートルほどの巨犬は、その鋭い目を輝かせている。

「それとトップの二人……かなりの実力者だよ。中でもアンジェラは、グラムみたいなトップ上位クラスだと思っていいんじゃないかな」

それは一撃必殺級のスキルを誇り、さらに圧倒的に不利な状況を覆すほどの力を持つという事だ。

「しっかり本陣に残られてるのは、なかなか厳しいなぁ。私たちが二人で正面から戦いに行っても難しい感じだね」

「そんなに強いのですか?」

「一、二年前にグラムと一度ぶつかったんだけど、どっちも引かなかったんだ。あの時と武器も変わってるってことは、今の方が強いと考えていいと思う」

「それは恐ろしいですね……」

「間違いなく、格上だね」

「あはは」と、困っているのかそうでもないのか分からない笑みを向けるローラン。

「でも、出し抜く方法もあるよ」

魔獣は敵陣本営。

しかもトップ上位の格上プレイヤーが残っている状況。

厳しい事態にしかし、ローランは「大丈夫」と爽やかな笑みを浮かべる。

「直接戦うのだけが、やり方じゃないからね。今回はジャングルっていう場所なのもすごくいいよ」

そう言って、ポニーテールを揺らしながら少年の様に笑う。

「普段とは違うパーティでのミッションなんて、ワクワクしちゃうなぁ」

ここまでくる間に、お互いのスキルを確認してきた二人。

ローランはレンから借りたアイテムも踏まえて、この難局を乗り切るつもりだ。

「それにしてもメイちゃんは、相変わらず可愛かったね」

ブンブンとうなずくツバメ。

ずっと緊張していたが、この一言だけでなぜか上手くコンビネーションを取れそうな気がしてくる。

「それじゃいこっか」

「はい」

ローランの爽やかな笑みに見送られて、ツバメが動き出す。

「まずは派手にいかせてもらおうかな――――【裂空一矢】」

それは弓による超長距離攻撃を可能とするスキル。

「【バーストアロー】!」

そして着弾と同時に高火力の爆発を起こす、ローラン必殺の一撃。

放った矢は流星のような軌道で突き進み、そのままフロンテラ陣営の一団に直撃。

防衛に当たっていたプレイヤーを吹き飛ばした。

「攻撃!? おい、どこからだ!?」

「遠距離からだ! 方角は北東という事しか分からない!」

「でもどうして!? 同盟はどうなったんだ!?」

「あくまでアングル陣営との同盟は口約束だからな。裏切って動くヤツらがいてもおかしくはねえ!」

さすがに窮地の中にある少数のテーラ陣営が、攻撃を仕掛けてきているとは思わなかったようだ。

「とにかくこれだけの威力がある攻撃を、長距離から確実に狙い撃てる弓術師はやっかいだ! 一気に叩くぞ!」

「「「おう!」」」

敵陣はこれまで以上に『外』からの攻撃に向けて意識を割くことになる。

すぐさま動き出す、いくつもの部隊。

「もう一発! 今度はコンビネーションだよ! 【三連射】【裂空一矢】【バーストアロー】!」

三連続で放つ矢が、一斉に空を駆ける。

「「「うおおおおおおお――――ッ!!」」」

この時点ですでに複数の部隊を半壊させたローランの凄まじい弓さばきに、誰もが慌て出す。

そして降りしきる雨と、炸裂する矢に意識を割かれたフロンテラ陣営は、すれ違う【隠密】状態のアサシンに気づかない。

サンタ・マリーナ号前の本陣。

そこにいたのは、フロンテラ陣営のリーダーである赤髪のアンジェラ。

隣の丸メガネにローブ姿の少女、摩訶羅那が杖を掲げる。

「念のため、注意して付近を見ておく必要がありますな」

突然の奇襲による騒がしさに視線を走らせ、耳を澄ます二人。

どちらもトッププレイヤー。

気づかれれば、そこで終わりだ。

ツバメは【隠密】を維持したまま、二人の横を通り抜けていく。

【忍び足】によって足音すら鳴らないその接近は、感覚を鋭く設定されている『魔獣』でも気づかない。

「【サクリファイス】」

そして、接敵。

「――――【アサシンピアス】」

緊張の中、HPの7割を犠牲にしての一撃は見事に炸裂した。

「ッ!?」

『魔獣』は深いダメージを受け、慌てて跳び下がる。

「仕留めそこないましたか……っ!」

思ったより高かった魔獣のHPは、2割ほどの残留。

「うおおっ!? マジでー!? どこから来たんだよ!?」

「驚きましたな! ですが、袋のネズミですぞ!」

即座に手を伸ばす摩訶羅那。

その掌に、攻撃魔法の光が灯った瞬間。

「ッ!」

攻撃を取りやめ、即座に回避へ思考を変更。

直後、摩訶羅那の目前に矢が突き刺さり爆発。

砂ぼこりを巻き上げる。

「見えない距離からこんな精密なフォローしてくるとか、仲間の弓術師ヤバすぎじゃね?」

「まったくですな」

その見事な援護射撃に、感心するアンジェラ。

「――でも」

状況は二対一。

しっかり敵大将たちと向き合ってしまった状態。

HPを大きく減らされた『魔獣』は、身を守ることを優先して背後のコンテナに身を隠した。そして。

「もうここから逃がさねーし、帰さねーかんな」

勝利を疑わない強い笑みと共に、赤髪のアンジェラが立ち上がった。