作品タイトル不明
450.天地無双
そこは新大陸、ジャングルの奥地。
石で造られた砦の前には、青の旗を掲げたアングル陣営の一団。
「守り神は、古き思考に囚われたテーラの者たちに奪われた! だが大神は外洋の者たちにも、テーラにも渡さない! 我らが手にし、この地の覇者となるのだ!」
「「「おおーっ!!」」」
「そしてこの島を巨大な王国に変え、やがて世界を奪いに……っ」
大陸の全てを奪い、外海を侵略する。
青の陣営を率いるアングルチカは演説を終えると、砦の奥へと消えていく。
「なあ、聞いたか?」
「同盟の話だろ。驚いたよなぁ」
「5000人のプレイヤーと七新星3人を一人で叩いたメイちゃんの話も驚いたけど……まさか最大陣営二つが同盟を組むとは……」
「運営も予想しなかっただろうな。システム的な統合でも吸収でもなく、同盟って」
「今回はさすがにメイちゃんたちも、どうにもならんだろ……」
「単純な人数、トップの数、そして同盟を組まれてるって状況だもんな。さすがにやりすぎよ」
「しかも大神起動キーの『巫女』って多分、戦闘力はないパターンだよな」
『魔獣』は速いが目立つ。
『巫女』は目立たないし隠れられるが、弱い。
「うちの『像』は動かないし、場所が分かりやすいけど……意外だったよな」
「ああ。陣営本拠地前から場所を変えられないって聞いた時はヤバいと思ったけど、これなら」
アングル陣営のプレイヤーたちは、『像』を見てうなずき合う。
どうやら互いの『起動キー』を打倒するというこの対戦クエスト、アングル陣営はかなり自信があるようだ。
「あたしたちはこの『像』の守りだな」
「テーラへの攻めは、アトラクナイアちゃんたちにお任せだね」
両陣営からテーラを攻める者たちを排出し、同時に本拠地も守る。
アングル陣営は黒髪清楚の桜子と、お団子頭の瑠璃花が守りの任務についていた。
「まあ、大丈夫だろ」
「メイちゃんたちは攻めに転じられないだろうし、しばらくは待ち時間になりそうだね。私たちはフロンテラをどう倒すか先に考えておこうよ」
「そうすっか」
そう言って二人は、『像』の思わぬ仕様を見返して笑う。
そしてすでにその思考は、テーラ壊滅後の戦いに移っているのだった。
◆
「どっちの陣営も、『巫女』を叩くための部隊を編成してテーラに向かっているだろうな」
得意の高速移動スキル【ソニックドライブ】でジャングルを駆けながら、現状を確認するグラム。
「私たちがいち早く『巫女』のところへ戻ることが重要になるぞ」
「そうだねっ」
「容赦などしない。一気に叩き潰す!」
「はいっ! 一緒にがんばりましょう!」
指揮官を気取ってメイに状況を説明するも、真っ直ぐ笑顔を向けられてちょっと照れる。
グラムは仕切り直すように「ふん」と鼻を鳴らした。
最短でアングルの砦へ向かうため、前を行くのは案内役の鳥。
さらにメイは【遠視】で、道の途中にいる大型モンスターを素早く察知して回避する。
二人は足を止めることなく、一気に『像』のあるアングル陣営の本拠地へ向かう。
するとやがて、石作りの砦が見えてきた。
アングル陣営は同盟の約束に則り、多くのプレイヤーをテーラへ向けて派遣。
残った者たちを、いくつもの陣に分けて配置している。
「ここは右だね! ありがとうっ!」
しかし動物たちの案内で、それらは置き去りにされていく。
「……まるでこのジャングル自体が、メイの味方のようじゃないか」
驚きの声をもらすグラム。
そしてアングル陣営の前方、砦からわずかに離れた地点。
密林の一角に並んでいた一つの部隊が、ようやくメイたちの存在に気が付いた。
「あれって、神槍のグラムじゃないか……?」
「どうしてここに……? 待て、一緒にいるのは野生児のメイちゃんか……!?」
「野性児ではございませーんっ!」
メイ、【聴覚向上】というの名の地獄耳で、即座にこれを否定。
「コーヒーもたしなむ、普通の女の子ですっ!」
「お、おい見ろ! 二人とも緑の腕章だぞ!」
「ウソだろ!? メイちゃんとグラムが……共闘!?」
まさかの展開に、アングル陣営は総立ちになる。
「う、嘘だよな?」
「それはさすがに嘘だよなぁぁぁぁ!?」
「ていうかなんでこの状況で、攻めて来られるんだよッ!?」
考えうる限り最悪と言えるコンビの襲来に、誰もが目を疑う。
「お、応戦しろ! とにかくここを通すな!!」
「ふん」
慌てふためきながらも戦闘態勢に入るアングル陣営の一団を見て、グラムは軽く笑う。
「止められるものなら……止めてみろ! 【ソニックドライブ】!」
そのままアングル前衛集団懐に飛び込み、神槍グングニルを突き出した。
「【クインビー・アサルト】!」
砂煙を上げながら放つ一撃は、シンプルな直線突き。
穂先から放たれた閃光が炸裂し、猛烈な衝撃を放つ。
「「「うおおおおおおおお――――――っ!!」」」
「すごーい!」
紙屑のように消し飛ぶ、大量の前衛たち。
巻き起こったすさまじい爆発は、ヤマトの時よりもさらに威力を上げていた。
「「「オラァァァァァァ――――ッ!!」」」
しかしその隙を突いたアサシンたちが、木の上から飛び掛かってくる。
その数は三人。
そして神槍は振り切った直後。
ここから構え直すのでは、もう間に合わない。
「【雷煌砲】」
空いた左手から放つ強烈な雷光は、まとめて三人を消し飛ばす。
グラムにとってこの程度の襲撃は、脅威でも何でもない。
「くっ! 仕方ない、リーダーたちに連絡を――!」
グラムの勢いに、報告へ動くアングルプレイヤー。
「知ってるぞ! この木々の中じゃ、得意の速い直線移動スキルは邪魔でしかないんだろっ!」
「カチーン」
そんな煽り文句に、ハッキリと顔を引きつらせる。
ヤマトではメイが街に作りだした森によって、散々な思いをしたグラム。
「【ソニックドライブ】――――【強制転回】!」
「なにっ!?」
血眼になって探した移動スキル中の『方向転換』で、迫る木をかわす。
「感謝するがいい。お前だけのために使ってやる! 【斬空閃花】!」
放つのは容赦ない、6連の斬撃。
「うおおおおおお――――っ!!」
グラムを笑ったアングルプレイヤーは、6発全部を1人で喰らって消えた。
「止めろ! 止めろォォォォ――――ッ!!」
「『像』には近づかせるな!」
ここでメイたちの特攻に気づいた付近のアングルプレイヤーの一団が、一斉に迫りくる。
「いくぞメイ! 【ソニックドライブ】!」
先んじて範囲攻撃を放とうとする敵陣営を前に、上方への速い跳躍。
その下に駆け込んできたのはメイ。
「おまかせくださいっ! 【ソードバッシュ】!」
突き進む衝撃波が、アングル陣営を吹き飛ばして道を作る。これだけでは止まらない。
「くらえ……【グングニル】!」
重い破裂音を鳴り響かせての投擲と、走る閃光。
直弾と同時に巻き起こった爆発が、暴風を巻き起こす。
「こんなの、どうやって止めろって言うんだ……!!」
戻ってきた槍を取り、駆けるグラムとメイは砦の前へ。
止まらないその勢い。
居並ぶ前衛プレイヤーたちも、グラムとメイの前にはただの的でしかない。
「おいおい、マジかよっ!?」
「メイちゃん!? それに神槍のグラムまで!?」
まさかの事態に、慌てて顔を上げる桜子と瑠璃花。
アングル陣営のトップ二人の背後には、魔神のような姿の『像』
降り出す雨と、動き出す敵陣営のリーダーたち。
「雨などでは止まらんぞ。このまま叩き潰す。いくぞメイ!」
「りょうかいですっ!」
しかし二人は止まらない。
敵陣営リーダーたちの登場すら意にもかけず、手にした武器を構えた。