作品タイトル不明
449.超・少数精鋭
長い金髪を雑に結んだ、ちょっと不良っぽい雰囲気の少女。
胸元を守るしっかりとした鈍い銀色のチェストアーマーに、大きめのガントレット。
紋様入りの巨大ハンマーを振り回す彼女の名は、金糸雀。
その隣にいるのは頭部と脚だけに西洋鎧を装備した、ポニーテールの少女。
爽やかな笑顔が特徴の洋弓使い。高速射手のローラン・アゼリア。
そして、見た目は12、13歳の長い白髪少女。
ひざ下までの黒いコートに黒銀の部分鎧。手にした武器は白金の長槍【グングニル】
神槍使い、グラム・クインロード
彼女たちとは、以前ヤマトで行われた大型対戦イベントでそれぞれ『天軍』『地軍』としてぶつかった間柄。
トッププレイヤーたちの中でも、その戦闘能力を恐れられているパーティだ。
「同じ陣営だったんだね!」
「メイちゃん、また会えてうれしいよ!」
爽やかな笑顔でよろこびを見せるのは、弓術師のローラン。
すぐに駆け寄ってきて、メイの両手を握る。
その腕に巻かれた腕章は、同じく緑色だ。
「うんうん、メイちゃんは本当に可愛いなぁ。広報誌とかPVも観たよ!」
「えへへ、お恥ずかしいです」
二人は再会を、素直によろこびあう。
「今度は同じ陣営なんだな」
大型ハンマー使いというめずらしい特性を持つ金糸雀は、ヤマトでぶつかった相手であるレンに楽しそうに声をかける。
「そうみたいね」
「得意の砲術は今も健在か?」
「もちろんよ」
その時のこと思い出しつつ、会話に花を咲かせるレンと金糸雀。
「…………」
そんな中で唯一不満げなのは、天軍将としてメイと戦った神槍使いの少女グラム。
一対一での敗北など知らなかったグラムは、緑に埋まったヤマトでの戦いに敗れたことをしっかりと覚えているようだ。
「……ふん」
完全に難色を示している状況。
そんなグラムの姿に気づいたメイは、尻尾をピンと立てる。
そしてグラムの『神槍』に気づくと、うれしそうに声を上げる。
「またあのカッコいい槍スキルが見られるんだねっ!」
「ほ……ほう?」
「グラムちゃんと一緒に戦えるなんて、楽しみだよー!」
そう言って目を輝かせるメイ。
そして顔に『まんざらでもない』が出てしまうグラム。
ここでさらにローランが耳打ちし、レンが追い打ちをかける。
「あの神槍のグラムがいるなんて、これはテーラ陣営の――――最終兵器と言えるわね」
「……ふん、当然だな!」
そして満足げ。
グラム・クインロード、いよいよ『ごきげん』が隠せなくなる。
「グラムは学校では、基本怒られてばかりだからね」
「素直に喜ばれたり、褒められたりするのにすごく弱えんだよな」
「そ、そんなことはない!」
見事にグラムを転がしているローランは、ニコニコ笑う。
「本当にしょうがねえよなぁ。先生の前では無口なくせに、こっちではやたら内弁慶だしよ」
「うるさーい! 金糸雀なんかこの前教室を出た時に先生にぶつかって『きゃっ』とか可愛い声出してただろ! あれクラスの連中笑ってたからな!」
「やめろぉぉぉぉー! それを言うな!!」
一瞬で顔を赤くして、グラムを羽交い絞めにする金糸雀。
ハンマーを振り回す豪快な彼女にも、意外な一面があるようだ。
「ちなみにローランは、誰からの人気も高い優等生な」
「納得ですね。そんな気がします」
「あはは、そんなことないよ」
そう言って笑うローランは、今日も爽やかだ。
「でもメイちゃんたちと同じ陣営ってことは、すごく面白いことになりそうだね」
ローランの言葉に、ブンブンとうなずく同行組。
まさかのトップ三人の合流。
天軍と地軍。
居並ぶ六人の姿に、もはや興奮することしかできない。
「ただ、それでも苦しいことに違いはないけどね」
「そうみたいだね」
とはいえ、レンはもう先ほどのような危機感は感じていない。
むしろグラムたちとのコンビネーションなら、この状況をひっくり返すことができるのではないかと、ワクワクしているほどだ。
「これでチームを三つに分けられるわ。ツバメとローランはフロンテラ陣営へ」
「よろしくね、ツバメちゃん」
「よ、よろしくおねがいします」
朗らかな笑みを向けられて、少し緊張するツバメ。
「『巫女』の足は速くないから、移動速度はさほど必要じゃない。だから『巫女』の防衛には私と金糸雀で当たるわ」
「了解、よろしくな!」
金糸雀は強気の笑みをのぞかせる。
「皆は私たちと『巫女』の守りについて欲しいの」
「分かった!」
「よし、がんばろうぜ!」
同行組も気合を入れる。
「そして……一番遠方のアングル陣営は、メイとグラム」
「メイちゃんと神槍のグラムが、共闘するのか……」
「マジかよ……」
「い、いいのかこんなの? いまだかつてない、最強のコンビじゃないか?」
ヤマトの天軍地軍の将が、ここで手を結ぶ。
これにはいよいよざわつく同行組。
『星屑』史上最高じゃないか? と、驚きとワクワクでそわそわし始める。
「この状況をひっくり返すのなら、これくらいしないとね」
フロンテラ陣営とアングル陣営が同盟を組んで、弱小テーラ陣営を狙う。
それは最悪の窮地。
しかしこの場にいた者たちの感覚は、これまでにないほど高揚していた。
「私たちが『巫女』を奪われる前に、他陣営の起動キーを打倒することが現状を打開する唯一の道よ。敵陣営はどちらもそれなりの部隊をけしかけてきてると思う。できるだけ早く戻って来てくれると助かるわ」
「そういうことだね。行こうか、ツバメちゃん」
「はい」
「道の途中で、ヤマト以降に手に入れた新しい攻撃とかを教え合おうね」
「そうだ。NPCにアイテムを持たせたり、スキルをかけることはできないみたいなの。それで少し悩んだんだけど……これはツバメたちが持っていって」
そう言って行きがけのツバメたちに、レンがアイテムを手渡す。
「よし、行くぞメイ!」
「りょうかいですっ! がんばりましょうっ!」
続けてメイとグラムの二人も動き出す。
圧倒的な破壊力を誇る前衛二人という、攻める気しかないパーティ。
この後二人の驚異的な力が荒れ狂うことを想像して、同行組は早くも息を飲むのだった。